“カナレス”
連日この名前を聞かない日はない、というほど今スペインで最も注目されている人物。
ラシン・サンタンデールに所属する若き18歳の“至宝”は、R・マドリーのカンテラ出身。ポジションはトップ下。今現在のラシンとの契約は今季終了まで。
先日のアウェーでのセビージャ戦で2ゴールの活躍でチームを勝利に導いて以来、その「移籍先」にますます注目が集まっている。
もちろんこの競争に真っ先に手を挙げたのはR・マドリー。これみよがしに連日の報道で「今にもカナレスとの契約は完了する」とマスコミを通して他チームにプレッシャーをかける。
個人的な見解を。
もちろん彼の才能に疑う余地はない。試合中もときおり見せるプレーには非凡なセンスを感じる。
だがしかし。決してマドリーに行くべきではない。
もう2,3年はもっと下位~中位のチームで試合に出て経験を積むべきだ。もしくは、ビッグクラブでも少しずつ試合に出てその厳しさに徐々に慣れていくべきである。
マドリーに行くべきでないポイントをいくつかあげてみる。
①マドリーには、サッカースタイルがない。
マドリーというクラブには、サッカースタイルが存在せず、ただただ「個の力」で状況を打開する力が求められる。今現在“新・銀河系”というコンセプトのもと「美しくボールを回すサッカー」を体現しようと指針を定めて向かっているものの、その目標達成には数年の歳月が必要だし、そこにカナレスが入って世界トップクラスの実力者たちにその実力を認めさせられるかというと、「?」マークがついてしまう。
②プランの変更が突如訪れる
マドリーというクラブは、昨日言っていたことが今日まかり通らないクラブである。
どういうことかと言えば、「シュスターを監督にして、数年契約で美しいフットボールを取り戻す」と言った翌シーズン途中にシュスターを解雇。そのシーズンに優勝したにもかかわらず、だ。結果を残し、なおかつその指針に向かっている矢先に少しうまくいかなくなったからと言って解雇されたら当人は堪ったものではないし、ましてやそんな手法ではいつまでたっても一向に目標に達することはない。
③カナレスのプレースタイル
カナレスは、まだまだ荒削りだ。
しかし、彼の非凡さは、「裏に飛び出すスピードとタイミング」にある。
まだ若いこともあり、「なんでもやりたがってしまう」癖を持っている。パスを出そうとしたり、起点になろうとしたり。悪いことではないが、肝心の時にゴールシーンに顔を出せない場面が多々見受けられる。組み立てに参加しすぎて、間に合わないのである。
ラシンでさえそうなのだ。いや、むしろラシンというクラブだからこそ、「俺が組み立てないと」と考えているのかもしれないが、まだまだプレーに“欲”が悪い意味で反映してしまっている。
では、もし移籍するならどこに行くべきか。
彼のプレースタイルでは、中盤の構成に彼が参加する必要のないほどのクラブでのプレーがベストではなかろうか。そして彼自身は、ひたすら「いかにDFの裏を取るか」を考え続ける。すると、次第に“深み”の作り方を体で覚え、チームに与える影響力は結果として大きいものになる。
僕としては、セビージャに移籍して、徐々に出場しながら、ルイス・ファビアーノ、カヌーテ、ネグレドのボールの受け方から学び、吸収し、より「怖いFW」に進化してほしいと思う。「トップ下」というポジションではこの先難しくなるであろうから。なぜなら、現代サッカーでは「純粋なトップ下」というポジションはほぼ消滅してしまっている。彼らが“生きる”ための相手のMFとDFのラインのスペースはほぼ存在しないし、そこにボールが入ったときに創造性を発揮する時間が許されることは現在ない。
そんな“若き才能”の前途を、見守っていきたいと思う。