Q264) 出典は特にありませんが、掲題の独立分詞構文と言えば、下のような例文が一般的です。

 

Her father being sick, she had to stay home. (est出版、Best Avenue 参考書)

 

Her father は、主格に見えます。そう思っていて、ふと、he ならば、

 

He being sick, she had to stay home.

 

になるのかな、と思って、あちこち探しましたが、言及しているものを見つけることができませんでした。

仕方なく、AI?に訊いたら、下のように返ってきました。

 

Copilot が送信しました:

 

「彼が病気だったので、母親が世話をした」を独立分詞構文で書いてみましょう。

His being ill, his mother took care of him.

この文では、「His being ill」が独立分詞構文の主語として使われています。独立分詞構文は、文語的な響きがあり、書き言葉でよく使われます。どうぞご活用ください!

 

さて、独立分詞構文の主語の「格」は、どれが正しいのでしょうか、教えて頂ければ助かります。

 

A)  「現代英文法講義」(安藤貞雄著)(開拓社)のp.248にこうあります。

 

<文献1> 15.5.7. 独立分詞節

分詞節がそれ自身の主語を持った構文を、独立分詞節(abosolute participle clause)と言う。独立分詞節はきわめて格式的なので、話しことばでは接続詞を用いた構文が好まれる。

独立分詞節の主語を独立主格(nominative absolute)と言う。

 (略)

NB1. 独立分詞節の主語が人称代名詞の場合は、<格式体>では主格、<略式体>では目的格をとる(Huddleston & Pullum 2002:1220)

(i)  We appointed Max, he/him being much the best qualified of the candidates.われわれはマックスを指名した。彼が候補者の中で断然適任だったからだ。

NB2. この構文では、古くはラテン語の奪格(ablative case)をまねて与格が用いられていた。

 

 上記の<文献1>のNB2がわかりにくい。次の「歴史的にさぐる現代の英文法」(中尾俊夫・児馬修著)(大修館書店)のp.191にこうある。

 

<文献2> 3.4.3.1 独立分詞構文の発達

(1)  Nobody having any more to say, the meeting was closed.

PEでは分詞構文の主語が主節の主語と異なる場合、(1)のような独立分詞構文になるが、この構文は、OEでラテン語の「独立奪格構文」(奪格というのは英語でいえばfrom+名詞に相当する意味を表す格)を翻訳した際に、OEに奪格がなかったために与格を用いた。

MEになると与格、対格の区別がなくなり、目的格+分詞になり、さらに語順の確立の影響からか主格+分詞へと発達していく。

 

 上記から、独立分詞構文の主語は主格または目的格なので、次の形が正しいことになる。

 He/Him being sick, she had to stay home.

 

  これで問題は解決したのだが、実は私は授業では、「it以外の人称代名詞を主語とした独立分詞構文は使ってはいけない」と言ってきた。典拠は今見つからないのだが、経験的にも、He/Him being sick, she had to stay home.のような文章には出会ったことがない。

現に、「英語参考書の誤りとその原因をつく」(河上道生著)(大修館書店)のp.314でもこう書かれている。

 

<文献3> 8. 独立分詞構文(2)

 次のような入試問題や練習問題はいつになったらなくなるだろうか。独立分詞構文を解答として書かせるのは良問ではない。

 

<問>単文にかえよ。

  As he had left a large sum of money, his sons could live in comfort.

<答>He having left a large sum of money, his sons could live in comfort.

 

<答>はあまりにもclumsyだから、Having been left a large sum of money, his sons could live in comfort.としたい。

 

以上です。

 

なお、ご質問がある方は、以下のルールを踏まえてお願いします。                                              

 

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