北米地域を拠点とした勢力を誇る「US会」ら9つの団体が、「TP会」
結成の大枠合意に至った。「仮盃」を交わしたと思われる。「日本会」は
「US会」本家ホノルル別邸の大広間に通されることはなく、玄関近くの
狭い座敷に留め置かれた模様である。
一方、「日本会」の地元では、“実録紙”と称される「日本会系新聞協
会」を構成する指定広域出版組織(一般には「全国紙」)が一斉に「提
灯記事」を発表している。
また、「軍師」気取りの社会科学研究者たちの一連の「任官要請論
稿」も彩(いろどり)を添えていた。
ところで、両者の話は凡そ以下のトピックで語られることによって完
結している。
・ 関税撤廃
・ 少子高齢化
・ (国内)市場の縮小、あるいは経済成長の縮小
・ 貿易立国
・ アジアの成長を取り込む
・ 国益
・ 勝ち取るべき(もの)を勝ち取る
・ 守るべき(もの)を守る
・ ~しか生き残る道がない
・ 農地を集約し規模を拡大する
・ 生産性を上げる
・ 世界に打って出る
・ 主張する
・ リーダーになる
とまあ、こんな感じの言葉が適当に散りばめられて文章が完成(?)さ
れている。
早い話が、お互いが関税を撤廃することと、大方アメリカから要求さ
れるであろう“交渉課題”について“頑張る”こと、そして国内農業に何
か変化を与えること、その3つしかないのである。
つまり、“ 「日本会」はその3つだけやってこい ”と言っているに等し
いのである。
で、「US会」はどうか。
まず、「(会合は)ハイレベルな自由貿易会議だ」と言う…すると「日本
会」総長は慌てて「ハイレベルな自由貿易」がどうたらこうたらと言う羽
目になった。いかにも「低レベル」な姿勢で「TPP」に乗り込んでいった
ような印象だ…。
そして「US会」は、"asahi.com"の報道によれば、“サシの協議”で米
国産牛肉の輸入規制撤廃や自動車市場の規制の改善、日本郵政の
優遇措置見直しを重点3分野として話し合う意向を示した、とある。
「日本会」総長は、“土産”として BSE 問題以来の米国産牛肉に対
する規制の緩和話を用意していたが、「US会」を更にその上の話を切
り出した。もっとも、それは予想されたことではあったのだが。
予想されたことといえば、「日本郵政」関連についても言える。
ただ、私のような“堅気”(「日本会」準構成員)の者が“びっくらコイた”
のは、その話(協議)が「本協議」ではなくて、「事前協議」の場の話とし
て提示されたことである。
そして、なんといっても残る1つの「自動車市場の規制の改善」。
「ディーリング」関係の話なのだろうか。素人考えとしては、「車検を
やめろ」という話の可能性もあるのではないかとも思っている。
「日本会系経団連」は「TPP イケイケ バンバン」だったのであるから、
どう出るのだろうか。
「US会」は他にも様々な分野において「案件」を提示するものと思わ
れる。
※ 実際、"asahi.com"記事には、「これらは我々が取り上げる
課題の一部にすぎない」という米通商代表部(USTR:←ちなみ
にお役所組織ではない)のコメントが紹介されている。
つまり「US会」は…今に始まったことではないが…モノやサービスを
輸出したい相手に対して、「US会」ローカル・ルールの適用を求める。
「日本会」的な発想では、とっかかりからしばらくは、というよりそれ以
降も大体はずっと、“売りたい側”が相手地域内のルールに合わせる。
トラブル発生時は“国際通念”を拠り所にする。
どうだろう。
「US会」は、「関税はお互い取っ払いましょうや」…と言いつつ【砂
糖】のような例外もあったりするが…と話す次の言葉に、「んで、基準
・ルールはアメリカ式でね」、と加えるのだ。
対して「日本会」は、やろうとしているのは「関税撤廃(一部例外)」と
「対アメリカについて“頑張る”」と「農業をなんとかする」の3つである。
「US会」が「USルール」を主張してくることが判っているからそれに
対して「日本会」は「頑張る」んだ、という話をしたいのではない。私が
関心を抱くのは、「日本会」は何か1つぐらいは「ルールの提案」をする
のだろうか、ということだ。
「US会」は、本当に望むから「USルール」を主張してきたり、あるい
は“駆け引き”のために“ダメ元”で…純粋に「ダメ元」で主張する場合
もあるかもしれない…「USルール」を持ち出すのかもしれない。
しかし「日本会」については、「ルール作りに関与してこーい」と送り
出される割には、「ルール素案」のようなものまでは持ち合わせていな
いのではないかと思えてならない。とりあえず日本の“被害”を最小限
に抑えることが「ルール作り関与」が示す内容となるのではなかろうか。
「ハイレベルな自由貿易(交渉)」だの「貿易立国」だの、掛け声は勇
ましい割りには…つまり「高尚(?)な理念の割には」(?)…、特に用
意したものはなし、という状況なのではないかと思わざるを得ない。そ
れはまるで、“怪我をしないデッドボールの受け方”は勉強していった
が、「ヒットやホームランを打つ練習はしていかなかった」というような。
まあ、デッドボールなら1塁に出塁できるからいいや、みたいな。ある
いは(多数派工作による)フォアボールでいいや、とか(粘り強い交渉
だと評価される?)。
ちなみに「開国、開国」と言っても、実際に行なうのは輸出相手に「開
国(関税撤廃)をさせる」ことである…同時に例えば「日本会」が日本の
農家に「開国(関税撤廃)をさせる」ことでもある…。「日本会系経団連」
自身については、自分が「開国」したいのだから自身についての「開国
(関税撤廃)」(輸出を通じて利益を得たい者、輸入を通じて利益を得
たい者双方について)は造作のないことである。
「全国紙」は「農家」から広告料を得ることはないであろう。せいぜい
「日本会系農協会」ぐらいからの広告依頼に止まる。しかし「日本会系
経団連」からは会社の数だけ広告依頼を受ける可能性がある。
ところで、「軍師」気取りの社会科学研究者連中は、何か優れた研究
成果を挙げてきたのだろうか。まあ、そんなのはなくても、主張する内
容が正論であれば問題はないとも言えるのだろうが…。
「少子高齢化」で「経済成長の低下」などと言うが、トヨタや松下など
が売れる商品を作れないのではないのか。いいモノを作っても買えな
いような賃金体系の世の中を招いてきたのではないのか。
もちろん、「農業が壊滅する」などという「日本会系農協会」のような
阿呆も存在するがそれは論外として、農業をやりたくて会社を辞める
人の話は聞くが、トヨタの車が欲しくて会社を辞めるような人の話は聞
いたことがない。ちなみに、トヨタの車が欲しくて安い輸入食材ばかり
買う人はいるかもしれない。
今件に関しても、トヨタは「TPP」参加によって農家が利益を手にする
話を提案すべきであった、つまり「日本会系経団連」がそうした話を提
案すべきであったのだ(ホラ話ではいけないが)。今件においては、「経
団連」や「全国紙」などは、農家を踏み台にして益を得ようとした印象を
与えてしまった。しかも“お国のため”に踏み台になってもやむなしとい
ったストーリーだ。
もっとも、「トヨタの車が欲しくて会社を辞めるような人がいない」のは、
仕事を続けていればトヨタの車だけでなく、他の物も買えるからに違い
ないのだが、「産出額」を較べるだけで農業と工業のどちらが大事かな
どと話すのは大して意味はない。それどころか、そんなことを言ったら
NPOの立場がない、…というか、大方の経済学者は●●であり、新聞
社などは▼▼であるとも思われかねない。“業界産出額”がかなり怪し
い(それでも新聞社は広告費という多額の“産出”を行なっている?)。
ちなみに国会議員は国民生活上ハイレベルな浪費である。
※ ちなみに「経団連」総長のように「産業界」と「農業界」などと分
け隔てるようなことを述べる阿呆は救いようがない。
「TPP」ではアジアの成長は取り込めないであろう。
「日本会」が「バスに乗り遅れる」ことを恐れたのに、どうして他のアジ
ア諸国がノコノコと後から乗るだろうか。
チャイナ地域は元より多国間で歩調を合わせることをした試しがない。
またいわゆる資本主義国になるつもりもない。自由主義の意義が解ら
ない。
チャイナ地域を含めたアジア新興国は、高成長で工業化を高めよう
としている真っ最中で、自国産業を保護することに関心があるだろう。
だいたい「日本会」総長は、目標である「アジア太平洋自由貿易圏
(FTAAP)」構想に向けて、「TPP」や「日中韓(の経済連携)」、「ASEAN
+ 3」、「ASEAN + 6」のうちで実質的に動き出しているのが「TPP」だ
から「TPP」にまず参加するのだと説明したのだが、「TPP」の完全実
施に10年かかるとなれば、「FTAAP」の実現の方針とされている 2020
年とほぼ時期が重なってしまう。
「TPP」に意義があるのだろうか。10年かけて「FTAAP」の相談(協
議)をした方がまだ解りやすい…もっとも、先に挙げた理由によって、
アジア新興国は参加に 30年ぐらいは時間を置きたいと思うかもしれ
ないが。
TPP参加反対の国会議員は、「日本会」総長の「交渉参加のための
関係国との協議入り」表明を歓迎した。
「日本会」が関係9ヵ国に「挨拶」を行なうのは、それぞれの国による、
日本のTPP協議参加についての同意が必要だからだ。
「日本会」が「関係9ヵ会」に“仁義を切る”ことを表明したことをもっ
て、「TPP協議参加」表明とは違うなどと言うのを見るのは、“ドキュメ
ンタリーなパロディ映画”(?)を観るような感じだ。
最後に、書き忘れていたことを加えておこう。
TPP について「日本会本家からの十分な説明がない(なかった)」と
いった話を目にするが、あるわけがない。
「関係9ヵ会」の中には、配下の「組織」や「準構成員」があまり多く
のことを知るのをよしとしないとするところもあるだろう。「日本会」から
の情報を通じて、TPP協議の俎上に上っている内容を知られたくない
と考える団体があってもおかしくない。
ちなみに、「日本会」は協議に参加していないから「TPP協議」の中
身は判らないとされてきた。
そんなこともないだろう。
それぞれの「総本家」が集う会合について、「議題目録」が示されな
いことなど有り得ない。
各分野についての進展具合いについては判らないかもしれないが、
どういった分野があって基本的に何が問題になっているのかぐらいか
はとうに知らされていたと見るのが普通であろう。
そうこうしているうちに、「カナダ会」と「メヒコ会」が「TP会」入りの意
向を表明したとのニュースが飛び込んできた。
両会とも「NAFTA」をご破算にしたかったのか、あるいは「日本会」の
「シマ」での「シノギ」(日本に農産物などを売ったり、日本からの旅行客
増加を狙う)に魅力を感じたのか…、いずれにせよ、「日本会」の「TP
会」入りが両会の決断に影響を与えたのかもしれない。こうなると「韓
流会」の動きにも変化が起こるのかもしれない。