アニメ初期からずっとコミック版で読んできたこの作品。コミック版は現在、第五部が発行されていません。

数年にわたりシリーズものを読破する日常があり、手元には積ん読も発生しておりました。今でこそラノベ読者層が増えるに伴い20巻を越える作品も多くなり、私が20代の頃って大御所作家とか大河ドラマや2時間ドラマ枠のミステリー作品がシリーズになる時代。その頃からドラマCD化されるラノベやBL作品をいくつも読んでいた私は、もしかしたら功労者ですか?『タクミくん』もそのひとつ。

ということで、リアタイで追っかけたら時間も資金繰りも大変なことになると経験上から知っていて(笑)幅広く展開されるコンテンツは分散します。この程度ではファンと呼べないかも、ファンタスティック味が足りないー

 

 

そのコミックも変則的な出版で、第一部完結前に第二部の発売が始まり、第三部、第四部も平行で発行しています。

私個人は第四部『自称貴族院の図書委員』が好きなので、二部三部は補完しながら平行して読めます。図書館の魔術具シュミルたち画は可愛いし、貴族院指定の黒を基調にしたデザイン違いのスクールコスチュームも可愛くて、コミック版ならではの楽しみ方があります。

 

それはそれで満足していましたところへ、“なろうサイト”にある原作は完結済みでSSも置かれている情報が手に入り、手元の積ん読もほぼなくなっていたタイミングが重なり、読みにいきました!

 

そうして知った第五部『女神の化身』の内容は、

主人公の婚約よりも、魔法少女モノのストーリー構成になっていたことが衝撃です。

海外および領外からの侵略者と、国土領土の防衛戦を展開する魔法少女。神憑りになる魔法少女。

初期に魔法で建つ神殿を見て呆然となった主人公少女が、完全無欠の魔法少女に変貌しパワーゲームへ、美少女ヒーローが誕生しております。

創作マニュアル上は、大正解!!

マニュアルにはヒット作品を作る設定の基本として

『何かを欠いた主人公に、物語を通して欠けを補い成長する過程を描くこと』が推奨されています。

この作品の場合、転生前の人生にはなかった魔法スキル、スキルのシステムと使い方を学び、前世では当たり前の庇護下で欠けていた感謝を伝えることが実践されています。一方で科学技術の発展した前世の記憶を残したまま転生したので、科学がなく魔法に置き変わる世界では科学の発展に寄与する技術を知識として販売し、資産と地位と名誉を獲得していきます。周辺キャラたちは前世の知識とは知らず、発想力の素晴らしさを称え主人公は神キャラになりました。勘違いさせておけ、とばかりにストーリーは進みます。

 

魔法が非常識にあたるやら、科学が非常識にあたるやら、世界が違えば常識は違います。文化の相違。

破壊した街を設計図から興し建て直すと、強度などはどうなるでしょうか。

川原の石ころから金貨を創る錬成作品もあったから、科学上は原子レベルで無理筋のテクニックが魔法にはありそうです。

 

本編およびSSを読み終えて、私の目をひときわ惹いたシーンは536話。

クラリッサの嫁入り、弾丸花嫁の取り扱いについて。エーレンフェスト領も所属するユンゲルシュミット大陸全土に共通した通常のセオリーをすべて押し退けて、独走する花嫁を追走せざるを得ない護衛騎士1人をお供に、ふたりで現れたクラリッサ。嫁入り道具や挨拶に向かうため同行した両親も、すべてを置き去りにハイスピードで駆けつけた武闘派の弁明が以下のシーン。

 

ーーー

「申し訳ございませんでした。思い込むと周りが見えなくなると、いつも皆に言われていたのですが、今回も本当に見えていませんでした」

 

 ……うぐっ。思い当たることがありすぎる。

 

 似たようなことを周囲から言われているわたしはクラリッサを叱りにくくなって、口籠る。それを察したらしいオティーリエが口を開いた。

ーーー

 

旅程にかかるすべての人々および受け入れ側に混乱を引き起こし、主人公から叱責され謝罪を述べる顛末。

その謝罪を受け一般的なら主人公のように、良心の呵責を起こして後ろめたさを感じます。冷静に落ち着いて対応しておれば、身につまされて後の言葉が続きません。自分が実践していないことを指導できない主人公は『聖女』と認定されます。

では口籠らずに後の言葉が続く人、はたまたキレて饒舌に口が回る人はどんな人???

事情を察したオティーリエとは、クラリッサ婿殿の母親。義母になる予定の女性です。主人公の側近のひとりでもあり、ここで主人公に引き下がられてはこれからの日常が困ります。そうでなくても現状は日頃から暴走する若者たちに振り回されており、慎ましやかで淑やかな親世代は心労が絶えません。

 

以上のように暴走癖のある主人公ローゼマイン(幼名マイン)はパワーゲームができるほど豊富な魔力を持っていて、幼児期から独自の圧縮方法を用いて器そのものを育ててきました。その魔力が感情の乱れと共に放出されるので、保護者たちからは日常的に感情を抑えるよう諭されています。

これは魔力の器と同様に感情の器も育てることを伝えておりますが、ローゼマインにはまったく通じてなさそうよ(f・ω・`)マインの身を喰らう魔力の高熱量を閉じ込めることは成功しても、マインの希望する未来を創造するためなら、周辺への被害状況は鑑みずに感情ともども魔力も暴走を許可するみたい。弾丸娘にならぬかい。

人の上に立ち采配を振ると、どうなるでしょうか?

ゆえに実父以外の周辺キャラたちが、パートナーには『手綱を握れる男性』を指定するのでは???パートナーが実務家以外で困るのは、当事者ではなく後始末が回るフォローに奔走する周りの人々。暴れ馬から振り落とされないほど、先読みできることが条件になっています。

 

そうしてマインの頃から身に宿る『魔力の塊』

一般的に脳梗塞や心筋梗塞で発症する症状になり、意識を失って倒れているのは『昏倒』を起こしています。だから『塊』を溶解して流通路を再開するか、『塊』を迂回するバイパスを新しく作って流通路を確保しなければ命取りになるのでしょう。肉体内で魔力が熱暴走を起こせば外側にある肉体が爆散します、もしくは瞬時に魔力へ肉体が吸収されます。残るものは魔法の塊になった魔石のみで、こちらはストーリーとも整合します。

作中では仮死状態にして溶剤を体内へ吸収させ、塊さえ溶けたら健康になれるとローゼマイン自身は思っていますが、本当にそうなん(´・ω・`)?

元気にはなり同年代同等の日常生活を営めるようになっても、魔力が暴走する原因は『魔力の塊』のせいであり『感情』は度外視するのかい。

 

主人公ローゼマインは、周囲の大人がどれほど説明しても、魔力と感情の『因果関係』が頭に入らないよう(笑)(笑)

作者の目指したところは、夢が叶うファンタジー物語やら、美少女魔法使いの活躍やら、図書館都市の建設やら私は知りません。

 

この作品、多言語に翻訳され、ジュニア文庫でも発行中。

長大な長編ではございますが、保護者の皆様方におかれましては、原文が無料掲載されてもいますので、ご一読なさってはいかがですか。

『魔法スキル』なる『科学技術』とは別の体系により構成される肉体と社会で巻き起こるストーリーですから、成長過程も相応に違うはず。

これからの日本を支える子供たちや若者たちの読解力を養い、社会生活へ活かすためにもご一考いただければ幸いです。

 

私が新入社員だったころ、支店長が

「仕事は理性で行うもの。感情で行うとトラブルの元になる」

こう話しました。今でいうブラック企業のこと?

防衛戦で勝利をおさめ新たに自分の領土を手に入れたローゼマインに、後見人かつ婚約者のフェル様が伝える内容も支店長の話と同じもの。時代や場所が変わってもリアリストの理念は変わりそうにない。