Q101)「英文法レベル別問題集3」(安河内哲也著)(東進ブックス)の36ページの問題です。南山短大の問題です。
If you have a problem, please don't hesitate ( ).
① to have asked ② asking ③ ask ④ to ask
もちろん正解は④to askですが、解説にこうあります。

hesitate to Vは「Vするのをためらう」という意味。これはhesitateという自動詞に続く副詞用法の不定詞ですが、熟語として覚えておきましょう。

私はhesitate to doは、他動詞のhesitateがto不定詞を目的語としてとる、と思い込んでおりました。ジーニアス英和辞典を調べると確かに自動詞でした。こう載っていました。

2 [SV to do]…するのをためらう∥I hesitate to say, but you made a mistake. 言いにくいことですが, 君はミスを犯しました

しかし、to不定詞の副詞用法の目的と考えると、「…するためにためらう」というのはしっくりきません。どう考えたらいいのでしょうか。

A) 結論から言うと、hesitate to doの不定詞は、副詞用法・目的ではありません。
「講座・学校英文法の基礎 第5巻動詞(Ⅱ)」(大江三郎著)(研究社)の171ページにこうあります。

結局不定詞が三つの品詞に帰するような単純な分析を受け付けないのは、動名詞が名詞的、分詞が形容詞的というふうには不定詞がどれかの品詞の働きに割り当てることが困難なタイプの準動詞であるからである。

そして、次のような分類を提唱しています。

1.主語
2.主格補語
3.動詞・形容詞を補うもの
(a)方向性
(b)目的またはゴール
(c)特定化または同時性
(d)主たる命題の述語
4.名詞句を補うもの
(a)同格のto不定詞
(b)名詞句が内容的に不定詞句の主語または目的語の関係あるいはそれに準ずる関係にある場合
(c)「名詞句+不定詞句」が動詞のネクサスの目的語になる場合
5.形容詞が表す性質を限定するもの
6.程度の限定をするもの
7.文全体を補うものあるいは独立的性質の強いもの
8.ある種の「受動態+to不定詞」の構文


あまりに膨大なので詳しくは同書をご覧ください。ここではhesitate to doに関係あるところのみ書きます。上記の3の(a)にこうあります。

多かれ少なかれ方向性を表す不定詞を伴う動詞が多い。この方向性はしばしば時間における方向性で実現の未来性に通ずる。この種の動詞として①want, wish, like, hope, intendなど、②try, hesitate, tend, pretendなど、③「目的語+to不定詞」をとるtell, ask, persuade, urge, forceなどがあげられる。①の型の動詞は一応他動詞でto不定詞は目的語とみなすことができる。これに対して②の動詞は他動詞とみなしにくく、従ってto不定詞も目的語とはみなしにくい。(略)しかしいずれにしてもその区別は微妙で、ここで「動詞を補うもの」として大枠て一括された。

つまり、hesitate to doの不定詞は「方向を表す」と考えれば、I hesitate to sayは「私は今から言うことに対してためらう」となり、「言うのをためらう」となりますね。しかし、以上のことは教師用の知識であり、授業では、hesitate to doは語法で決まっており、「…することをためらう」の意味である、と教えても、to doが目的語で「…することをためらう」と教えてもどちらにしても害はないと思います。たとえば、「改訂版・英文法総覧」(安井稔著)では、「to不定詞を目的語にとる動詞」にhesitateがあげてありました。