「2タッチ以下か3タッチ以下か」


練習に制限を加えることは、昨今のサッカー界では主流になりつつあります。


〈日本式〉


その時、日本で多いのは


「じゃ、2タッチ以下で」


という指示。


ボール回しでも、ポゼッションでも、ゲームでも。


これは何を意図しているか、というのが一番のテーマです。


一般的にこの時テーマにしているのは


〈パス&コントロール〉


だと思います。もちろん練習様式や指導者によって狙いは様々でしょうが、基本的には1タッチ目のコントロール(トラップ)、2タッチ目のパス、というところの精度を上げることが大まかな狙いなのではないでしょうか。僕の場合、そういった指導を受けてきました。


「どのように」「どこに」コントロールし、


「どこへ」「どのような」パスをしたら、次の展開に移りやすいのか。


日本にいた頃は、それを口酸っぱく言われてきました。


これはある程度の効果を僕にもたらしてくれたと思います。とりわけプレッシャーが存在する中での2タッチ以下でのプレーは「考える時間も少なく」なり、その中で「正しい判断」とともに正確なパスとコントロールが要求され、その質は間違いなく向上したと思います。



〈スペイン式〉


では、これが


「じゃ、3タッチ以下で」


となると、どうなるのか。


コントロールして、パスをしても、しなくてもいい。この時点で、「判断」の要素が一つ選択肢として増えることになります。つまり、「考える」時間が多く持てる。


しかしそれより僕が重要視するのは、


「運ぶ」


という選択肢が増えること。これがスペイン・フットボールの鍵なのではないか、と僕は考えています。


試合を見ていても、どこのポジションの選手でも、ボールを非常によく「運ぶ」。スペースを自分の周りに見つけた時、そこに自らボールを「運ぶ」のです。


バルサの試合を見ても、ピケなどは非常によくボールを「運び」ます。あれを単なるドリブルと捉えて終わらせてはなりません。


彼らは、肌でわかっているんです。試合の局面で、いかに「個人がボールを運ぶ」ということが、相手に変化をもたらすかを。


ボールを受ける、周りの状況を見て判断してコントロールする、そのときどうしようもなくなる瞬間って、サッカーにおいては出てくる現象なんです。


その時、ボールを一歩持ち出してみる。「運んで」みる。景色も変われば、そのボールの位置によってまたDFも変化します。そして、その分の時間、味方の動く時間、サポートする時間、考える時間を「創造」することができるのです。


そして、その1タッチの分だけ、パスコースが増えるのです。


スペイン・フットボールはパス・サッカーです。日本人も嗜好する、ポゼッション・サッカー。


そんな時、この「運ぶ」という理念は、これからの日本のサッカーのために非常に重要なファクターになるのではないのでしょうか。


なぜなら、昨今の日本は、「ボールは回るけど、点が取れない」サッカーに終始し、もどかしい状態に陥っているからです。


オシムが日本に来て、確かに日本のサッカーは進化した面もある。しかし、そこから逆説的に、欠点を生み出してしまった側面もあるのです。


それに関してはまた次の機会に考えてみたいと思います。


今日は、是非この「運ぶ」ことの重要性を、考えてみていただけたら、と思います。