ふふふふ~ん♪
キッチンから謎のメロディが聞こえる。そのメロディの曲名を階段を下りながら考えてみたけれど、万事に長けたギイの唯一苦手な音楽は、起き抜けの頭ではわからない。のろのろと、とりあえず顔を洗った。
「おはよう、託生。ようやく目が覚めたな」
物音に気づいたギイが、メロディを止めて声をかけてきた。おはよう、と返すぼくの声は歯ブラシに遮られ、くぐもる。それでも、たぶん、伝わったのだろう。洗面所をヒョイと覗きに来ないから、ギイはまだキッチンにいる。

ずいぶん上機嫌でキッチンに立つギイは、どこで見つけてきたのか深紅地に勇み立つバッドマンが中央に描かれたエプロンをつけ、ジューサーを回していた。

「おはよう、託生。もうすぐ出来あがるから、座ってろよ」
「ごめんね、ギイひとりに作らせちゃって」
「気にするな、俺スペシャルを食べさせてやるからさ」
グラスにできたてのスムージーを入れたギイは、カウンターの中からふたつのトレイを持ってでてきた。
「わあ、朝から作ったのかい?」
「島岡が、冷蔵庫の材料を使い切れって言ってたからな」
「今日、帰ってくるんだっけ?」
「会社に寄るだろうから、たぶん、夜になるんじゃないか」
ふたつのトレイをそれぞれの前にひとつずつ置いたギイは、パンッと手を合わせた。
「それくらいなら、食っちまえるだろ?」
そう言うギイの方は、ぼくの倍くらいありそうだ。
「うん、いただきます」
ほおばったハンバーガーから、肉汁が口の中に溢れでる。ふわふわのパンに吸い込まれ、喉の奥まで旨味が後をひく。にっこり笑うぼくを見て、ギイも大きな口を開きバーガーにかぶりつく。

ギイスペシャル、市販したら行列ができるだろうハンバーガーで、休日の1日が始まった。


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