うちの両親は、私が3歳の時に離婚した。
その頃までは、私はいろんな住居を転々として、両親と関東で暮らしていたらしい。
私は母に連れられて、母の実家のある九州へ連れて帰られた。
母は若くて美人で気が強くて、けれど脆くて繊細な人だった。
母は、私に、男の子が欲しかったと言った。
本人が覚えているかどうかはわからないが、今でもよく覚えている。
もし男の子だったら名前は何にした?と聞いた。
母は、海里と答えた。
私は男の子じゃなくてごめんね、と思った。
男の子になって、強くなって、母を守りたかった。
私は母と2人でも幸せだった。けど、1人ぼっちで家にいることも多かった。
まだ若かった母は、彼氏と出掛けることも多くて、
深夜に目が覚めると私はひとりきりだった。怖くて泣いた。
寝る時は、自分の周りにぬいぐるみをたくさん置いて寝た。寂しくないように。
おもちゃやぬいぐるみは、母がたくさん買ってくれた。
私が小学2年生の時、祖父が亡くなった。皆から尊敬される偉大な人だった。
母は祖父のことが大好きだった。
祖父がいなくなって、頼れる人が居なくなってから、母は精神が崩れ落ちたのかもしれない。
私が小学3年生の時、母は私の担任の先生と恋仲になり、再婚をした。
私はその人が大嫌いだった。教師の表向きの面の裏側は陰険なクズ男だと知っていたから。
みんなが反対していた。けれど、母は寂しかったのだろう。言うことを聞かなかった。
それが不幸の始まり。
私は邪険にされ、存在を隠され、
それまでに会ったこともなかった父親の元へ行かされた、小学4年生の夏休み。
