ポイント

・“Crack”メッシ
・徹底した“左サイドでの攻撃”

試合を壊したのは、紛れもなくメッシという個の力だった。


そのために、徹底した左サイドでの攻撃があった。


バルサの3トップは変則3トップ。




ボージャン            ペドロ
         メッシ




こういう形。でも、メッシはトップ下ではない。


ペップは、ウォルコットが先発してくることを読み、先手を打った。

前へ行く傾向の強いウォルコットのウラを突こうという思惑だった。


ボージャンはサーニャのウラをウェーブの動きとディアゴナルランで狙う。
ケイタは左サイドにボールが行くと、めいっぱいワイドに開いて左サイドいっぱいを使う動きをする。“シャドー・ウィング”と称されるポジションに位置していた。
アビダルはその間にオーバーラップしてMFラインに上がる。

サーニャだけでは対応できないので、エジミウソンもケイタのマークでサイドに引っ張られる形となる。それでもウォルコットの守備意識が低いため、バルサに3対2の数的優位を作られる。
止むを得ず、シルベストルがカバーに行き、引っ張られる。

この形によって、中央のメッシにスペースを与える。

バルサは、早くこの形を作り、シルベストルのカバーが一瞬でも遅れて3対2ができた瞬間に、最後の一人のシルベストルを主導権を握りながら意図的に引っ張り出し、メッシが空いた瞬間を見逃さずメッシにパスを供給することを狙っていた。

この試合絶好調だったメッシは、この自由を見逃さずに利用し、次々とチャンスを生み出した。

最も象徴的なのが2点目だ。

左サイドに(意識の上でも)引っ張られるアーセナルDF陣に対し、メッシが中央で前を向きフリーでボールを受ける。

アビダルはオーバーラップし、MFライン、さらにはFWのラインも超えてアーセナル最終ラインのウラへ飛び出した。そこにメッシの絶妙なスルーパス。

完全に後ろ向きの守備にならざるを得なくなったアーセナルDFは戻りながら必死にボージャンとペドロをマーク。

このクロスはなんとか防ぐものの、態勢が悪いためクリアは中途半端に。そのボールを拾ったペドロは、中央の空いたスペースに走り込んできたメッシへパス。

これをメッシがゴールに難なく流し込み、2点目を奪う。


この試合のポイントは、この徹底した左サイドの攻撃にあった。結果的にみれば、確かにメッシの素晴らしい4得点で勝利を手にしている。そしてまた、メッシという“Crack”は最早別次元ではある。

しかし、そのメッシに自由を与えたのは、紛れもなくグァルディオラの戦術であり、その戦術を実践した他のバルサの選手たちである。

この左サイドにフィジカルに強い黒人2人(ケイタとアビダル)を起用したのも見逃せないポイントである。スピードとパワーに勝るこの2人はこの局面で十分な力を発揮し、見事に左サイドを制圧して見せた。

かくしてバルサは狙い通りの戦術と質の高いフットボーラー、さらには魅力的なフットボールでベスト4への切符を手にした。