担当医師より「今日から食事再開します」と言われました。手術後2日しか経ってないのにいいんだと驚きながらも、

食べることが大好きなので内心ルンルン気分でした。

 

しかし、喜びも束の間。この後絶望することになるとはこの時は思いもしませんでした。

 

朝7時半頃、待ちに待った朝食が運ばれてきます。

 

(朝)おかゆ、鮭缶(大根おろし付き)、マカロニサラダ、みそ汁、果物缶、牛乳

 

顔面神経麻痺で硬いものは食べづらいだろうということで病院側が全体的に柔らかめのメニューに変更してくれました。

3日ぶりの食事。写真撮影もほどほどにして、「いただきます」。

 

まずはおかゆをスプーンで一口...おかしい、食べられない。

噛めない。噛もうとしてもうまく口が動かせなくて口の中で勝手に片側に寄ってしまう。元に戻せない。

何なら勝手にのどに流れる。噛めてないからちょっとむせる。

おかしいぞ...痛み止めを飲み時はもう少しマシだったはず...

 

気を取り直してみそ汁も飲んでみる。辛うじて口からこぼれずに済んでいるけどちゃんと飲めてる気がしない。

具のキャベツはとても食べられなかった。当然だよね。おかゆより固形なんだから。

 

鮭、大根おろし、マカロニサラダ色々試してみたが全然食べられない。

ここで現実を思い知ることになる。

 

顔面神経麻痺の影響の大きさを実感する。

物をまともに食べられない日が来るとは。今までは当たり前にできてたのに...

悔しくて気付いたら目から涙が出てました。拭ってもどんどん涙が出てくる。

麻痺してこんな大変な思いをするなら手術しない方がよかったのではないか...?

だって手術前は腫瘍があっても顔面神経麻痺はなかったのだから。

そんな考えすらも頭をよぎりました。

 

泣いてもしょうがないのでとりあえず目の前の食事を食べきることにしましたが、状況は好転せず文字通り食べ物が喉を通らない。

1時間以上格闘してもぜんぜん減らない。食べ物を口に運ぶより、涙をティッシュで拭う回数の方が多かったと思う。

タイミングが悪いことに食事中にも看護師や担当医師が様子を見にくる。なんでこんな時に。

しかし、涙は容赦なく顔を伝ってくる。涙を我慢する気にもなれなかった。それでも泣いてる素振りを見せずに振舞っていたがおそらく泣いてることはバレバレだったと思う。

もはや完食できそうになかったので、泣く泣く半分以上残った食事のお盆を下げてもらいました。

こんなに涙を流しながら食べる食事は後にも先にも今回だけだろう。

 

担当医師に朝飯が満足に食べられなかった旨を伝えたら、さらにもう一段階柔らかいメニューに変えてくれるとのこと。

ありがたい。

 

そして迎えた昼飯。

(昼)おかゆ、人参ポタージュ、温泉卵あんかけ、ごま和え、梅びしお、お月見ゼリー

朝飯とは全然様子が違う。固形物はなくなり、全部ペーストや液体状だ。

朝が軽くトラウマになっているためおそるおそる口に運んでみると...いける。

 

口は相変わらずうまく開かないし口元からこぼれそうになるけど朝の固形食よりは食べられる手ごたえを感じた。

時間はかかったが、なんとか完食できた。

それでもなぜか朝飯同様に目から涙がこぼれる。

これくらい柔らかいものでないと食べられないという悔しさなのか。はたまた完食できた安堵なのか。

自分でもよく分からなかった。でも大きな一歩だったのは間違いない。

 

ここで少し気持ちが変わりました。「柔らかいものでもいいから回復を早めるためにとにかく毎食食べ切ろう」と。

それまでは手術の後悔と今後の絶望感しかありませんでしたが、落ち込んでも回復が早まるわけではないので自分の中で無理やり前向きな思考にシフトしました。この考えは正しかったなと今でも思います。

 

(夜)おかゆ、みそ汁、炊き合わせ、さつま芋アップルソース、もろみみそ、ヨーグルト、黒糖プリン

炊き合わせは煮物をペースト状にしたもの。ちゃんと味があっておかゆにも合う。美味しい。

朝、昼よりも明らかにスプーンが進みます。食欲が戻ってきたのか、あっという間に完食。

絶望しながら食べてた食事に久しぶりに「味」が戻ってきた気がします。

 

当たり前に食事ができることがありがたいか。身にしみて感じました。

その後もしばらくは半固形食(ペースト状)のメニューで出してもらうことにしました。