サッカー≠フットボール

サッカー≠フットボールだということ。

その違いとは何か。あえてここではこの２つを差別化してみたいと思う。

ヨーロッパでは、多少の違いはあれど、みな「フットボール」という表現でサッカーを表す。英語ではfootball、スペイン語ではfútbolと表現される。

つまり、フットボールが文化になっている国における「フットボール」というものは、僕が日本にいたときに体感してきた「サッカー」というものとは、似て非なるものであるというのが、僕の強い実感である。

では、フットボールとは何なのか。

フットボールが文化になっているということは、即ちフットボールが日常生活に根付いているということ。

それは、日常の何気ない場所に当たり前のようにグラウンドがあり、そのグラウンドにはスタンド（観客席）が当たり前のように付いていて、そのクラブは当たり前のように下部組織を持ち、その周辺の市民は当たり前のようにそのチームのファンであって、毎週週末になるとそのチームの応援に当たり前のように駆けつけ、当たり前のように一喜一憂し、当たり前のように野次を飛ばし、当たり前のように勝利をただひたすら願うのである。

そんな空気が当たり前のように存在する。それが、フットボールが文化であるということだ。

フットボールが文化であるということは、フットボールに携わる人々の人口が多いということだ。そこでは、さまざまな職種がフットボール界に存在する。選手、監督はもちろん、フィジカルトレーナー、ドクター、代理人、分析コーチ、グラウンドキーパー、ポルテーロ（警備員）・・・。そう考えれば、フットボール会に携わるための需要は多いということになる。

だがしかし、フットボールに携わる人々の人口が多いということは、それだけ供給が多いということをも含蓄する。想像してみてほしい。例えば選手の例をとるが、幼い頃から数多の選手とチームが存在し、その中で切磋琢磨して競争社会の中で純粋栽培されてきた選手たちの強さ、たくましさを。
それはどの分野でも一緒だ。監督の世界は監督の世界で、そういった選手を育て、指揮できない人間はあっという間に淘汰されていく。その速さ、厳しさといえば計り知れない。

そんな厳しい社会であると知りながら、そこに携わろうとする人が後を絶たない。それは一概に「フットボール愛」であり、「フットボール熱」であるとしか言いようがない。そこに、理由も理屈も、ロジックも存在しない。

ただ日本の場合と決定的に違うことは、そこに「サッカー界に関する神格化」が存在しないということだ。それはプロ選手に対しても然り、なのである。

フットボールは、お金にならない。そんなこと、誰もが知っている。だけど、フットボールには携わっていたいし、やるからには上を目指したい。それと同時に、生活を確保すればいいじゃないか。つまり、「フットボールに携わる」という「理想」と、「生活手段を確保するために現実社会で仕事する」という「現実」が、バランス良くミックスされているのです。