Q138)『英語で説明する日本の文化 必須表現グループ100』by 上田一三のP21
「お盆は 8月13日~15日の間、家族のもとに帰ってくると考えられている先祖の御霊を祀る日本の厳冬的な仏教行事である。」
 Obon is a traditional Buddhist event in Japan to honor the spirits of one’s ancestors which are believed to return to their families during the period from August 13 through 15.

be believed to be C, be thought to be C の形は おなじみなのですが、to be の所に returnという一般動詞が入ることに 違和感を感じています。ジーニアス英和辞典でも 通例be以外の動詞は用いないとあります。

the spirits of one’s ancestors who we think to return to … とでもすればいいのかと考えています。先生のご意見を聞かせていただければ 幸いです。

A)確かにジーニアス英和辞典のbelieveの1には次のように書かれています。

[語法](1) 不定詞構文では, 通例 be 以外の動詞は用いない:×She believes him to win. ただし完了形は可:She believes him to have won.

しかし、which are believed to return to their families during the period from August 13 through 15は正しい英文です。
 ポイントは2つあります。
(1)believe O to doの形が存在すること。
 「英語基本動詞辞典(普及版)」(小西友七著)(研究社出版)の126ページのbelieveの5に載っています。

5. S believe O to do S<人など>がO<人など>が…すると信じている[思っている]
I believe Melvin to love Lucy. 私はメルビンがルーシーを愛していると信じている。


ただしこのときto不定詞に来る動詞は限られます。同書のNB17にこうあります。

未来の行為[状態]に言及しうるexpect, allow, askなどこの型をとる大部分の動詞(futurity verb)とは異なって、to doの意味内容は過去、完了的、現在的、I believe this plant to grow[exist] in a cold region.のように習性的性格を有する内容でなければならない。

よって本問のthe spirits of one's ancestors which are believed to return to...は能動態にするとthe spirits of one's ancestors which people believe to return to...となりますね。そうするとspiritがreturnするのは習性的行為なので可となります。

 (2)believeが受動態になるとto不定詞の動詞の範囲が広がること。
これについては「現代英米語用法事典」(安藤貞雄・山田正美著)(研究社)の91ページにこうあります。

NB4 ただし、believeが受動態の場合は、能動態では容認されないto acceptのような不定詞が容認可能になる。それは、「現在習性的」な読みが不定詞に付与されるためと考えられる。That judge is believed to accept bribes.あの判事はわいろがきくと信じられている。
(×)They believe that judge to accept bribes.は不可。不定詞が未来の行為を指すと解釈されるからであろう。
to arrive tomorrowのような、明確に未来の行為に言及する不定詞の場合は、たとえ受動態の後に用いられても十分に容認可能にはならない。
(?)John is believed to arrive tomorrow.


よって本問の場合は正しい表現であったことになりますね。