個性的な友達はいる?

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「個性ってなんだろうねえ、利久。」
「急にどうしたんだ?託生」
「利久は自分を個性的だと思うかい?」
「オレ?俺はどこにでもいる、ありふれた、いわゆるモブってやつじゃないか」
「寝相は個性的だけどね。最初に見たとき、ぼく驚いたし」
「そういう託生こそ、自分を個性的だと思うか?」
「ぼくこそありふれた、駅前に立ってても横をすーっと通りすぎていく一般人だよ。実際に、みんな見えないかのように、通りすぎて行くしね」
「1年のときは、上級生たちがよく振り返ってたけどな。いつも怒鳴り込んでくるのは、俺たちの部屋でさ」
「その節は、たいへん失礼しました」
「いや、いいけどな。たびたびギイが仲裁に来てくれたんで、仲良くなれたし。きっと、ギイなんかを個性的っていうんだろうな」
「そうだね、駅前に立ってたら周りのポスターが色あせちゃうくらいギイが輝いてて、みんな振り返って行くから」
「真行寺とふたりで立ち話なんてしようものなら、周りにいる女の子たちが倒れそうだもんな」
「寮ではありふれた光景なのにね」
「慣れってすごいな!託生。その真行寺が三洲を追っかけては凹んでるなんて、祠堂のやつ以外は知らないんだぞ」
「そういえば、三洲くんも個性的だよね」
「いつも何考えてんだからわからないくらい、落ち着いてるもんな」
「その三洲くんが露骨な感情を見せる相手は、ギイと真行寺くんだけなんだよね」
「三洲のツボを突くのが上手いんだろうな。俺たちには、おっかなくてできない」
「そういうところも、あのふたりは個性的なんだろうね」
「いつか俺にも、個性に気づいてくれるステディが現われんのかなぁ」
「え?あの寝相に気づいてくれる人?びっくりすると思うけど」
「そこじゃなくて。自分でも知らない、何か目立たない個性だよ!」
「ああ、短くなった色えんぴつみたいな」
「なんだよ、その変わった例えは」
「短くなっちゃったら、他の色にまぎれて探しにくいだろ?」
「ケースの中に、ちゃんと元の場所へ戻せば見つかるだろう。そういうとこ、託生の個性だな。はぁ、俺の知らない個性、誰か早く見つけてくんないかなぁ」
そう言った利久は、片手を強く握りしめてガッツポーズを取る。
ーごめんね、利久。1年間、同じ部屋で暮らしたけど、寝相以外に見つけてあげられなくて。