Q255)

私は予備学校で英語科の講師をしております。

先日、和文英訳の問題で以下のようなものがありました。

 

誰にでもわかりやすい文を書くことがどれほど難しいかに気づいた。

 

模範解答は

 

I realized how difficult it was to write something that was easy for anyone to understand.

 

となっていました。

 

そこで、「気づきました」についてなのですが、

私はgot aware thatではいけないのかと思うのですが、それをネットなどで調べるとどうもawareについては

 

”「知る」をbe aware 「知るようになる」をbecome aware と書く”と書いてありました。(ネイティブの意見です)

 

surpriseについても、got surprised とは言わない という情報がありました。

 

しかし、got interested in など中には状態の変化を表すget Cを使うものもありますので、その区別がよくわかりません。

調べても欲しい情報がなく、困っております。

もしご存知でしたら教えて頂きたいです。

 

A)  問題を整理すると、get Cとbecome Cの違いは何か、ということですね。

個別には、(a) got aware, (b) became awareが可能か。(c) got surprised, (d)became surprisedが可能か。(e) got interested, (f) became interestedが可能か、ということですね。

 

この問題はとても難しいものでした。site:eduを使って自分なりにデータを集めて整理すると、それまで自明に思えていたことと相反する結果に遭遇することが多く、また柏野先生のお力をお借りしました。まず、柏野先生への私の質問と柏野先生のご回答を読んでください。

<柏野先生へ>

 

(質問1)ジーニアス英和辞典のI became[×got] aware of her looking at me.彼女が私を見ていることに気づいた。という記述は間違いではないでしょうか?

もし「got awareが不可」というのが正しいなら、<データ5>の101件という例文をどう考えればいいのでしょうか? また、なぜgotが不可だと言えるのでしょうか?

<データ5>

“got aware” site:edu  101件

“became aware ” site:edu  182件

 

(質問2)質問者の方は、「got surprisedとは言わないという情報がありました」と書いていますが、<データ8>のように124件もありますので、got surprisedと言うと断定してよろしいですか? また、ふだんgot surprisedやbecame surprisedを見かけないのは、was surprisedで状態の変化の場合も表現できるので、わざわざgot surprisedやbecame surprisedを使わないせいだと私は思います。それで正しいのでしょうか?

 つまり、They were surprised to hear that she was killed in the accident.をわざわざ

They got[became] surprised to hear that she was killed in the accident.と言う必要はないからだということです。

<データ8>

”got surprised” site:edu 124件

”became surprised” site:edu 100件

 

(質問3)<文献1><文献5>で引用したCloseのHe became[*got] proud and ambitious.という記述は現実に合っていないように思われます。<データ12>のようにgot ambitiousが87件もあります。<データ13>のようにgot proudも37件もあります。どう考えたらよいのでしょうか?

 

<文献1>「英語基本動詞辞典・簡約版」(小西友七編)(研究社)のp.113

 3.類語との関係―become とget

「…になる」の意のbecomeとgetは多くの場合交換可能。両者とも以下の形容詞を補語にとれる。ただし、getはくだけた語調。

dry, wet, hot, warm, dark, late, sick, ill, old, weak, fat, thin, angry, tired, warmer, longer, shorter, more difficult, etc

一般的にbecomeは「しだいに…になる」、getには「すぐに…になる」という含意の違いがある。

(中略)

getは一時的で外見的状態の変化に好まれ、becomeはより抽象的属性を示す。[Close, Reference, p.196]

He became[*got] proud and ambitious.

 

<文献5>「英語基本動詞辞典・簡約版」(小西友七編)(研究社)のp.625 

2.S get C  S<人・物・事>がCの状態になる

(中略)

NB14 一般にbecomeはgetよりも堅い。また、getはよく命令形で用いられるがbecomeは普通でない。getはget sick[lost, angry, excited, wet]のように人の一時的な状態を表す場合に好まれ、becomeはHe became ambitious.のようにより抽象的な人の性質などを述べる場合に多く用いられる[Close, Reference,p.196]

 

<データ12>

“got ambitious” site:edu  87件

“became ambitious” site:edu 114件

<データ13>

“got proud” site:edu   37件

“became proud” site:edu  167件

 

(質問4)どうやら、become Cはどんな形容詞でも使えそうに思われるのですが、become Cが不可でget Cを使わねばならないということはあるのでしょうか?

 

<柏野先生からのご回答>

まずはLance氏のコメントを下に張り付けておきます。

結局は意味の違いよりも文体の違いが優先されるようです。

ちなみに、私の自家製のデータベース(2000万語、英米の小説から成る)では、以下の(1)のgotのヒット数はゼロ、becameは107例でした。

また、GloWbEではgotは10例、becameは3234例という結果でした。

なお、質問2のあなたの意見は、awareの場合も同じことが言えるように思います。

 後はLance氏のコメントを参考にしてください。

 

**

[1]  Can we say the following?

(1) I became/ got aware of her looking at me.

 

"Became" is acceptable, "got" is not acceptable.

 

(2) They became/ got surprised to hear that she was killed in the accident.

 

"Became surprised" is not acceptable.

"Got surprised" is half-acceptable. It is colloquial.

"Got a surprise" is better.

"Were surprised" is best.

 

(3) He became/ got proud and ambitious.

 

"Became" is acceptable.

"Got" is acceptable, but colloquial.

 

[2]  I think we can use almost any adjective after 'become,' but are there cases

where 'become + adjective' is not allowed and only 'get + adjective' can be used?"

 

The adjective after "become" should represent a continuing state.

That is why "aware" and "proud and ambitious" are acceptable, but "surprised" is not.

Surprise does not last long.

The adjective after "get" should represent a sudden change of state or mood.

"Become angry" and "get angry" are both acceptable, because "angry" represents both a sudden change of mood and a state.

However, "get" is often used colloquially where "become" would be preferred in writing.

WRITING: The weather became cold.

SPEECH (but also acceptable in writing): The weather got cold.

 

 ここから私の考えになります。

 この問題が複雑になっているのは、意味の違いと文体の違いの2点が存在することです。

まず、質問4「become+形容詞が不可でget+形容詞を使わねばならないということはあるのでしょうか」に関して整理します。

Lance先生は、「becomeの後に来る形容詞は継続的状態を表す。だから、became aware/ proud/ ambitiousは可だが、became surprisedは不可。surprised『驚いている』は長く続かないからである。getの後に来る形容詞は状態や心的状態の突然の変化を表す。become angryとget angryは両方とも可。angry『怒っている』は心的状態の突然の変化も(継続的)状態も表すからである。書き言葉でbecomeが好まれる場合に、口語的にはgetがしばしば使われる」とおっしゃっています。

 

質問1「ジーニアス英和辞典のI became[×got] aware of her looking at me.という記述は正しいか」に関して

Lance先生によると、ジーニアス英和辞典のI became[×got] aware of her looking at me.という記述は正しいことになります。Lance先生は、「became awareは可、got aware は不可」と言われています。また、柏野先生のデータベースでgot aware はヒット数はゼロ、became awareは107例というのが根拠になります。

<質問4>のLance先生の言によれば、awareは「継続的状態を表す」ので、became awareが可、get awareが不可、となるわけです。

 なお、<データ5>に関しては、became awareが正しいことが実例で証明されているが、実際には、口語ではgotが使われることもあると考えればよいことになります。

 

 質問2「They became/ got surprised to hear that she was killed in the accident.はどちらが正しいか」に関して

Lance先生は、「“became surprised”は不可。”got surprised”は半分可。口語的。”got a surprise”の方が良い。“were surprised”が一番良い。」とおっしゃっています。

つまり、They were surprised to hear that she was killed in the accident.と言えば、状態も変化も両方に使えるのだから、わざわざbecameやgotを使うことはない、ということです。

なお、<データ8>に関しては、surprisedは「瞬間的な心的状態」を表す語なので、「心的状態の突然の変化」を表すgotの方が頻度が高いのはうなずけますね。一方became surprisedは、gotとの混同の結果だと思われます。

 

質問3「He became/ got proud and ambitious.はどちらが正しいか」に関して

Lance先生は、「“He became proud and ambitious.”は可。“He got proud and ambitious.”は可だが、口語的。」とおっしゃっています。つまり、proudやambitiousは「継続的状態をを表す」のだから、本来はbecomeだが、口語ではgetも可ということです。

<データ12・13>は、become proud and ambitiousの方がget proud and ambitiousより頻度が高いのは当たり前ですね。get proud and ambitiousは、口語では使われているということですね。

 

なお、質問者の方があげられていたinterestedは、become interestedのほか、get interestedも使われています。interestedはangryと同じ仲間で、継続的状態も突然の変化も表すからですね。

<データ1>

“got interested” site:edu  174件

“became interested” site:edu 184件

と、どちらもほぼ同じ頻度で使われています。

<柏野先生の提供データ>

(参考)GloWbEでは[become] interested  2318例/[get] interested 1218例がヒット。

(実例)“He’s a man called Gatsby.  That’s all I know.”  “But where is he from?  What does he do?”  “Now you’ve got interested in him,” Jordan smiled.

      [突然関心を持ち出した、という感じが出ている]

 

私が調べた範囲では以下のようにまとめられました。

(1)         ほとんどの形容詞はgetもbecomeも両方可。becomeの方がgetより堅い。

<文献1>

(2)         becomeは「しだいに…になる」、getは「すぐに…になる」

<文献1>

(3)becomeは変化の速度を表す副詞と共起することがgetより多い。

<文献3>「英語基本動詞辞典・簡約版」(小西友七編)(研究社)のp.112のbecomeのNB6。

 

NB6 変化の速度を表す副詞とともによく用いられるが、特にgetと比べゆっくりした変化を表すmore and more, increasinglyなどが多い。[Quirk et al, p.803]しかし、必ずしもそれらに限定されずもっと自由と考えてよい。

Our technique is becoming increasingly specialized. 

Although she didn’t make a sound, I quickly became aware that she was looking at me very hard.

Gaylene didn’t suddenly become beautiful and popular, but …

 

(4) becomeは比較級と共起することがgetより多い。

<文献4>「英語語法大辞典Ⅰ」(大修館)のp.467の9. become, get, growについての回答欄。

 

 Palmer: English Words (s.v. BECOME)の原文を見るとこうなっています。

 With adjectives, particularly in the comparative degree.  BECOME is usually replaced by GET or GROW, especially when the adjective is not in the comparative degree.

 

(5) 人の一時的な状態を表す形容詞はgetの方が多い。一方、永続的な状態を表す形容詞や抽象的な人の性質を表す形容詞や今後もその状態が続くことを暗示する文脈ではbecomeの方が多い。

<文献1><文献5>

<文献6>「現代英語語法大辞典」(小西友七編)(三省堂)のp.13

 

また、becomeが永続的な状態を表す形容詞を従えるのに対し、getは一時的な過程を表す形容詞がくることが多い。[木塚&バーダマン1997]

Mary was ill in bed last week, but she got/* became better.メアリーは先週病気で寝ていたが、よくなった。[cf. become betterは「よい人になる」の意]

Frank became[*got] tall.フランクは背が高くなった。

 

<文献7> 「ウイズダム和英辞典」のp.1331

 

彼はすぐに有名になった。

He soon became[×got] famous.

getは通例、一時的な状態を表す場合に用い、今後もその状態が続くことを暗示する文脈では使わない。ただし進行形では可。

He is getting famous.

 

ただし、<データ>や<Lance先生の回答>からは、意味よりも文体で動詞が選ばれる、つまり口語的な場合にはbecomeよりgetが使われる場合がしばしばあるようです。

 

(6) surprisedのように、心的状態を表す形容詞の場合は、getやbecomeより、be動詞を使うことが圧倒的に多い。

 

以上です。

なお、ご質問がある方は、以下のルールを踏まえてお願いします。                                              

 

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