事業
母親と親戚縁者が集まり何か話をしていた
どうやら親父がどこかに割烹らしきものをやるので
その資金を母親に出させる条件で
別居をするつもりらしい
店一軒ごと買取り、愛人と板前を雇い始めるようだ
今考えると結構な金が動いたと思う
私は子供心に話の成り行きを聞いているだけで
これからがどうなっていくのか心配だった
数日間の押し問答の末、母親が折れて資金を出し
親父はその金を持って正式に別居となった
荷物などは全て置いてあったので
親父が又戻ってくるかもしれない
なるべく親父とは顔を合わせたくないっと
思っているとひよっこり帰ってくる
この時親父は私に数十万(四,五拾萬円)の金をくれた
その金は親父が帰ってから母親に渡したが
その時の母親は
こんなことで商売なんか上手くいくわけないと
独り言のように、私に聞こえるように呟いた。
数年後この店をめぐって問題がおきますが
その頃はそんな事が起きるとは思ってもいませんでした
仏壇
出て行った親父がたまにふらりと帰ってくると
母親から金をせびりに来る
その当時は家業として商売をしていたので
多少は蓄えはあったのかもしれない
金をせびった親父は何を思ったか、
自分の父や母 (私の祖父 祖母)の
仏壇を外に放り投げ、ナタで壊しはじめた
近所の人たちも驚いたと思う
母親が止めに入るがお構いなし
結局、全てたたき壊して最後は火をつけて燃やしていた
その時の親父は泣いていた、
なぜ泣くのか、私には今でも理解できない
そんな親父の行動を母親と私はじっと見ていた
もうこの家族は終わりだなあと他人事のように感じた私
気丈にも母親は続けている仕事に戻っていく
燃え残った仏壇は後で私が始末して捨てた
この時は近所の体裁や周りから見られる視線よりも
私は親父のいない生活を楽しむ変な子供だった
それから親父はしばらく帰ってこなかった