クリスマスの思い出教えて
脚立から降りたギイは、数歩さがって木々を見渡している。
「こんなもんかな?」
振り向いて聞かれても、ぼくには答えられない。あの日、ギイはひとりで買い物を済ませ、ぼくに何も言わずに章三とふたりきりで準備も済ませていた。ぼくは点灯されたデコレーションしか見ていないのだから、答えようがない。
首を傾げたぼくにギイはにっこり笑って
「夜になったら、もう1度確かめてみよう。クリスマスまで、まだ何日もあるんだ」
そう言って、軍手をはめた手をパンとすり合わせる。体操服からタキシードまで何を着ても似合うギイだけど、ジーパン姿で軍手をしていても、やっぱりサマになっている。これで、研究室にいるときは白衣姿をしていて、立派な研究者に見えるから不思議だ。
「もし足りないようなら、また買い足せばいいしな」
庭の常緑低木から落葉樹まで、すべてに張り巡らせた電球は、あの日に見たクリスマスツリーよりさらにゴージャスなデコレーションになるだろう。来年は家をケーキにしてしまわないか、ぼくはちょっぴり心配になる。
「今度はふたりで買い出しに行こうね」
少し恨めしげに見上げたぼくから目をそらしたギイは
「もちろんだ」
バツが悪そうに頷いた。