ゴールデンウィーク直前のその日
コロナの影響で私の仕事が休業になった 再開の見通しはたっていない
これでしばらくは 夫のそばにいられる なるべく穏やかな日を過ごせるように と願いつつ
たまたま娘もその日は 休みだった
久しぶりの3人 ゆっくり迎えた朝でした
終末期の夫は食事とトイレ以外はベットの上で過ごしていた
その日の朝は 訪問看護師が経過観察に来宅していた
午前9:30くらいだったかな
聴診器で胸の音を聞いたり 脈拍を取ったり
…滞在予定時間一杯まで 幾度もそれを繰り返していた
「先生をお呼びした方がいいと思うのですが、いいですか?」
訪問してくれる看護師も医師も 施術内容だけでなく 滞在時間 回数ごとに 経費は加算されていく
同じ内容だったとしても入院しているより 訪問している分 高めの費用になった気がする
看護師判断で予定診察日のほかに医師を呼び寄せるのも費用は追加加算
でも、必要だからなんですよね
「 はい、お願いします 」
30分もかからないうちに 医師が到着した
朦朧としている夫
聴診器で胸の音を聞く 脈を確認 ………
医師は私と娘を部屋の外に呼んだ
「 お父さんは 着陸体制に入りました 今夜かもしれないです 」
そっと予期してきてはいたけど
❕❕❕ 待って!待って!
だって 昨晩は 友人たちと ミーティングチャット してたんですよ
今朝だって 用達し手伝うという友人の申し出に 庭に水撒きするためのホースリールを頼んでいた
「 会わせたい方に 連絡を 」
これまでの人生の中で 最速で思考している私
なんとか夫を止められないか! と同時に 義理の両親 関西方面に嫁いでいる義理の妹 友人たち
それと、夫自身が事前に申し込んでいた葬儀サポート への連絡
私の脳内フル稼働💦
全身が小刻みに震えていた 武者震い⁈
まずは義理の両親 電話 気まずいがそれどころではない
孫娘が迎えに行くので直ちに来宅を!
関西にいる義理の妹 きっと仕事中だろうから留守電とメール
とにかく急ぎこちらへ!
友人の一人に現状と見通しを告げ、皆に連絡を、と。
間もなく 娘が 義理の両親を連れてきた
高齢の母は 「 お兄ちゃん!お兄ちゃん! 」と 夫の肩口を叩いていた
私の目に夫は “ 面倒〜” とでも言いたげに うっすら頷いた様に見えました
その頃 今朝ほどホースリールを頼んだ友人夫妻が駆けつけてくれた
すると夫は目を開けて「 あ〜すみません、ありがとうございます 」
微笑んで友人夫婦に言葉を発した それが 言葉としては 最後だった 〜お昼頃〜
膵臓から始まって 肝臓に そして 終末期の今は肺に 。
“息苦しさ”が 夫が感じた初めての“癌” の自覚症状だったと思います
彼にとって “息苦しさ” には とりわけ 恐怖を感じていたと思います
「 階段を登る事が辛苦なった 」 休職を決断したのも そうだったんだね…
足が上がらない というより 息が苦しくなってたんだね
だから その点を医師に相談していたんだね…
そして “ 苦しくなる前に モルヒネを 使い始める” というアドバイスに従いたかったんだね
重い病気を患う人は皆そうだと思うけど 精神的に ぐっすり眠るなんて事できないよね
夫もモルヒネを微量 使用始めてから
気絶している様だけど深く意識を失えているんだろうな
それは彼にとって この絶望に取り囲まれている世界から離脱(解放?)できる時だったよね
そこからは 時々 シャーベットを少量 唇に含ませるたびに
夫は壁にかかっている時計の方を見つめる
そうか! 妹の到着を 待っているのか
携帯を確認すると 〔 新幹線に乗った そちらへは 早くても 19:00 くらい 〕と
「あと2時間くらいで 来てくれるって」 そう告げると また 瞼を閉じました
看護師が様子を見に来てくれた時
「 こうして時々 呼吸が 止まっているね 」と、間もなくその時が近づいていると知らせてもらいました
17:30頃
妹から 〔 あと1時間くらいで行けそうです 〕
「 あと 1時間くらいで 来てくれるって 」 夫の耳元でそう告げると
彼は 体に力を込めて 目を見開いて 叫びました
「 うおぉー!! 」
最後の力を振り絞ったんだと思います なんとかして 命を終わらせない様に。
まもなく妹も駆けつけて 父と母と兄と妹の4人家族は揃いました
それから 私と娘とも合わせて6人の見守る中 21:00頃に 静かに亡くなっていった様です
6人、12個の目が見つめている中 その時がいつだったのか 誰も気づかなかった
「 あれっ? 息してない 」 急いで看護師に連絡
看護師が医師に連絡 22:00過ぎに医師による死亡確認
そこから葬儀が 一段落するまで あっという間だった …そのままゴールデンウィークに突入
愛する人が この世界から跡形もなく消えた
これは とても受け入れられない現実でした
コロナ禍も手伝って 世界から取り残された感じ
戸籍に死亡 と 成った時 一人 役所の駐車場の車中で泣きました
彼も 娘と私のそばにいられなくなる事は 逆らえないね
でも 「 あなたをずっと待っている 」 また会えるその時まで
「 それなら安心だ 」 そう言ってくれた