BAR14Nの憂鬱なラテアート -4ページ目

BAR14Nの憂鬱なラテアート

エスプレッソやラテアート、コーヒーの話

11月10日、"MEET OUR CHAMP!"と題されたイベントが、目黒のスイッチコーヒーで行なわれました。この日は、今年のジャパン・バリスタ・チャンピオンとなった福岡のREC COFFEE岩瀬さんが、コーヒーを淹れてくれるとのこと。使うコーヒーは、スイッチコーヒーが岩瀬さんと共に味作りをし、エスプレッソ用にローストしたコーヒー、エチオピア・コンガ・ウォッシュト。

営業時間もこの日だけは20時までと、いつもより1時間長く、仕事が順調に終わればイベントに間に合いそうだったので、終業時刻になり次第、帰り支度をし、目黒に向かいました。夜に歩く目黒は、昼間の光景とは少し違うように感じて、どこで曲がれば良いんだったかな、通り過ぎちゃったかな、と思いつつも、無事にスイッチコーヒーに到着。
店内は岩瀬さんのコーヒーを楽しみに来ているお客さんで、溢れていました。



まずは、アメリカーノを注文し、おいしー!と思いつつ、香りも楽しみつつ、あっという間に飲んでしまった。
そして、少し間をあけてから、エスプレッソを注文。飲み終わってからも後味の余韻がずっと残ってて、おいしいコーヒーでした。エチオピア・コンガは、いつものローストのものも試飲用コーヒーが置いてあって、それも少しだけ飲んでみました。いつものローストのもののほうが、ふわっとした甘い香りがあって、こっちもこっちで好きだったかな。



エチオピアのコーヒーで、すごく美味しいなと思ったものって、もう何年も前にスペシャルティ・コーヒーって何なのかなと知り始めたばかりの頃に飲んだコーヒー。その記憶がいまだに残っていて、そのコーヒーをもう飲むことができないと分かっていつつも、どこかでそれを超えるコーヒーに出会えることを期待している。
でも、この日飲んだエチオピア・コンガは、そんな過去の記憶なんてどうでも良くなるくらい、魅力的だった。

岩瀬さん、そしてスイッチコーヒーのみなさんにお礼を言いたいです。ありがとうございます。
9月19日、みなとみらいの映画館で、「A FILM ABOUT COFFEE」の上映(ジャパン・プレミア)が行われた。映画を見ての感想を…。
http://afilmaboutcoffee.com/

コーヒー業界のことを少しは知ってる方なら、この映画の中に出てくる登場人物たちの一人は知ってる人がいるんじゃないだろうか。スタンプタウン、カウンターカルチャー、インテリジェンシア(出演時は既に他の会社だったりするけど)の人たち、カップ・オブ・エクセレンスの創設者の一人や、日本の伝説的な喫茶店のマスターなどなど。
映画の中では、今流行りの単語がそのまま出てきて驚いた。浅煎りで、ペーパーフィルターを通した、透明感のある液体のコーヒーが、アメリカでは好まれているんだなーと。
ただ、一方で、日本への憧憬を隠さない。大坊珈琲店は、世界でも有名なコーヒー屋さんなのだろう。ぼくも初めてあのドリップを見たときは、感動さえ覚えた。ただ、映画の中の彼らが好きなコーヒーと、大坊珈琲のそれは、かなりの隔たりがあるように思う。「美」(日本の珈琲店の美しさ!)への憧れは、好みの問題とはまた違うのだ。

コーヒーの世界で有名な人たちの生の声は、色んな可能性をもたらしてくれる。様々な考え方がある中で、どれが本当なのか、全て本当なのか、実は全部が嘘で埋め尽くされているのか、たいていの人は判断できないだろうし、逆に、プロならば、自分の考えに自信をつける人もいるだろう。顕著なのは、エスプレッソ神話についてだ。エスプレッソは(ドリップコーヒーと同じような)コーヒーなのか、コーヒーではないのかという問題。ぼくも以前は、エスプレッソはエスプレッソであって、コーヒーではないと思っていた。だって、全く違う飲み物だよね?液体の濃度が、粘度が、全くコーヒーとは違っている。

この映画は、コーヒーの種子からカップまでを描いている。生産地の様子がカメラによって捉えられ、実際にチェリーを摘んでる様子を見ると、なんて大変な作業なんだろうと思う。それをぼくたちは、あっさりとコーヒー豆の入った袋から取り出し、何粒あるのか数えさえせず、淹れたい量だけの豆を挽き、コーヒーを淹れる。コーヒーを楽しむ数十分のために、チェリー一つ一つが摘まれ、精製処理がなされ、悪いコーヒー豆は取り除かれ、(コーヒー屋さんで焙煎などが行われ、)ぼくたちのもとに届く。機械化されていないところの多さに、驚く人は多いんじゃないだろうか。あまりにもたくさんの手(文字通りの「手」)を介して、コーヒーは輸出されるのだ。

この映画を見たからと言って、ぼくたちのコーヒーの生活に変化が訪れるわけじゃない。何も変わらないかもしれない。深刻な問題を浮かび上がらせたり、美しい映像が見られるわけでもない映画だ。そして、全てが真実かというと、そうでもないようにぼくには見えた。
ただ、この映画はコーヒーの今を切り取っている。(監督が4年前から映画を作り始めたと言っていたので)2010年から2013年あたりまでの、アメリカを中心としたコーヒーについての物語。生産国の様子、バイヤーが農園に対して行ってること、どういう焙煎が主流なのか、どういうバリスタがいるのか。目まぐるしく状況が変わりつつある中で、1年先さえどうなるか分からない。この映画の撮影が行われた時、ブルーボトル・コーヒーが日本に焙煎工場を作るなんて、想像してた人はいるんだろうか。そういう状況が常に変化しつつある中の、2010年からの数年を収めた記録映画だ。
10年後に「A FILM ABOUT COFFEE」を見て、どう思うか。ぼくは、今この映画を見て思うことよりも、そっちのほうが重要になってくるんじゃないかと思った。
JHDC2014 東京予選に参加しての続き)

家で抽出するのと、大会で抽出するのは、全く違う。
そして、だからこそ、どうやって大会の場に自分を適応させるかは、大切になってくる。出来る限り「いつも通り」に近づけることができれば良いけど、そんなことは無理だと分かっている。いつもは起きないようなトラブルが、大会でも起きないとは限らない。どういうことが、大会では起こりうるだろうか?どういう準備をしていけば、リスクを減らせるか?スムーズに抽出を行うには?実際に大会に出て、体験してみないと気付かないことは多いんじゃないかなと思う。
本当に細かいところまで、気を配らないといけない。ドリップポットは1つで良いのか?IHヒーターでお湯を沸かすためにもう1つ必要なのではないか?これは一つの例だけど、こんなところから、大会を勝ち抜く人と勝ち抜けない人の差は、生まれてくるような気がしてならない。

さて、1回戦の結果は、敗退というもの。
結果的に、プロとの壁や、一人の限界というのを感じてしまった。
やはり、リハーサルの時に自分以外の舌で味を確認してもらうっていうのは、とても大切だと思う。緊張している状態で、ちゃんとテイスティングできるのかっていうと、できるって言える自信はない。
そして、常にプレッシャーがある中で、一日に数十杯、数百杯コーヒーを淹れるプロと、気楽に楽しんで、一日に一二杯コーヒーを淹れる素人。そこには、相当な隔たりがある。例え、技術的に劣っていないとしてもだ。お客様に美味しいと感じてもらえるように、満足してもらえるように、一日数十杯とコーヒーを淹れていったことで築かれた基礎体力は、お店であっても、大会の場であっても、どんな環境下であっても、いい抽出が出来る下地になっているんじゃないだろうか。

相変わらず反省すべき点は多かったけど、今回は制限時間内に抽出するという、最低限の目標がクリアできた。前回はコーヒーの味がわからなかったけど、今回はしっかりと口までカップを持って行けて、飲めた。そして、「苦い!」と感じた。それはかなり大きな収穫だったと思うことにしよう。

ぼくの参加した日の午後の部、1回戦を勝ち抜いた人の平均点は、小数点以下は四捨五入して151点。
ちなみにぼくはというと、110点。リハーサルの時の抽出量の少なさを修正しきれなかったようで、2つのサーバーとも規定量250gに達しておらず、30点の減点がされていた。減点がなかったとしても、あと11点足りない。そして、1位で予選を勝ち抜けるためには、20点以上も足りない。
ただ、この20点の差は埋められそうな気がしている。去年はスコアシートにジャッジのコメントが書かれていなかったけど、今年は書かれていた。ここには、より美味しいコーヒーを抽出するためのヒントが書かれている。
トップとの差を埋め、更に上に行くために、今から来年の参加することを決め、しっかり準備していこうと思う。そして勝つために、、
まずは、コーヒーを飲もう。
enjoy coffee!

7月某日、ジャパン・ハンドドリップ・チャンピオンシップ(JHDC)の東京予選に参加してきました。
決められたルールの中で、コーヒーをドリップし、一番美味しい(とジャッジが判断した)コーヒーを抽出した人が、勝ち上がっていきます。
予選は、トーナメント式。1回戦は1グループ3人または4人の計4グループで行われ、各グループ1位のみが予選大会の決勝に進みます。そして、予選の決勝で1位になった人が、ビックサイトで行われる決勝へと進んでいきます。

詳しいルールなどは、下記ページを参照してください。
http://www.scaj.org/activity/competitions/jhdc-2/jhdc-latest

今回、出場するかどうか迷ったせいもあって、準備期間は1か月だけでした。そして、準備したことといえば、シンプル。制限時間10分以内に抽出を終えること。安全策をとり、2杯同時に抽出することにしました。(※2つのサーバーに、コーヒーを抽出し、その2つの均一性も評価の対象になります)
蒸らしのあとは、10秒ずつ交互に2つのサーバーに注いでいきます。トータルで2分30秒くらいの抽出時間、抽出量は260g前後のレシピで準備していました。

大会当日の使用豆は、ケニア。
リハーサルの時は、20gのコーヒー豆を中挽きにして、抽出量が250gくらい。美味しかったけども、インパクトに欠けるというか、うまくケニアのキャラクターを活かしきれていない気がしたため、使うコーヒー豆の量は22gに増やし、抽出。酸の輪郭がはっきりし、グレープフルーツみたいなフレーバーがしっかり出ていた。ただ、抽出量は250gを下回ったので、本番の時は気持ち多めに注ぐことに。この味が出せれば1回戦は勝てるかな?という気持ちでリハーサルを終えた。

本番までの間は、抽出のイメージトレーニング。どれくらいの太さで、何秒注いでいくか。ただただイメージだけしていました。

そして、本番。



今回は、去年よりも運営側がすごくスムーズで、気持ち良く競技をすることができました。これは、本当に、コーヒーブリューワーズ委員会の方々や、ボランティアの方々に感謝しています。
抽出の時、腕がひどく震えてしまったけれども、去年のあの腕のぶれ方、危うくドリッパーの外側へ腕がぶれるんじゃないかってくらいのことはなく、抽出し終わりました。ただ、あまりに粉の状態に気が向きすぎて、慎重になりすぎてしまったかなと思った。
去年は味わうことがなかった、自分のコーヒー。今年は時間に余裕もあり、心にも若干の余裕ができたので、競技テーブルに運ばれてきた自分のコーヒーを、味わって飲むことができた。そして、思った。「苦い!」 一方のカップが、どう考えても苦かった。抽出温度が高すぎたのかもしれない。
ぼくの夏はここで終わったと思いました。

(続きは、JHDC2014 この夏の続きは来年も続く
ATAGOから発売されているコーヒー用のTDS計を購入した。
http://www.atago.net/product/?l=ja&f=pop_pal-coffee.html
TDSというのは、総溶解固形分(total dissolved solids)。水に溶けている成分の量のことで、つまり、液体の濃さが分かる。購入したのは、パーセント表示なので、1%だと、水100g中に何らかの成分(例えば、コーヒーの成分)が1g溶けている計算になるのかな。"BREWING CONTROL CHART"というのがあって、SCAAやSCAEといった団体によって若干違いがあるものの、1.3%あたりが理想的と考えられてるようです。

Brewing -- the American Standard:
http://www.mountaincity.com/brewing-1.html

まずは試してみよう!ということで、フレンチプレスで中煎りのコーヒーを淹れて、ショットグラスに計測分を取り分けて計ってみたのだけど、1%に満たない貧弱な結果に。16gのコーヒー豆を使って、抽出には270gのお湯を使ったのだけど、VST社のCoffeeToolsというiPhoneアプリで抽出収量(Extraction Yield)を計算すると16.87%で、抽出不足な結果に。
抽出収量というのは、コーヒーの成分がどれくらい抽出されているかの数値。これは、理想的なのは、18%から22%とされています。なので、18%未満は、抽出不足…。
※抽出収量の計算方法は、浸漬法と透過法で異なります。抽出収量については、またそのうち機会があれば、その時に。



これって本当に正しく計れているのかな?と思って、カタログを見てみると、どうやらフレンチプレスの場合は、オイルがあると安定した数値になりにくいようだ。

PAL-COFFEEのカタログ
http://www.atago.net/japanese/images/jpcatalog/pal-coffee_ja.pdf

あと、どういう風に計測しているのか、実際の動画を探してみると、Matt PergerがVST社のTDS計を使ってる動画があった。Matt Pergerは、World Brewers Cupの2012年チャンピオン。

http://youtu.be/fL7vNbEcsxk

しっかり撹拌しないといけないようだし、サンプルはフィルターを通して注射器でカップに注がれているようだ。そして、アルコールで、TDS計のプリズム面はきれいに拭かれている。

フレンチプレスで抽出したコーヒーは、ペーパーフィルターを通して微粉とオイルを取り除いて計ることにした。
初めにTDSを計ったものとは違うコーヒーだけど、コーヒー豆16gと270gのお湯を使って1.23%という、だいぶ普通の値に。



感覚的に、コーヒーが濃いとか、薄いとかいうのは、分かると思うけど、それが数値となって分かることは、やはり大きいと思う。自分の体調、口内環境によって、コーヒーの印象は変わるだろうから、それに引きずられる部分はあるだろう。自分で味わって濃さを判断している限り、本当に濃いと思っているものが濃いとは限らない。

TDSが測定できたとしても、コーヒーの美味しさが分かるわけじゃない。あくまでコーヒーの濃度を調整するための指標として使った方が良いだろうし、抽出収量も同様に、調整の指標としたほうが良いだろう。濃度を調整するのは、簡単だ。使うコーヒー豆の量を変えれば良い。また、多くの成分を抽出したいのなら、グラインダーの挽き目の目盛りを細かいほうに回してあげると良い。それだけで、数値上は理想的なコーヒーに近づくことができる。

TDSが分かることで、どうすればTDSが上がるか、下がるか、客観的な判断を下せるようになるのは、とても大きいことだと思う。同じコーヒー豆の量を使って、どうすればより多くの成分を抽出できるのか。挽き目を変えるとどうなるか、お湯の温度を変えるとどうなるか、撹拌するとどうなるのか。その客観化は、コーヒーの味わいのコントロールへと、続いて行くものだと思う。
ひとまず、当分はTDSを計り続けようと思うのでした。