バルセロナが先日水曜日に行われた国王杯決勝を制し、今季初タイトルを手中におさめました。
25年ぶりに顔を合わせたバルサとアスレチック・ビルバオ。リーグの順位と実績からいえば、圧倒的にバルサ優位の下馬評。だがしかし、ビルバオは勢いのあるチーム。勢いに乗った時の上位チームキラーとしても名を馳せている厄介な相手だった。加えて、終盤に差し掛かり濃密なスケジュールによる故障者と累積出場停止選手の影響が懸念された。
バレンシアで行われた一発勝負の決勝戦は、もちろんの如くバルサがボールを支配する展開で始まった。それに対し、激しい当たりとプレッシング、カウンターで対抗するビルバオ。
しかし、意外にも先制はビルバオ。前半10分、コーナーキックからトケーロのヘディング。
「ウォー」
湧き上がるビルバオ・サポーター。揺れるスタジアム。
その後も、ビルバオはボールを保持されるも、ゴール前では固い城壁を囲い、最後のところで決定機をブロック。
それに対しバルサ。攻めあぐねていたが、前半30分過ぎ、この日CBで起用されていたトゥーレがドリブルで持ち運ぶ。パスを警戒してブロックを形成していたビルバオDFは「穴」を空けてしまった。そこにドリブルで食い込んでいくトゥーレ。慌ててビルバオDFもチェックにいくも、かわされ、スピードに乗らせてしまう。
トゥーレは、その強引なドリブルの勢いのまま、ペナルティエリア手前で右足を強襲。ボールは速いグラウンダーでニアサイドに突き刺さった。ゴール。バルサが同点に追いつく。
「ウゥワー」
さらに盛り上がるスタジアム。
試合はそのまま後半に入り、徐々にバルサが主導権を握り始める。そして、後半10分。右サイド、メッシがドリブルで一人かわすと、エトーにスルーパス。ペナルティエリア内でパスを受けたエトーはすかさずグラウンダーのクロス。これをなんとかビルバオDFが跳ね返すも、決死のクリアは中途半端になり、ペナルティエリアでそれを拾ったのはメッシ。メッシは落ち着いてそれを左足でコントロール、そしてもう一度左足を振り抜いた。
2-1。バルサ逆転。
こうなってしまうと、勢いがつくのはバルサの方で、こうなったときのバルサというのは止められない。3分後、カウンターからメッシのスルーパスに飛び出したボージャン。ドリブルでDFと駆け引きしながら、右に構えるフリーのエトーを確認。誰もが確実なパスの選択を願ったが、ここでこのカンテラ上がりの強心臓の持ち主はシュートを選択。
昨季ライカールトのもとで順調にデビューし、順風満帆なシーズンを送ったボージャンも、今季はグアルディオラが監督になったことで立場は急変。出番は大幅に減少。不遇なシーズンを送っていた。そんな彼が右足で放ったシュートはきれいにDFの横をすり抜け、GKの届かないファーサイド、ポストに当たって内側に入り込んだ。今までの鬱憤を晴らすかのような決勝でのゴール。そして、彼のゴールはバルサファンの待ち望んだものであり、さらにバルサの勢いを加速させるには十分な起爆剤であった。
3-1となり、お祭り状態のバルサは、パスを回す。回す。回す。「ボールは汗をかかない」とは、本来はここバルサで選手としても監督としても一時代を築いたクライフというオランダ人の言葉であり、それはそのままバルサのフィロソフィー(哲学)を表すものである。その哲学に恥じぬよう、ボールが動く。縦へ、横へ。長く、短く。
業を煮やしたビルバオDFがメッシにペナルティエリア前で強烈なタックル。ここで得たFKを、業師チャビが冷静に沈め、ジ・エンド。
終わってみれば、4-1。不安も吹き飛ぶバルサの快勝。
そして、優勝カップを掲げるキャプテンのプジョル。
スタジアムの盛り上がりは最高潮。
このバルサの街も、大いに騒ぎ、揺れていた。カタルーニャ広場といわれる中心地では、大型のテレビが用意されていた。人々は一同にそこに集まり、バルサのユニフォームにタオルマフラーを掲げ、声を枯らし叫んでいたわけだが、これで喜びは絶頂に。誰かれ構わずバルサの歌を歌い、抱き合い、歓喜。道ではそこら中でクラクションが鳴り響き、見ず知らずの人間たちがバルサのユニフォームと歌を合言葉に、優勝を分かち合う。走る車は、皆窓からバルサのタオルマフラーとフラッグを掲げ、ちょっとした凱旋行進が繰り広げられる。
僕は、こんな折この街のこの空気に触れると、またたまらなくこの街とフットボールが好きになる。
「どうしてこんなにフットボールに夢中になれるんだ?」
理解しがたいほどの熱。それが、フットボール先進国の何よりのエネルギー源なのだろう。
「この国、このチームには勝てねぇよ・・・」
なんとなく、漠然と呆れる。
そして、この街と、人々と、フットボールと一体になると切に願う。
「FCバルセロナ。11季ぶり国王杯制覇。今季1冠を制し、前人未到の3冠へ好発進」