部屋に入ると、母は眠っていた。介護士さんが声をかけると目をあけた。

起きたばかりの母は私を見ても特に反応を見せず、表情も変わらなかった。

少しして手をにぎると母の顔が少し明るくなって、母自ら腕を伸ばしてきた。


会話はほとんどない。ただ手をにぎるだけの時間だったが、その腕と手の力の強さが母の気力のような気がした。