今2012年シーズンのライオンズはそのディフェンス面において
のべ5415人の打者を打席に迎え、3824個のアウトを奪う(つまり1274 2/3イニングを消化する)中で
のべ補殺数は1472を数え、また併殺および三重殺に貢献した人数はのべ280人を記録し
一方で失策数101個、捕逸数6個、暴投数47個、ボーク数4個を記録するという最終結果となりました。
(※ちなみに昨2011年シーズンのライオンズのディフェンスは
のべ5352人の打者を打席に迎え、3844個のアウトを奪う(つまり1281 1/3イニングを消化する)中で
のべ補殺数は1630を数え、また併殺および三重殺に貢献した人数はのべ365人を記録し
一方で失策数85個、捕逸数8個、暴投数33個、ボーク数4個を記録するという最終結果でした)
昨年と比較しても、奪ったアウトは20個(=消化したイニングも6 2/3)減少する中で
捕逸数は2個減少しボーク数は昨年と変わらずながらも
失策数は16個、そして暴投数も14個増加し対戦打者数ものべ63人増加しており
これでよく、失点数という観点で観ると昨年の522点から今年の518点へと
ほぼ横ばい、それも若干微減の成績へとまとめてこれたものだというのが素直な感想ですが
そのあたりを掘り下げていくためにも、このエントリーでは
刺殺数・補殺数、そしてレンジファクターなどを利用しながら
ライオンズのディフェンスのうち主に野手守備陣のフィールディングを
どんどんと追いかけていければと思います。
【刺殺数・補殺数の分布に観るライオンズのディフェンス】
それではまずはじめに、2010年~2012年のライオンズのディフェンスにおける刺殺数および補殺数の分布を観ていき
そこに変化があるか、あるとすればそれは何に起因するものだろうかについて考察したいと思います。
まずは刺殺数(put out)から。
2010年合計3832個、2011年合計3844個、2012年3824個と
消化ゲーム数が144ゲームで変わらないのですから当然ながらほぼ同数でしたので
純粋に分布だけを観るため、円グラフで表します。
(※144ゲームすべてで9イニング27アウトを奪ったとすれば総計3888個、
仮にホームでの72ゲームはすべて延長戦を待たずに勝敗が決し
更にはアウェイでの72ゲームをすべて相手の9回裏の攻撃を待たずに敗戦したとして
1シーズンの仮想最少アウト総数は72×27+72×24で3672個となります)
続いて、補殺数(assist)について。
こちらは総数も年度によってある程度かなり異なりますので
積み上げ棒グラフにて表示します。
まずは刺殺数の円グラフを観てみると、その分布は
2010年に対して2011年には一塁手の刺殺数が数%増加し、
その分捕手の刺殺数の割合が減少しておりましたが
2011年に対して今2012年には逆に一塁手の刺殺数の割合が2010年度を下回るほどある程度大きく減少し
対して今度は外野手の刺殺数の割合が数%増加した、と観て取れます。
① 一塁手の刺殺数が増減する主な要因として考えられるのはグラウンドアウトの増加及び減少であり
② また捕手の刺殺数が増減する主な原因として考えられるのは三振数の増加及び減少、
③ そして外野手の刺殺数が増減する主な、というよりほぼ100%の原因として考えられるのは
その外野手たちが処理したフライアウトの増加及び減少です。
まずは①の一塁手の一塁手の刺殺数が増減する主な要因として考えられる
グラウンドアウトの増加及び減少について、今度は年度ごとの補殺数を観ていきますと
2011年には2010年に対し特に投手自身の補殺数が60個以上増加しているのを筆頭にして
遊撃手20個ほど、三塁手10個ほどなど内野陣すべてにおいてそれぞれ若干ずつ補殺数が増えており
逆に2012年には2011年に比べるまでもなく2010年と比較しても
投手自身の補殺数こそ29個増加させるものの二塁手40個、三塁手40個、そして遊撃手27個など
内野陣すべてにおいてそれぞれある程度大きく補殺数を減らしており
ここからも今シーズンのライオンズは
グラウンドアウト数を減らしたであろうことが推察できます。
また、②の捕手の刺殺数に大きな影響を与える三振数について観てみますと
2010年度は927個であったものが2011年度には860個、そして2012年には816個と
年々ある程度大きく減少させ続けており
逆にその割には2012年度の捕手刺殺数の割合が2011年度と同じ23%を維持したことを観ると
銀仁朗さんを中心とした捕手陣が本塁で数多く、走者との交錯を恐れず
本塁で数多く走者をブロックしアウトを奪っていった姿が浮き彫りになってきます。
さて、最後に残りました③の外野手たちの処理したフライアウト数の増加についてですが
今度はその中でもどの外野手の貢献度が高いのかを観ていくためにも
今2012年シーズンのライオンズのディフェンスにおけるレンジファクターを
外野手だけではなく内野手・捕手、そして投手も含め
守備に就いたすべての選手たちを対象にして一覧表にして示したいと思います。
【レンジファクターに観るライオンズのディフェンス】
※ なお、各守備位置における各選手ごとの刺殺数・補殺数および併殺関与数については
NPB公式サイトの2012年度 埼玉西武ライオンズ 個人守備成績のページより引用させていただきました。
詳細に記録を取り続けられた公式記録員の方々をはじめ関係各位の皆様に
この場を借りまして、深く御礼申し上げます。
※ なお、レンジファクターについての解説およびこの指標を利用する際の留意点については、
そしてまた昨2011年にライオンズの選手たちが残したレンジファクターについては
共に過去エントリー レンジファクターで振り返る、2011年ライオンズのディフェンス
および ライオンズ外野守備陣の貢献度を測る において
私なりに詳細に記載しておりますので、そちらも併せてご覧いただけると幸いです。
※ なお、今シーズンから各選手たちがその守備位置に着いた時に
どれだけの打者たちが打席に立ったかの延べ人数も
総守備機会数として、被打席数(=batters faced)の欄を設けて記載しており
今回は各守備位置ごとにその総守備機会数の多い選手順に並べて表示しております。
※ また、当該守備位置で規定守備試合数をクリアした選手及びその成績は
太字およびスカイブルーの背景色で示しております。
さて、上で表した2012年ライオンズ野手陣のレンジファクターは、上でも挙げました
過去エントリー レンジファクターで振り返る、2011年ライオンズのディフェンス に記載した
2011年ライオンズ野手陣のレンジファクターとの比較もできますし
また非常にありがたいことに、
ブログ しがなき男の楽天イーグルス応援ブログvol.3 を運営なさっているShibakawaさんが
そのエントリー、
〔記録〕日本球界復帰元年。楽天・松井稼頭央選手のファインプレー特集&2011年パリーグ遊撃手のレンジファクター
および
〔記録〕2011年パリーグ主な中堅手のレンジファクターと楽天・聖澤諒選手の主なファインプレー
において
パシフィック・リーグの他チームにおける各遊撃手および各中堅手の
2011年度(中堅手については2010年度も)のレンジファクターをつぶさに調べ上げ
公開してくださっておりますので
その費やした多大な労力および時間に最大限の敬意と感謝とをここで示させていただきつつ
以下、ライオンズ各選手の残したレンジファクターを分析していく上で
大いにそのデータを引用させていただければと思います。
Ⅰ. 遊撃手、中島裕之選手の守備はそこまで物足りないものなのか
外野手陣の分析を施していく前に、まずは一般的にそこまで好印象を抱かれていない
遊撃手、中島裕之選手のフィールディングについて観ていきますと
もちろん伝統的な、けれども消極的な
“野手は投手陣の投球の邪魔をしないプレイさえしていればOK”という守備評価指標で観れば
2011年シーズンは失策10個で守備率.985、2012年も失策18個で守備率.971を記録していますが
逆に積極的に“非常に難しい、素晴らしいプレイを含めて
どれだけ数多くのアウトに関わることで投手陣の投球を助けることができたか”を示す
守備評価指標であるレンジファクターで観ていけば
2011年シーズンは4.69を記録し今2012年シーズンも多少その値を下げたものの4.62を記録、
この成績はShibakawaさんの上述の2011年度遊撃手レンジファクターに関するエントリーを観ていただければわかるとおり
昨シーズンは規定試合数(96試合)を超えたパ・リーグの遊撃手の中では
レンジファクターではなんと堂々の1位の成績を残しており
2012年シーズンについても
もちろん2012年度の他チームの遊撃手レンジファクターが不明のため
2012年度における各選手ごとの正確な比較は難しいものの
ナカジさん自身は2011年の成績とほぼ同じ成績を残しているのですから
恐らく、パ・リーグ遊撃手の中でも優秀な部類に入るであろうことが大きく予測できます。
詳しくは今シーズンもShibakawaさんがまとめてくださるであろう
2012年度のパ・リーグ遊撃手たちのレンジファクターの数値を待つとして
積極的にどれだけアウトを奪うことに貢献したか、という観点から見れば
ナカジさんは印象ほどその守備に難を抱えるといえるのか、という疑問が当然ながら大きく湧き
オフェンス面での貢献度が高いため常にゲームに出場することが最優先に求められ
怪我するリスクを防ぐべく派手なダイヴィング・プレイなどを魅せず
また加えて失策もある程度数多く犯すことが私たちの印象を大きく左右しているものの
アウトを奪い、イニングを消化していくということへの貢献度という観点から見れば
事実として、ナカジさんは非常に優秀な遊撃手であると高く評価できることも確かです。
来る2013年シーズンにはおそらくナカジさんはライオンズを離れているでしょうから
ナカジさんの後継者となる新しい遊撃手がどれだけのレンジファクターを記録してくるかも
来シーズンのライオンズのディフェンスを追っていく上で非常に楽しみな点です。
Ⅱ. 外野手、秋山翔吾選手の2012年シーズンにおける守備面での突出して素晴らしい貢献を称えよう
さて、続いて本題に入りますが
2012年のライオンズ外野守備陣の奪った刺殺数(=フライアウト数)が
2011年度の839個から966個へと大きく増加、
また加えて2012年のライオンズ外野守備陣の記録した補殺数も
2011年度の17個から24個へと大きく増加していくなど
ライオンズのディフェンスにおける外野守備陣の貢献割合が大きく増加したことは
上でも観てきた通りではありますが
その代表的な要因として考えられるのはやはり
中堅手、秋山選手の大きな成長とそれに伴い栗山選手を左翼手へと配置転換し固定たこと、
この2点に尽きるだろうと観て取れます。
栗山選手を左翼手に配置転換しシーズンを通して固定することができたことで
そのレンジファクターこそ2011年の2.00から2012年の2.09へと微増するに留まるものの
うち補殺数が2011年の2個から、2012年にはシーズン終盤の骨折により
守備機会数を大きく減らしながらも計7個へと大きく増やすことに成功、
2008年や2009年の巧さんの補殺数を観ても
やはり巧さんを左翼手で起用し続けることは
安定したライオンズ外野守備を構築するにあたって必要不可欠な要素であると言えますね。
さて、その巧さんの左翼手固定を可能にするためにも重要な要素であったのが
2012年の秋山さんの中堅手としての成長と素晴らしいフィールディングの数々における大きな貢献で
外野手(左翼手・中堅手・右翼手すべて含む)としても
2011年度の106ゲーム出場で766 1/3イニング-レンジファクター2.31から
2012年度の出場ゲームこそ同じく106ながらも920イニングでレンジファクターなんと2.87へと
非常に素晴らしい成績へと向上させたことは
まさに今シーズンの秋山さんの特にディフェンス面での飛躍的成長を雄弁に語ってくれています。
このレンジファクターの値がどれだけ素晴らしいかを更にわかりやすく観ていくために
Shibakawa さんがまとめてくださった
2010年及び2011年度のパ・リーグ中堅手のレンジファクターと比較すべく
今シーズンの秋山さんのレンジファクターを守備位置別(中堅手および右翼手)に分け
以下一覧表にて示したいと思います。
※なお、2011年度の秋山さんの中堅手としての守備成績は
289イニングと消化したイニングも少ない中でレンジファクター2.24を記録しておりました。
この2012年における中堅手・秋山さんが残したレンジファクター、2.92という値は
Shibakawa さんによれば昨2011年シーズンおよびその前の2010年のパ・リーグ中堅手では
マリーンズ岡田選手の残した2.58および2.42が最高であることから観ても
もちろん例によってまだ2012年度の他チームの中堅手レンジファクターが不明のため
2012年度における各選手ごとの正確な比較は難しく
詳しくは今シーズンもShibakawaさんがまとめてくださるであろう
2012年度のパ・リーグ中堅手たちのレンジファクターの数値を待つとして
恐らく2012年におけるパ・リーグ中堅手たちの残した値の中でも
突出して素晴らしいものとなるのではないかと大きく推察できます。
このように
今2012年シーズンのライオンズの外野に、それもセンターフィールドにまさに“君臨”し
活き活きと遺憾なくその身体的能力を発揮しつつ素晴らしいフィールディングの数々を魅せ続け
数多くのアウトを奪っていきながらイニングを消化していくことに貢献し続けた秋山さん、
それでも今シーズンは106ゲーム920イニングの出場に留まったのですから
ぜひぜひ来たる2013年シーズンには144ゲーム・フルイニング出場を大きな目標とし
その上でリーグに誇る素晴らしいレンジファクターを記録していきながら
常にライオンズのセンターフィールドに君臨し続けていってほしいと心より願います。
また最後になりましたが、
今シーズンは外野手として大﨑さんそして熊代さんの飛躍したシーズンともなりました。
秋山さんはもちろんのこと、大﨑さんや熊代さんもぜひぜひ、
来る2013年シーズンも更なるオフェンスそしてディフェンス両面での貢献を残し
更なる出場イニング数の増加及びその上でのレンジファクターの向上を目指してほしいと願います。