はじめに。
この記事はライオンズ攻撃陣についてのデータ分析・考察エントリーですが
shibakawaさんのブログ、しがなき男の楽天イーグルス応援ブログvol.3のエントリー、
〔分析〕楽天イーグルスのあまりにも低すぎる出塁率についての一考。
フルカウント打席割合&打撃成績、四球数ほか。
におけるイーグルス攻撃陣との比較データでもあります。
お時間があれば、ぜひ上述のリンクから飛んで
ライオンズ、イーグルス両攻撃陣のデータを比較しつつ見ていただけると
より楽しめるエントリーとなっております。
■ ライオンズ攻撃陣のチーム出塁率、四球、長打率、OPSの年度別変遷 ■
まずは、過去6年プラス今シーズンここまでのライオンズ攻撃陣の
チーム出塁率、四球、長打率、OPSの年度別変遷、そして
その成績のパ・リーグ内における順位を見ていただければ
ライオンズはここ最近非常に攻撃陣の成績が継続して素晴らしく
中でも長打率は2006年以降昨年までずっとリーグ首位を誇るものでした。
リーグ優勝を達成した2008年は
.453と抜群の素晴らしさを誇るその長打率のおかげでOPSも素晴らしい値を記録し
1位と僅差のリーグ2位で終わった2006年、2010年もOPSの値は素晴らしかったのに対し
5位に終わった2007年は出塁率・長打率・OPSすべてリーグ内順位は1位であるものの
例年のライオンズ攻撃陣に比べてみればすべてその値はかなり低水準であり
4位に終わった2009年もリーグ5位と低水準に終わった出塁数にひっぱられ
OPSは2007年ほどではないものの例年に比べれば低水準であったことも確か。
もちろん、野球はオフェンス(=攻撃)だけではなく
ディフェンス(=投手・守備)もチームの成績には大きな影響を与えるものですが
少なくともライオンズ攻撃陣はここ数年かなり素晴らしい成績を継続し
それがチーム成績を下支えしてきたことは間違いないといえるでしょう。
そして、そういった視点で今シーズンのデータを見るならば
統一球等の影響もあり、それになかなかうまく対応できずに
まずは長打率が例年の成績に比べ大幅に下落し
それがOPSにも如実に反映されていることは
ライオンズにとって非常な痛手であり
今シーズン最下位に沈む苦しい戦いを強いられていることの
大きな要因の一つになっていることは明らかでしょう。
■ ライオンズ攻撃陣の全打席に占めるフルカウントの割合・カウント別四球数・フルカウントにおける打撃成績 ■
さて、シーズンの約2/3を消化した現在でも
なかなか思ったほどの改善が見られず苦しむライオンズ攻撃陣ですが
四球数をリーグ1位の261個と数多く奪っている、という成績に
出塁率を上昇させOPSの上昇を下支えさせながら
その中で球数を数多く費やさせ忍耐強く闘う打席を重ねつつ
じっくりと打率、そして長打率の改善をもはかっていこうとうする試みが見て取れます。
そこで、ライオンズ攻撃陣の今シーズンここまでの
全打席に占めるフルカウントの割合・カウント別四球数、そして
フルカウントにおける打撃成績を選手ごとに見てみたいと思います。
(※選手並び順は、今シーズンここまで打席数の多い順になっております)
打席数の多いクリさん、そして剛也さんが忍耐強く闘う打席を数多く作り出し
そしてフルカウントで抜群に素晴らしい成績を残していることが一目瞭然ですね。
その他にも各選手の打席におけるアプローチ・特徴が良くあらわれており
坂田さんはフルカウントでの素晴らしい成績を残しているのですから
今後更にじっくり忍耐強く闘う打席を増やすことをひとつの大きな目標としてほしいですし
浅村さんはフルカウントでの打率や長打率はかなり低成績ですが
16個の四球をそこで奪いながら5割近くの出塁率を稼ぎだせるのなら
もう少し2ストライクまでは打ち返す球種やコースなどを絞っていく工夫も
今後成長の過程でひとつの大きな目標としてほしいところ。
また、秋山さんも今はしゃにむに打ち返そう、打ち返そうでいっぱいだと思いますが
今後その俊足をじゅうぶんに活かすためにもクリさんをひとつの大目標として
出塁率を稼いでいくことを最優先ミッションとしてほしいところ。
そのあたりはフルカウントからの4打点のうち2打点までが満塁からの四球によるものなど
同じくルーキーの熊代さんのアプローチが優秀なのも目立ちますね。
そして、銀仁朗さんはいろいろと打席における考え方・アプローチを
もう一度きちんと整理し直してほしいところ。
MLBではB3-S2のフルカウントから投手が投げる勝負の一球のことを
もうこれ以上ストライクもボールも共にカウントが増えることはなく、
ちょうど相撲で言うところの“制限時間いっぱい、待ったなし”と同じように
勝負を引き延ばしにできない局面、そして結果がスグに明らかになる局面という意味で
" payoff(打席を清算し、決着を迎えるヤマ場) pitch " と呼びます。
ライオンズの攻撃陣は非常に若い選手が多く
ベテランと比べれば、技術などで大きく劣ることもあり
ヤマ場であるフルカウントまで持ちこんでも
打率としては.211と、理想通りに打ち返して安打という結果を残すことは難しいですが
出塁率としては.426と当然非常に優秀な成績になるのですから
初球からどんどん積極的にスウィングしていくことももちろん重要ですが
それは2ストライクに追い込まれたら打てないから、という
恐怖に突き動かされての後ろ向きな理由から
しゃにむにあれもこれもフェア領域に飛ばそうと
“相手投手にスウィングさせられる”のではなく
2ストライクになったらなったでヤマ場を歓迎し楽しみにフルカウントを目指し、
出塁率を稼ごうと切り替えるアプローチを自分は持っている、という余裕を持ちながら
自分のほんとうに打ちたいと思う投球を積極的に自分の意思でスウィングしてほしい。
スウィングさせられているか、それとも
ほんとうに自分からスウィングしていっているかは
その打者が2ストライクと追い込まれてからの打席を
苦手と捉えているかどうかにかかっているもの、
ぜひライオンズの各打者には"payoff pitch"における
自分・相手投手を始めとした球場全体を包む緊張感を
出塁率を稼ぐ、そして将来は打率や長打率をも稼ぐことのできる
絶好のひとつの自分の“魅せ場”としてとらえてほしいですね。