生徒会室へ戻ると、副会長の大路がまだ居残っていた。
「おかえり、三洲。相楽先輩たちの訪問は、つつがなく終わったかい?」
「ああ、文化祭は、一般解放の日に来られるそうだ」
「その日、きっと、すごいことになるぞ」
「だな。しかし勝手を知る先輩方だから、今の2年や3年は先輩方を知ってるだろうし、かえって好都合かもしれないよ。それより大路、まだ仕事は残っているのかい?」
「いや、もう終わりだ。三洲、いっしょに─」
「そうか。なら、戸締まりは俺がやっとく。留守を任せて、悪かったな」
大路の話を遮り、にっこり笑って手を差しだす。その手のひらに鍵がのせられた。デスクの上に広げていたファイルをまとめた大路からそれを受けとり、書棚へ片付ける。その間に、大路は生徒会室を出た。

ようやく俺ひとりになった室内、自分の机に座り島田先生の部屋でコピーさせてもらった用紙を開く。本日予定された相楽先輩の訪問に合わせ、島田先生には職員宿舎に置かれているパソコンの使用許可を取りつけてあった。時間の制約があり、あそこではひとまずプリントアウトして、用紙を持ちかえってきた。
─さしあたって、あいつなら、こんなものだろうな。
『あなたの恋愛取扱証明書』といわれても、特に目新しい項目は見当たらない。これではまるで、ひな形のような男だ。
そこへ、軽快に廊下を走る足音が届いた。広げた用紙を畳み、ポケットへ入れる。大きくなる足音がピタリ止むと同時に、勢いよくドアが開けられる。
「アラタさん、こんにちわっす」
「廊下を走るんじゃない。つまずいて転ぶぞ」
「俺、そんなにどんくさくないっす。子供じゃないんすから」
ふふん、クレームをつける真行寺に笑顔を返せば、気圧されたように顔はひきつり、今にも後ずさりしそうだ。
「戸締まり頼む」
声をかければ、真行寺は弾かれたように窓へ駆けよる。重そうなボストンバックを床に置いて、てきぱきと窓とカーテンを閉めていく。あらかたの窓が閉まったところで、書棚やロッカーの施錠を確かめていた俺は、訊いた。
「夕飯は、駒澤たちと、約束してあるのかい?」
「約束はないっす。え、あ、アラタさん、いっしょに食べませんか?」
ようやくいつもの調子を取り戻した真行寺は、まともに顔を合わせて誘ってきた。
「寮へ戻る前に、食堂が先だな、食いしん坊」
「やった。席、とっとくっす」
「一緒に行くんだろ?」
「もちろん!」
弾ける笑顔で応える真行寺の頭を、くしゃりとひとつ撫でる。

すべての戸締まりを終え、真行寺とふたり生徒会室を出た。


なんでしょうか、この二人の結果は。どちらも1度で引き当てた私を褒めてー(人´∀`*)