バルセロナにGramanet(グラマネット)という名のクラブがあります。ここは実質3部(2部B)にトップチームが属するチームなのですが、下部組織もしっかりしていてカタルーニャ内では定評のあるクラブです。
そのBチームが、カタルーニャ1部リーグに属しています(実質5部)。
最近そこの試合をよく観に行きます。5部とは言え、やはりスペイン。レベルの高い試合が展開されます。そこでは、とても典型的な“スペイン・フットボール”を随所に垣間見ることができます。では、今日はその試合から見えたスペイン・フットボールをいくつか解明していこうと思います。
≪ボールポゼッション≫
グラマネットは、ボールを保持しながら相手の急所を見極め、そこを一気についてゴールを奪い、勝利する、というコンセプトのもとサッカーを展開するクラブです。5部と言うリーグはガチガチにフィジカルを鍛え上げている猛者たちが集まるリーグでもありますが、このクラブには小柄な選手や細身な選手も多く、僕は個人的に日本人にはとても参考になるクラブである、と思います。
≪“スペイン式”ボールポゼッション≫
ボールポゼッションに必要なものは何か?
個人的な見解で言えば、それは「正しい選手の配置」と「正確な技術」、そして「的確な状況判断」であると思います。
“スペイン式”ボールポゼッション。その特徴は、まさに「正しい選手の配置」の正確性にあります。例えば、このグラマネットと言うクラブは、典型的な4-2-3-1のフォーメーションを採用しています。ここで重要なのは、「3」のポジジョニング。簡単に言ってしまえば、サイドハーフ(ウィング)の選手がいかに引っ張るか。そして、それに対応し、サイドバックがいかに高い位置を取るか。
それがどんな利点を生み出すか。
一人一人が正しい位置を取ると、自然とボールを持った選手に時間とスペースの“自由”を与えることになります。ここで重要なのが、その中での「正確な技術」と「的確な判断」を履き違えて捉えないこと。つまり、時間とスペースの自由を与えられた選手が、正しく技術を発揮して、2タッチの正確なプレーをする、ということではないのです。
≪スペースの潰し合い≫
相手の守備陣からすれば、もちろんボールを保持しているチームに“自由”を与えたくありません。プロの試合では、「観客に良いフットボールを魅せる」というエンターテイメント性を多少含んでいることと卓越した技術と能力を持ち合わせた選手が揃っていることもあり、流れが綺麗なフットボールを両チーム(少なくともホームチーム)が展開しようと試みる気概があります。
しかし、ガチガチなアマチュアの激しいリーグでは、完全なる蹴り合いや空中戦になることも少なくありません。
このグラマネットの試合も、アウェーチームは途中から完全に蹴り合いを挑んできました。空中をボールが行き交うことが多くなってきます。“自由”を奪うためです。
そんな時、グラマネットには「中盤での構成力」が欠けていました。このチームは、僕から見ると「2」のボランチの選手が2人ともあまり良くない。
展開すべき時に展開しない、できない。逆サイドに的確に振り分けることができない。コーナー付近へのフィードもほとんどない。もちろん、技術はある。球扱いはうまい。しかし、あれではスペインでは「フットボールのうまい選手」とは評価されないでしょう。
≪前の4枚の流動性と柔軟性≫
この日センターフォワードに入っていた9番の選手は、典型的なドリブラーで、いつもは8番をつけてウィングをこなしサイドを主戦場としています。小柄で細身、しかし速さとしなやかさを兼ね備えた選手です。
そんな選手でも、センターフォワードをこなせる。動き出し、顔出しが非常にうまい。
スペインでは、前の4枚は誰がどこをやってもある程度はこなせる柔軟性を兼ね備えています。それは彼らからすると「フットボールの文法」に則ってプレーをしているのに過ぎないのでしょう。
そういった側面から見ても、非常にスペイン人と言うのはポリバレントな選手が多い。しかし、各々が特徴を持っている。GENERACION(一般性)とESPCIALITY(特別性)をうまく兼ね備えている選手がとても多い。
結局グラマネットは、この9番の選手のゴールにより1-0で勝利を収めました。
先週は計8試合を観戦(生観戦アマリーグ2試合)。
少しでも、「スペインのフットボールスタイル」と「フットボールの文法」を理解できるような努力を続けていきたいと思います。