「まったくジンっていつまでたっても子どもで嫌になる…」

ぶつぶつとゲンキは愚痴っている。それを宥めながらアムとカオルは食料の買い出しに宙港のスーパーに向かった。

「ところでキシ君はどこに行ったんだ?」

「色々手続きがあるみたいで…キシ君は宇宙船パイロットとして成長してるのにほんとにもうジンときたら…」

「まー俺の見立てではジンがゲンキも認める大人になるのはあと80年くらいかかりそうだな。それより腹減らね?」

「それもそうだな。けどゆっくり腰を据えている時間もなさそうだからどっかで買い食いしよう」

「さんせーい!!俺の今の気分は肉まんなんだけどお前らどうよ?」

カオルは目をつけていた肉まん専門店を指差す。有名店らしく行列ができていた。

「特に異存はない」

「僕もそれでいいよ」

三人は行列の最後尾に並んだ。

「行列に並ぶなんてなかなか貴重な経験だな。初めてだ」

「そうだね。いつも誰かが買ってきてくれたものを与えられてたから…こういう経験って貴重だね」

アムとゲンキのセレブ談義もそっちのけでカオルは店員から手渡されたメニューに釘付けだ。肉まんは定番としてピザまん、あんまん、フカヒレまん…どれも魅力的で絞れない。しかし予算は決まっている。これは難解なパズルだ…

カオルが予算と食欲のスパイラルで頭を大いに悩ませているとそろそろ順番が回ってきそうだった。店のショーケースが見え始めたが残りあとわずかだ。

「長いこと待たされた後だと余計に美味そうに感じるな。俺はそうだな…フカヒレまんにするか」

「おいアム、フカヒレまんはそりゃあ魅力の塊だけどよ、値段が違うんだよ。これなら普通の肉まん2個買えるからやっぱ質より量…」

「カオル…言っておくけど一人2個ずつだからね」

「おいゲンキそりゃねーよコックの立場として俺は3個いただくね!お前小食そうだから1個で十分だろ」

「それは勝手なイメージだよ。僕はレッスンの帰り道にお腹がすいたからってピザ予約して帰るくらい実はけっこう食べるんだよ。ちゃんと栄養取らないと美容に悪いし」

「レイアみたいなことを言うな。よし、ここは一つジャンケンだ!勝ち抜けた奴が3個、ビリが1個、どうだ!?」

やいのやいの盛り上がっているうち次になった。だがまだショーケースには幾つか残っている。それをカオルが確認してジャンケンをしようとしたところ…

「えーと、肉まん8個、フカヒレまん5個、ピザまん7個にあんまん6個、んでその中華ちまきも5個下さい」

「あいよ!!まいどあり!!」

前の客が大量注文し、ショーケースからはみるみるうちに肉まんがなくなっていく。残ったのはあんまん1つだった。

「ちょ…!」

30分近く並ばされた結果3人であんまん1つとはなんたる仕打ち・・・それより何より他に並んでいる奴も許さないだろう。みんなして断固抗議…と思いきやカオル達の後ろには誰も並んでいなかった。

「ちょっと待たんかいワレぇ!!!!俺たちも並んだんだぞ!!それを買い占めに走るとはなんたる非人道的行為!!断じて許さん!!ハニウダ研究所開発のゴッドマシンガンで蜂の巣にしてくれるぁあああああああ!!!!」

カオルより先に発狂したアムが前の客に襲いかかる。同い年くらいの金髪の少年だった。だがそいつはこう言い放つ。

「なんだよ、だから1個残してやっただろ!!」

「貴様たった1個でこの俺が満足すると思ってんのか!!!しかもこっちは3人だ!!『1杯のかけそば』じゃねーんだぞ!!こんな仕打ち許せん!!!!!!!!」

「お、落ち着いてアム…君って意外とエキセントリックなんだね…セレブの余裕はどこに…」

「知るかゲンキ!!!こんな非人道的行為許されるかぁ!!!お前もやれ!!アサシンイワシとしてこいつを闇に葬り去れ!!」

「おーいゲンタ肉まん買えたー?ん?何こいつら?知り合い?」

金髪の知り合いとおぼしき幼い少年が風船片手にやってくる。幼いがこいつも金髪だった。

「マチュク厄介な奴らに因縁つけられて困ってたんだよ。お前の必殺幼児泣きで蹴散らしてよ」

「誰が幼児やねん!!ってカンサイ星の方言出ちゃったわ。お前は俺より年下だろーが!」

「年下年下言うけどだったら少しは年上らしくしなよ。何その風船。またどっかでもらったの?」

「しょうがないだろこれは!!イベントスペース通りかかったらお姉さんに『ボク一人でお使い?偉いわねーハイこれあげる』って手渡されたんだから断れないでしょ!!それに熊さん可愛いし!!」

「それが幼児だって言ってんの。とにかく厄介なのにからまれてるからさっさとこれもって走って逃げてよ」

金髪少年達のテンポのいい小競り合いに呆気に取られているとそれまで大人しかったカオルがその肉まんの袋をがしっと掴んだ。

「肉まんは渡さん…死んでも渡さん…!」

その目はスナイパーの目だった。食への執念が具現化したらエンパイアステートビルも真っ青な大きさになるのではないだろうか…そんな果てしないエネルギーを感じる。先ほどのアムの殺気が可愛く思えるほどに。

「ちょ…何言ってんのこれは俺達が金出して買ったもんなんだから強奪じゃん。マチュク、警察呼んで!」

「マチュクだかチュニックだか知らんがこれだけは譲れん…お前ら二人まとめてこのブラックホールに吸い込んでくれる…!!!」

カオルは息を吸い込む。まじでブラックホールが生成できそうなエネルギーの集結が襲ってくる…どこかで鳥がギャアギャア鳴く声がして木々がざわつき始めた。

「まずい…このままだとこの星は宇宙の藻屑と化す…お前ら、悪いことは言わんからその肉まんをコイツに譲るんだ。心配するな、金は払う」

アムは必殺ゴールドカードを出すことにした。これはよっぽどの時にしか出さないことにしている。

「僕からもお願いするよ…僕の夢は一人前の宇宙船整備士として働いた後アメーリカ星で余生を過ごすという夢があるんだ。こんなところで塵になるわけにはいかない」

ゲンキもプラチナカードを出す。家に頼るのは嫌だが生命の危険にさらされた時に限ってはその例外だ。

二人のセレブに請われ、ゲンタとマチュクは顔を合わせる。そして二人で相談を始めた。

「ねえマチュク、あのゴールドカード本物かな。だったら二倍の値段で買ってもらったらもっといいもの食べれそうじゃない?」

「ゴールドカードなんて見たことないから知るかよ。まあ俺らだけいいもん食って帰ったらあいつら怒るだろうから手土産代差し引いても肉まんより良さそうだな」

二人は頷き合う。ややあって値段の折り合いがついて肉まんは無事カオル達の手に渡った。

一件落着すればなんだかこいつらも悪い奴じゃない気がしてくる。肉まんを分け合い、食べ食べ歩きながら雑談を交わした。

「俺はゲンタ・マツダ。ピッチピチの17歳セブンティーン。好物はアイス」

「俺はカイト・マツクラ。通称マチュク。こう見えて19歳のアダルトボーイだぜ!得意なのはシャカリキダンスだけど最近は大人の色気も増しつつあるという…」

「え!?19歳なの!?僕はまたてっきり12歳くらいかと…小さくて元気いっぱいの坊やだなと思って…」

マチュクの見た目を裏切る実年齢にゲンキは目を丸くする。隣のアムも目を見開いた。

「俺と同い年か…宇宙は広いな…」

「へー。俺もてっきりゲンタが兄貴で小さな弟の分の肉まんも買いに並んでやってんだと思ってた。俺より3つも年上なのかよ信じらんねー3つ年下ならしっくりくるけど」

3つ目のあんまんを食べながらカオルも呟く。

「誰が小さな弟やねん!…こう見えても俺はみんなからマチュク兄ちゃんマチュク兄ちゃんと慕われて…」

「俺とマチュクは同じ施設で育ったまあ兄弟みたいなもんなんだよ。お互い孤児だけど物心つく前から一緒だし。二人で時々ダンスパフォーマンスの大道芸を道ばたでやってそれで稼いだお金で宇宙旅行行くのが目下の夢。

けどこうして美味そうな肉まんとか見ちゃったらそっちにお金使っちゃって中々貯まらないけど。その肉まんも施設の奴らにお土産として買っていこうってマチュクが言ってさ」

「え!?そうなのかよ!それを知ってりゃ俺はブラックホールなんか召還しようとしなかったのに…ほとんど食っちまったけどこれ良かったら…」

カオルが食べかけのピザまんを差しだそうとするとゲンタは吹き出した。

「そんなの食えるか!まあお二方からいただいたお金でもっといいもん買って帰ってやれそうだしなんていうの、こういうの。わらしべ長者的な」

「ううむ…できた奴らだな…それにしてもこのマチュクの愛らしさよ」

「同じ施設で育った親友か…キシ君とジンみたいだね。なんだか他人事とは思えないよ…」

マチュクとゲンタにすっかり感情移入したアムとゲンキは『一度宇宙船に乗ってみたい』という二人の願いを叶えるべくカミセブン号に案内することにした。

 

 

「さて、手続きは無事済んだし故障も大したことなかったし…これもゲンキの応急処置のおかげだな。持つべきものは整備士の幼馴染み…ん?」

宙港のメンテナンスセンターの隣のショウルームでキシ君は宇宙船リフォームのフェアをやっているのを目にした。決してキャンペーンガールに惹かれたワケではない。

「ようこそ!ただ今各社お得なキャンペーンを実施中です!パンフレットどうぞ」

「あ、どうもありがとうございます」

パインジュースを飲みながらキシ君はキャンペーンガールに手渡されたパンフレットに目を通す。実に色んな種類のリフォームがある。

「ふむふむ…うちの宇宙船も人が増えて手狭になってきたしなあ…バスルームも自動乾燥機能付きにすればカビとりハイター常備しとかなくて済むしトイレもウォシュレット付きに変えたい…何より7人で満杯だからもうちょっと自由なスペースが欲しいなあ…使ってない倉庫をリフォームすればいい部屋になるかも」

願望は限りなく膨らむが悲しいことに予算がない。このメンテナンスも予想外の出費だしもう少し節約が必要かな…と背中を寂しくしていると営業マンに声をかけられる。あれこれ話しているとどうやらキシ君がパイロットだとは思わなかったらしく目を丸くした。

「その年でもうご自分の宇宙船を持ってるんですか!!いや凄い、うちにもそう年の変わらない息子がいますがいやもうなんかキャラ変しようかどうか迷ってるだのなんだの…まあそれは置いといてそれでしたらこの無金利100回ローンのコースなんかオススメですよ」

「へえ、そんなのあるんですか…でも100回って凄いなあ…10年近く払い続けなきゃいけないし…あ、でもこれなら確かに手が届きそう…食費を少し抑えれば払っていけるな」

気がつけばキシ君は時間も忘れてセールスマンとあーだこーだリフォームの内容や支払いについて検討していた。結局倉庫を内装工事してリビングにするのとトイレとバスルームのリフォームを100回払いで契約し、ウキウキでキシ君はカミセブン号に戻った。

「たっだいまー!!遅くなってごめんねみんな!聞いてよ、カミセブン号リフォームすることにしたんだよ。これでバスルームのカビやハイターの臭いとオサラバだしトイレも綺麗で快適に生まれ変わるからいつでもお花摘みに行けるし倉庫を素敵なリビングに…ってあれ?」

意気揚々とドアを開けると見知らぬ人たちがいた。もしかして宇宙船を間違えた…?いやいやそんな、自分の宇宙船を…カミセブン号を間違えるはずもない。表札はないがあちこち見渡してやはりここがカミセブン号であることを確認したが一体この人たちは…

キシ君が狐につままれたような顔をしているとひょいっとグラサンをかけてパリピ全開な格好をしたジンが躍り出た。

「キシ君帰りおっせーよ。あ、新しいクルースカウトしてきたから紹介すんぜ。どうしても俺の舎弟になりたいって言うから俺も断れなくてよ…ミナティ、これがキシ君だ。まあちょっと汗だくだがいい奴だからちゃんと言うこと聞くんだぞ」

「ハイ!俺はミナト・マツイ。通称ミナティですよろしくうさ耳ポーズ!」

なんかひょろっと背の高い陽気な口元の少年がうさ耳ポーズで愛想を振りまいた。

すると今度はレイアとフウがうふふと飛び出してくる。

「キシぃ、頼もしい人見つけたよぉ。何もしなくても人を泡吹かせて気絶させることができるんだよぉ凄いでしょおこれでカミセブン号も百人力だよぉ」

「キシ君、この人はホクト・マツムラ君って言ってキシ君と同い年なんだって!今朝はごめんなさい。おわびに頼もしい人連れてきたよ!」

レイアとフウが紹介したのは同い年とは思えぬ落ち着きと雰囲気を醸し出す黒髪美青年だった。しかし彼は困り顔である。

「俺はまだやるとは言ってないんだがな…好物のとろろをちらつかせられて長居してしまった…気持ち切らしてしまった証拠だ。俺もまだまだ修行が足りん」

「ちょ…何これ…」

キシ君が突然の展開に戦慄していると憂いを帯びた瞳のゲンキと変な帽子を被ったアムが前に出た。

「キシ君、この二人かくかくしかじかで他人と思えなくて…一度宇宙船に乗せてあげたらどうかと思って。もし良かったらクルーに…」

「こっちの愛らしいのがマチュク…カイト・マツクラでこっちのイケイケシャインボーイがゲンタ・マツダだ。マチュクは俺と同い年だそうだ。宇宙は広い」

「どーもーマチュクでーす」

「ゲンタでーす」

子どもみたいな金髪少年とイケイケ金髪が躍り出たかと思うと二人は声を揃えて「二人合わせてー」とハモりこう続ける

「マツマツでーす!」

漫才師のような値決めポーズが炸裂し、それを見てアムもジンもバカ受けだ。

「ちょっと待って…なんでいっぺんにこんな…四人も…」

「いいだろキシ君減るもんじゃなし。むしろ増えんだぜ。ジン様がコイツを一人前のクルーに育ててやらあ」

「ねえいいでしょぉキシぃ。ほわちゃあとかあたたたたたたとかひでぶとか見たいでしょぉ」

「ほんとに凄いんだよ!ピルーって効果音が鳴ったかと思うと悪党どもが骨格から顔変わって…」

「キシ君、僕のお願いだよ…ね…うるうる…」

「宇宙は広いんだ。一人や二人仲間が増えたってどうってことなかろう」

ジンもレイアもフウもゲンキもアムもぎゃあぎゃあと自分のスカウトしてきた少年たちをカミセブン号のクルーにしろと喚く。聖徳太子は一人で何人もの話が聞けたらしいが生憎キシ君にそんな機能はなかった。そしてついにオーバーヒートを起こす。

「シャーラーーーーーーーーーーーップ!!!みんな黙りなさい!!うちはもうこれ以上クルー増やせません!!丁重にお帰りいただきなさいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!」

キシ君が絶叫して、みんながブーブー言って大騒ぎになったが結局4人とも帰って行った。

「んだよ、せっかくこの俺が使えそうな奴見つけてきたのによ。この俺のカリスマ性を一目で見抜いた奴だから見込みあると思ったのによ」

つかの間の舎弟を惜しみながらジンはぼやき、ミナトに買わせたグラビア雑誌を読み始めるとゲンキに取り上げられた。

「夢を見せてあげようと思ったのに…もしかしたらキシ君のパイロット姿を見て感激してマチュクかゲンタが将来宇宙船パイロットになったかもしれないのにな」

「いやゲンキ、それはないだろう。キシ君だぞ?憧れるというよりは俺でもなれそうと思ってもらえる方じゃないか?」

「もぉキシ恩知らずだよぉ。変な奴に襲われたらホクト君があたたたたたってやっつけてくれるかもしんないのにさぁ」

「でもキシ君にはキシ君の考えがあるんだよレイア。ホクト君は惜しいかもしれないけどあんまり乗り気じゃなさそうだったし」

フウがレイアに紅茶を注ぎながら宥めてキシ君にも注いでくれた。

「あのね…カミセブン号の経済状況分かってる?これ以上人を雇うお金はありません。そうでなくても今日100回ローンを…」

熱い紅茶をフーフーと冷ましながらぼやいているとカミセブン号のインターホン(実は付いている)が鳴った。

「すみませんリフォーム承ったフォーユー建設の者ですが…」

入ってきたニヒル笑みをたたえたアラサー男性を見てキシ君は「あああああああああーーーーー!!」と叫ぶ。みんなは何事だとそれを注視した。

「マ、マツザキ先輩…」

「ん?何故俺の名を…おお、お前もしかしてキシか?久しぶりだな、こんなところで何をしている」

「マツザキ先輩こそ…まさか…」

「俺か?俺は仲間とリフォーム業者を立ち上げたんだ。色々楽しいぞ。おっとこうしちゃおれん再会を懐かしむのは後だ。中見せてもらうぞ」

「は、はい。お願いします」

キシ君がリフォームをお願いした倉庫にマツザキを案内した後、みんなが訊いてくる。

「キシぃ、知り合いなのぉさっきのニヒルマン」

「あ、うん。俺のショック高校時代の先輩で…ユースケ・マツザキって人。ここでリフォーム業者やってたなんて…」

さっきまで姿を消していたカオルは厨房にこもりっきりで夕飯を作っていた。全て終えてほかほかの料理を機嫌良さそうに運んでくる。みんなでそれをつつきながらリフォーム内容の見積書と完成イメージ図を見た。

「にしてもさー、この星…マツマツ星だっけ?星民はみんな名前のどっかに「マツ」が付くんだってなー」

「あ、ほんとだ。マツイにマツムラにマツダにマツクラに…さっきのキシ君の先輩もマツザキだし…」

フウが気付いて指折り数える。皆も「おーホントだ」と感心した。

「へーそうなのか。にしてもいきなり4人も増えたらカミセブン号パンクしてしまう。倉庫リフォームが済んだらまああと2人くらいいけなくもないけど…正直もう人件費出せないしこのリフォームの代金もあるから明日からちょっとずつみんな節約頼むよ」

「節約か…とりあえずカオル、おやつは一日一回でいい。カロリーも食費も節約できる」

アムがカオルの食べようとした最後のギョーザを素早く奪いながら言うと、すかさずカオルは反論する。

「はぁ!?食の貧困は人生の貧困だぞ!!そこは削れないね!それよりレイアが一日に二回も風呂入るのとか一回にすればいいんだよ水代の節約になるし」

「僕不潔なの耐えられないんだから無理ぃ。じゃあフウ、風力発電して電気代節約に務めてよぉ」

「いいけど発電機買わなきゃ。また出費が嵩むよ」

「ジン、君はとりあえず夜中まで電気つけてスクリーンでいかがわしい映像見るのやめようね。電気代の節約だから。あとティッシュも」

「おいゲンキそりゃねーだろ俺の唯一の楽しみ奪う気かよ!だったらお前とレイアが女装してレズもの上映会しろ!」

「…最低…宇宙の藻屑になればいいのに。アムちょっとゴッドマシンガン貸して」

「まあまあゲンキ落ち着いて。男のたしなみはしょうがないにしても消灯時間を決めるとか安い食材をカオルの腕で美味しい料理にしてもらうとか色々あるわけで…」

「まあそんなとこだろうな。もっとも一番は警報を鳴らさないことだ。あれをやると結局出費に繋がるからな。なあジン、レイア?」

アムの苦言をレイアはヘアセットをして聞こえないフリをしジンはゲンキの軽蔑の眼差しにもの申して聞いていなかった。

そして数日後リフォームが完成し、プチリニューアルしたカミセブン号は次の中継地目指して出航した。綺麗で快適なリビングができたはいいがレイアとジンとアムはそこに入り浸ってますます仕事をしなくなったのだった。