こないだ観たある芝居の効果音が気になった。土砂降りの雨の音がラジオのチューニングノイズのように聞こえたり、大勢が歩くシーンの足音が揚げ油のような音に聞こえた。ふと舞台の魔法が解けそうになった。
その舞台は空席が多かったのだけど、公演関係者同士が開始直前に「どこに座ってもいいよ」と合図していたり、座った関係者が自分が座った隣の空席に大荷物を広げたり、休憩時間になってもっと見やすい場所の空席に移動した姿を見かけてふと物悲しくなった。
彼らが自由席として使っていたエリアは私がプレイガイドで購入した席より前方だったので一部始終がよく見えた。
観客の自分にとって座席一つは一万円ぐらい支払ってやっと確保できる場所だから、空席でもそこは一万円の価値がある空席だと思っている。だから空いてる席を関係者が無料使い放題みたいな安っぽい使い方をしてるのを見ると嫌だなーと思う。
空席と言えば、むかし映画館で自分の席と一席空けて男性が隣に座った時のこと、私とその人の間の空席に彼が自分の荷物や服を全部モリモリと載せて嫌だなぁと思ったことがある。一番上のダウンジャケットがこっち側にはみ出したのも嫌だった。もれなく全員の隣に空席があって全員が空席を荷物置き場に使えるならまだしも、ほとんど空席が無い時にやるのはちゃうやろと思った。
人と人の間の空席と言えば、むかし某お芝居で幕間に予約制の食堂でお弁当を食べた時のこと、一席挟んで隣だったご婦人が「この椅子一緒に使って、半分ずつ荷物置きませんか?」と声をかけてくれたことがある。一緒に荷物置かせてもらったのをきっかけに少しだけ会話したのも楽しかった。いい思い出だ。
以上、とりとめのない座席の話でした
