「肺炎は日本人の死因の第3位。その中の95%が65才以上です」
俳優の西田敏行さんがこう呼びかけるテレビCMを見たことはありませんか?
要約すると「高齢者の皆さん、肺炎球菌ワクチンを打たないと肺炎で死にますよ。自治体から助成金が出るから65才になったら肺炎球菌ワクチン打ちなさい」という脅迫のようなCMです(笑)
このCMを見て「肺炎って怖いね。予防接種行かなきゃ」と思った方も多いのではないでしょうか?
私自身まだまだ対象の年齢には達していないのですが、何度も見ているうちに「肺炎球菌予防接種は大事なんだな。対象年齢になったら行かなきゃ」と思ってしまうぐらいですから、対象となる年齢の方々はもっと切実に受け止められたのではないでしょうか。
しかしちょっと待ってください!
【CMは製薬会社の広告】
私自身、この予防接種を勧めるCMは、政府広報または厚労省が主導する公共広告だと思っていたのですが、そうではないんです。
MSDというワクチンを製造する製薬会社の広告なんです。ご存知でしたか?
大事な事なのでもう一度言います。
あのCMはMSDというワクチンを製造する製薬会社の広告なんです。
このMSDという会社のマーケティングは実に巧妙です。
2012年6月に「肺炎が日本の死亡原因の第3位になった」という発表が政府からあり、メディアがそれを大々的に取り上げました。そのため、国民の多くは、漠然と肺炎が流行して多くの方がなくなっているのではないか? と思ったのではないでしょうか。
MSDはその漠然とした不安を利用し、「高齢者の皆さんはワクチンを打たないと死にますよ。」とワクチン接種をさも義務であるかのようにCMで訴えたのです。
しかし高齢者や寝たきりになった方が肺炎に罹りやすくなるのは免疫力が弱くなり、肺炎球菌のようなありふれた菌に対しても抵抗力を失うからです。
ありふれた菌と書きましたが、肺炎球菌は本当にどこにでもいる「常在菌」です。通常は身体の中に入り込んでも悪さをしない菌であり、数%の方は、すでに自分の身体の中に住まわせています。それでも肺炎を発症しないのは、最低限の免疫力があれば、撃退できるからです。
つまり、肺炎が死亡原因の3位になったのは、日本に免疫力の弱った寝たきりの老人たちが増えたからであって、肺炎が流行しているからでも、新型の強力な肺炎球菌が出現したからでもないのです。
【ほとんどの肺炎はワクチンでは防げない】
多くの老人が肺炎で死んでいるのは事実ですが、ほとんどが肺炎球菌ワクチンでは防げない肺炎です。それは誤嚥性(ごえんせい)肺炎と言います。
この肺炎は食べ物が間違って気管に入り、それが原因で肺に口内細菌などが入り込んでしまうことで起きる肺炎です。
高齢者が亡くなった肺炎のうち、70%以上がこの誤嚥性肺炎がというデータもあります。
つまり、大半の肺炎は肺炎球菌ワクチンでは防げないということになります。
しかし「肺炎球菌ワクチン・キャンペーン」では、そのような事実は伏せられ、信頼度抜群の西田敏行さんがシリアスな顔で「肺炎は日本の死亡原因の第3位」と強調し「自分だけは、まだ大丈夫だと思っていませんか?」と訴えかけてきますが、よく考えると悪徳商法といってもいいたちの悪いキャンペーンです。
【このキャンペーンの3大悪】
①MSDの企業名を目立たなくしている
国民的俳優と厚生労働省発表の数字を前面に押し出し、見た人が〝公共広告〟と勘違いするような手法を取っている。
②日本人の間にはびこるインフルエンザ恐怖症を巧妙に利用
見る人が肺炎球菌とインフルエンザを同じようなイメージでとらえるように工夫を凝らし、見る人に「強力な感染症だから予防接種を受けないと危ない!」と思わせる。
③肺炎は様々な原因で起こるにもかかわらず、肺炎球菌だけを強調し、65歳以上の場合、28%に過ぎないことを明示していない
肺炎は、インフルエンザウイルスやその他のウイルス、食物や飲料が気管から肺に入ってしまう「誤嚥」、薬剤の副作用等様々な原因で起こり、肺炎球菌以外の原因が72%です。
それを知っていれば、「無駄打ち率が7割以上もあるんじゃ、やめておく」と思った人がかなりいたのではないでしょうか。
【このキャンペーンで医療費が増大】
この肺炎球菌ワクチンは、平成26年10月から半額が公費負担になり、定期接種になりました。つまり、接種する意味がハッキリしないワクチンが半分税金で賄われるようになったのです。
役所から通知が来ると、重みが違いますから、肺炎球菌は怖いという意識を植え付けられた人は「打たなきゃいけないんだ!」と思ってしまいます。
それやこれやで、肺炎球菌ワクチンという新手の商売はビッグビジネスに成長しつつあります。
【外資系製薬会社の思うつぼ】
じつはこうした予防接種ビジネスで成功した例はほかにもあり、それらの多くは外資系の会社が手掛けたものです。
団塊の世代や昭和30年代生まれの方たちにとって、小中学校でみんなが腕をまくって受けた予防接種は懐かしい思い出ではないかと思いますが、このような光景は20年くらい前に見られなくなりました。
感染症のリスクが激減したことに加え、予防接種をしてもあまり感染症を防げないことがわかり、税金を使ってまでやる意味がなくなったということです。
そのため国内の製薬メーカーは、儲からないのでワクチンの製造をやめてしまいました。
そこに目を付けたのが外資系の製薬会社です。彼らは医師、感染症の研究者、ママさんたちの圧力団体などを味方に引き入れて、応援団を結成し、永田町の族議員や厚労省の役人に「医療費を抑制するには、病気が蔓延する前にワクチンで防ぐべき」という理屈で積極的な働きかけを行ないました。
そして、2007年に厚生労働省から「ワクチン産業ビジョン」が発表されました。増大する医療費を抑制するために、予防医学の重要性を認識し、ワクチン産業を振興させることを決意したのです。
その結果、次々に承認が下りて、長い間、感染症の目立った流行がなかった日本で、ワクチンの売り上げが07年からの5年間で600億円から1500億円に急増したのです。
このような外資系製薬会社のもうけに加担するだけのこの肺炎球菌キャンペーン、あなたはどう思いますか?