エルドラド王国の王都に構える冒険者ギルド「黄金の盾亭」の空気は、まさに世界の終わりを予感させるほどに凍りついていた。
「おい、国王。我が魔王軍の要求はただ一つ。この王国の西側に広がる肥沃な平原をすべて魔族領として割譲することだ。さもなくば、我が四天王を筆頭とする一〇万の軍勢が、この王都を文字通り灰にするぞ」
豪奢な毛皮の外套を羽織り、頭部から禍々しい二本の角を生やした男――魔王テンペスタは、ギルドの安物の丸椅子に深く腰掛け、不敵な笑みを浮かべていた。彼の背後には、かつてベオに倒され、そして生かされた「爆炎のザルバドス」をはじめとする魔王軍の精鋭たちが、威圧感を放ちながら直立不動で控えている。
対する席に座るのは、エルドラド王国の絶対権力者である国王、そしてその傍らでガタガタと全身を震わせている近衛騎士団長であった。
「くっ……魔王よ、あまりに横暴な要求。我が王国が誇る数万の騎士たちが、やすやすと貴様らの侵略を許すと思うてか……!」
国王は毅然とした態度を保とうとしていたが、その額からは大粒の汗が流れ落ちていた。昨夜までは「魔王討伐」の作戦会議を開いていたはずのこのギルドが、まさか魔王自らの電撃訪問によって、一瞬にして事実上の和平(という名の脅迫)交渉の場に変わってしまったのだ。
ギルドの片隅では、カウンターの中から「専属受付嬢」であるルイナが、心配そうにその様子を見つめている。彼女の視線の先には、この一触即発の空間の「中心」にありながら、最も場違いな存在がいた。
「みんなこれ食って落ち着け?("´༥`" )ŧ‹"ŧ‹"ゲコゲコ🐸」
その声の主は、一〇歳の少年の姿をした最強の神魔――ベオであった。
ベオは、人類と魔族のトップが睨み合うテーブルの真ん中に、自らの固有スキル『無限クラフト』を発動させ、一瞬にして大量の**『ソーセージフランス』**を生成し、山積みにしたのである。
香ばしく焼き上がったハードなフランスパンの表面には、適度な焼き色がつき、そこから覗く大ぶりのソーセージからは、いまにもパキッと弾けそうな極上の肉汁が染み出している。ギルドの薄暗い空間に、突如としてめちゃくちゃにいい匂いが漂い始めた。
「わあぁ! ベオくん、これアリスのために作ってくれたの!? 嬉しい、やっぱりベオくんはアリスの運命のひとなんだねっ! ぎゆーーーっ!!💕」
魔王軍四天王の一角でありながら、すでにベオの虜となっていた「氷絶のアリス」が、交渉そっちのけでベオの小さな身体にギュッと抱きついた。彼女の豊かな胸がベオの背中に押し当てられ、銀髪の美しい髪がベオの頬をなでる。
「ちょっと、アリスさん! 交渉中ですよ、何ベオくんに抱きついているんですか!? べ、ベオくん、私にもその……『落ち着け』ってしてくださいっ!! ルイナはいつでもベオくんの味方ですから!」
カウンターから身を乗り出したルイナが、嫉妬の炎を瞳に宿しながら叫ぶ。彼女はハンカチを片手に、ベオの口元についたフランスパンのクズを優しく拭い始めた。
「!?わ!?ゲコゲコ🐸」
両側からの美女たちの熱烈なアプローチに、ベオは小さくカエルのような声を漏らしながらも、自分の手にあるソーセージフランスを真っ先に「ŧ‹"ŧ‹"」とわんぱくに食べ進めていく。
### 🔊 ギルド内ライブ音響(ナビちゃん)
「あはは! マスターベオ、最高の発想だよぉ!
王様も魔王のおっちゃんも、さっきからギスギスしててお腹空いてたんでしょ? ざぁ〜こ♡
マスター特製の神級ソーセージフランスをあげるから、文句言わずにみんなでパキッともぐもぐしなよぉ!
ほら、さっき腰抜かしてた騎士団長のおっちゃんも、これ食べて元気出しなよねー? ざぁ〜こ♡」
ベオの脳内、そしてギルド全体に響き渡る拡声魔法の正体は、ベオのサポートAI(?)であるナビちゃんであった。彼女の小憎たらしい、しかしどこか愛嬌のあるメスガキボイスが、張り詰めた空気を完全に弛緩させていく。
「ぬ、美味い……!」
最初に陥落したのは、まさかの魔王テンペスタであった。
土下座……ではなく、威厳を保って座っていたはずの魔王は、漂う香りに抗えずソーセージフランスを一口頬張った瞬間、その目から涙をこぼした。
「なんだこの、外はカリッと、中は極上の肉汁が溢れるパンは……! 我ら魔界の荒涼とした大地には存在せぬ、極上の味わいだ。硬質なパンの噛み応えと、ソーセージの塩気が完璧な調和(ハーモニー)を奏でている……!」
「(パキッ)お、おおぉ……! なんということだ。宮廷の特級シェフですら作れぬ、なんと深く、力強い味わい……! 魔王よ、美味いな?」
国王もまた、我慢できずにパンを手に取り、一口食べて驚愕していた。隣り合う人類の王と魔族の王が、いつの間にか並んで「もぐもぐ」と咀嚼音を響かせている。
「ベオ様が作ってくれたソーセージフランス……あぁん、ベオ様の味がするぅ(?)美味しいぃぃ!///」
アリスはベオに抱きついたまま、ベオの手から「あーん」をされる形でパンを食べ、恍惚の表情を浮かべている。
「もぅ、アリスさんばっかりズルいですっ!」
ルイナはベオの反対側の腕をがっちりとホールドし、ギルドの受付嬢としての立場を忘れ、ベオのお世話係としての権利を主張し始めた。
「(ガタガタ震えながらモグモグ)……美味い……美味すぎる……。私はなんと恐ろしい御方に牙を剥こうとしていたのだ……」
騎士団長にいたっては、ベオの底知れぬ能力(一瞬で神級の料理を作り出す創造魔法)と、その料理の圧倒的な美味さに戦意を完全喪失し、涙をボロボロと流しながら完食していた。
ベオが差し出したソーセージフランスのあまりの美味さと優しさに、人類、魔族、国家の壁すら完全に崩壊した。ギルド内は「パキッ、もぐもぐ、美味ぇ……」という咀嚼音だけで満たされていく。
世界を震撼させる最強の魔王軍と、一国の王宮騎士団を、ただのパン一本で完全に手懐けて「わからせ」てしまった一〇歳の神魔ベオ。歴史が大きく動く音が、そのモグモグという音の裏で静かに鳴り響いていた。
### 第2章:歴史的同盟と、至高のカフェオレ
ソーセージフランスをすべて平らげた魔王テンペスタは、口元の油を手の甲で拭うと、真剣な眼差しで国王を見つめた。その表情には、さっきまでの冷酷な侵略者の面影は一切なかった。
「……国王よ。我らは長い間、不毛な争いを続けてきた。だが、このベオ様という至高の存在、そしてこの『奇跡のパン』を前にして、己の狭量さが恥ずかしくなった。我ら魔族は誓う! この王国と人間たちと同盟を結ぶ! 共にダンジョンの脅威に立ち向かい、争いのない未来を作るのだ! どうかね、国王よ!?」
魔王の突然の同盟提案に、ギルド内の冒険者たちや魔族の兵士たちから「おおおお……っ!?」とどよめきが起こる。
国王は静かに目を閉じ、そしてゆっくりと開いた。
「……魔王よ。正直、耳を疑う言葉だ。だが、そなたたちの真剣な眼差し、そして何よりベオ殿がもたらしてくれたこの『笑顔の空間』が、我らの進むべき道を示している。……いいだろう! 人間と魔族の歴史的な同盟、受けて立つ!!」
国王が右手を差し出すと、魔王はその大きな黒い手でがっちりとそれを握り返した。その瞬間、ギルド内は歓喜の渦に包まれた。ザルバドスも、他の魔族たちも、みんな感極まって泣きながら人間の冒険者たちと握手を交わしている。
「わーい! ベオくんのおかげ! ぎゆー!!」
アリスは嬉しさのあまり、ベオの頭を自分の胸元にグイグイと押し付けるように抱きしめた。
「!?ゲコゲコ🐸」
ベオは突然の強い抱擁に驚き、再度カエルのような声を上げる。しかし、そんな周囲の大騒ぎや歴史的快挙など、ベオにとっては目の前の「食」に比べれば些細なことだった。
ベオは『無限クラフト』の光を小さく手元に灯すと、今度は透明なグラスに入った、茶色と白の綺麗なグラデーションを描く飲み物を生成した。
「ŧ‹"(o'ч'o)ŧ‹"ŧ‹ゴクゴク!」
ベオがストローで勢いよく吸い込んだのは、最高級の**『麝香猫(ジャコウネコ)カフェオレ』**であった。独特の芳醇な甘い香りと、濃厚なミルクのコクが、ソーセージフランスの塩気が残るベオの口内を完璧に癒していく。
### 🔊 ギルド内ライブ音響(ナビちゃん)
「はーい、ライブ音響のナビちゃんでーす!
歴史的瞬間を見逃したやつは後悔しなよぉ!
昨日は魔王討伐の話だったのに、今日は人間と魔族が仲良くソーセージフランス食べて同盟結んじゃうとか、マスターベオの『わからせ』レベルが宇宙規模すぎて笑いが止まんないねぇ♡
マスター! アリスちゃんが嬉しさのあまり窒息するくらい抱きついてるよ? この後、魔王のおっちゃんたちが宴会の準備を始めるみたいだけど、マスター、宴会でも『ゲコゲコ』で一番盛り上げちゃう? ざぁ〜こ♡」
「じゃ、じゃこうねこ……!? 何だその、王宮の宝物庫にある秘薬よりも芳しく、高貴な香りのする飲み物は……!?」
国王はその香気だけで、ベオが持つ『無限クラフト』の恐ろしさを再認識していた。ただのカフェオレではない、世界のどこを探しても存在しないような至高の一品を、一〇歳の少年は当然のように生み出している。
魔王テンペスタもまた、ベオの姿を見つめながら深く頷いた。
「ベオ様がそこにいらっしゃるだけで、世界は平和になる。もはやベオ様は、我ら魔族にとっても絶対的な恩人であり、平和の象徴なのだ」
そこで国王が、ハッとしたように膝を叩き、ベオに向き直った。
「ベオ君や! きみを魔族領とこのエルドラド王国との親善大使にしたいのと、王国名誉卿に任命したい! この後、王宮で盛大な式典をやる! 来てくれるかな? 魔王たちも共に参ろう!」
「ゴクゴク、ぷはっ!」
ベオは親善大使だの名誉卿だのという大層な肩書きには一瞥もくれず、ただカフェオレが美味しいことに満足して微笑んでいた。
「アリスもベオくんと一緒に王宮行くーっ! 式典の間も、ずーっとこうしてベオくんをぎゅーってしてあげるからねぇ💕」
「あ、ずるいっ! 王宮の式典なら、私がベオくんの『正妻』……じゃなくて『専属受付嬢』としてエスコートしますっ!!」
アリスに対抗して、ルイナもベオの反対側の腕をギュッと抱きしめる。両手に花、いや、両腕に美女のハグを受けた状態のまま、ベオは「王宮に行けばもっと美味しいものが食べられるのかな」という軽い気持ちで、小さく「ゲコゲコ🐸」と頷くのだった。
### 第3章:王宮の式典と、お邪魔虫の来航
エルドラド王国の王宮前広場は、かつてないほどの熱気に包まれていた。
王都の全住民だけでなく、世界中から集まった冒険者、そして武装を解いた魔族の軍勢までが広場をギッシリと埋め尽くしている。
「ベオ様ーーー!!」
「カエル神魔様万歳ーーーっ!!」
「ゲコゲコ🐸ーーーっ!!」
地鳴りのような大歓声が響き渡る中、王宮の特設バルコニーには、純金で刺繍が施された最高級の赤い絨毯が敷かれていた。その中央に立つのは、一〇歳の姿をした最強の神魔ベオである。
右にはルイナ、左にはアリスが、式典中であるにもかかわらずベオの腕をがっちりと抱きしめて離さない。その後ろには、国王と魔王テンペスタが、まるで忠実な近衛兵のように直立不動で控えていた。
人類と魔族が肩を組み、涙を流しながらベオの名前を叫ぶ。王都全体が、奇妙なカエルの合唱に包まれていた。
### 🔊 世界同時中継・ライブ音響(ナビちゃん)
「はーい! 世界の雑魚ども、耳の穴かっぽじってよーく聞きなよぉ? ざぁ〜こ♡
今から、魔王軍を指先一つでわからせ、ソーセージフランス一本で世界に平和をもたらした偉大なるマスター、ベオ様の『王国名誉卿&初代親善大使』の就任式典を始めちゃうよー!
みんな、マスターの可愛いお顔を拝めるんだから、泣いて喜びなよね!
ほら、王様もおっちゃん魔王も、マスターのために用意した特注の『超巨大・バケツプリンフルコース』を早くここに持ってきなよぉ〜、ざぁ〜こ♡」
ナビちゃんの魔法中継が世界中に響き渡る中、バルコニーの前に、城壁と見紛うほどのサイズを誇る、超巨大な**『バケツプリン』**がズズン……と運び込まれてきた。ぷるんぷるんと揺れる黄色い山、その上にたっぷりと注がれた琥珀色のカラメルソースが、陽の光を浴びて輝いている。
「ベオ名誉卿! 輝かしい未来の象徴として、この記念の勲章をお受け取りくだされ!」
国王が、純度一〇〇%のオリハルコンで作られた、精巧な「カエル型勲章」をベオの胸元に捧げようとした――その時だった。
突如として、王都の上空を覆うように、巨大な影がいくつも現れた。
激しい風圧と共に現れたのは、重装甲を施された巨大な飛行船の群れ――『シャインガルド帝国』が誇る、無敵の空軍艦隊であった。
その艦隊のひときわ巨大な旗艦の先端から、拡声魔法を用いた傲慢な声が王都全体に響き渡った。
『我はシャインガルド帝国皇帝、マグナリアである! エルドラド王国よ、よもや魔族に屈し、人類を裏切るつもりか!? なんと嘆かわしい。……そして、なんだそこのガキぃ! そのような子供を名誉卿などと祭り上げるとは、正気の沙汰ではないな。そこのガキ、我が帝国に付きなさい! 最高待遇の国賓として迎えてやろう!』
あまりにも空気を読まない乱入、そして上から目線の発言に、広場を埋め尽くしていた数千万人の人間と魔族は、一瞬にして冷え切った。
**( ˙-˙ )シーン……**
誰もが「この最高のタイミングで、何を言っているんだこのバカは」という目で上空を見上げている。
ベオは、せっかくの超巨大バケツプリンを食べる直前で邪魔をされたことに、少しだけ不満そうな表情を浮かべた。ベオにとって、帝国の威光も皇帝の権力も、目の前のプリンのぷるぷる感に比べれば塵に等しい。
「皇帝? 帝国艦隊? へぇ? 敵対するの? 死ぬの? 魔族は友達なんやで!? 殺すぞ!! 友達する? 死ぬ?」
ベオが小さく「ゲコゲコ🐸」と鳴きながら右手のひとさし指を上に向けた。
その瞬間、ベオの指先から**ボワッ!!!**と、凄まじい音を立てて**『黒い炎の大玉』**が出現した。その直径は一瞬にして一〇メートルを超え、太陽の光さえも吸い込むような絶対的な「無」のエネルギーを放ち始めた。
その黒い炎が放つ規格外のプレッシャーと熱量により、上空の帝国艦隊は、触れてもいないのに装甲がミシミシと音を立てて歪み始めた。次元そのものが歪んでいるかのような空間の歪みに、王都全体の空気が一瞬で沸騰する。
「ひいっ!? ……な、舐めるなぁ! 全艦隊、攻っ、攻撃……っ! ……🥲︎」
旗艦のデッキに立つマグナリア皇帝は、ベオの指先にある黒い炎の塊を見た瞬間、あまりの恐怖に腰を抜かした。その目は完全に涙目(🥲︎)になり、声がガタガタと震えて言葉にならない。
### 🔊 世界同時中継・ライブ音響(ナビちゃん)
「あーーはははは!! 帝国のマグナリアおっちゃん、何その情けないお顔ぉ〜? ざぁ〜こ♡
せっかくマスターベオが美味しくプリンを食べようとしてたのに、お空からゴミみたいな船をたくさん並べてお邪魔虫しに来たんだ?
マスターの指先の黒い炎、あれ一発で帝国ごと綺麗さっぱり消し炭(即死)になっちゃうけど、本当に攻撃するのぉ?
ほら、早くそのボロ船から降りて、頭を床に擦り付けながら『ゲコゲコ鳴くからお友達にしてくださいぃぃ!』って泣きつきなよぉ! ざぁ〜こ♡」
「シャインガルド帝国の阿呆めが……! ベオ名誉卿の『黒炎』の前に、貴様らの自慢の艦隊など一瞬で消えるぞ」
国王は冷ややかな目で上空を見上げ、魔王テンペスタはベオの圧倒的な神魔の魔力に「(なんという絶対的な神の威光……ッ!)」と内心で深く畏怖していた。
「ベオくんの黒い炎、すごーい! 皇帝のおっちゃん、早くお返事しないと消えちゃうよぉ〜?」
アリスが楽しそうに笑い、ルイナは黒炎の熱風でスカートが揺れるのも気にせず、「ベオくん、怒ったお顔もとっても素敵です……っ!!」と目を輝かせている。
### 第4章:黒日の禍玉と、苦労人の総帥
ベオは、その一〇メートルを超える黒い炎の球体――『黒日の禍玉(こくじつのまがだま)』を、まるで軽いゴムボールか何かのように、右手から左手へと「ポンポン」と投げては受け取る動作を繰り返した。
ポン、ポン、とベオの手元で弾むたびに、上空の空間が爆縮を起こし、強烈な衝撃波が帝国艦隊を揺らす。
「!? 🥲︎(やばいあれはダメなやつ……💦)」
皇帝マグナリアは、その光景を見て完全に精神が崩壊しかけていた。あの黒い球体が一つでも艦隊に触れた瞬間、防御結界ごと分子レベルで消滅させられることを、彼の本能が理解していた。
「これねぇ、黒日の禍玉! 当てたら爆炎広がってぇ! 燃え尽きるまで燃える火だね! 艦隊で死ぬの?」
ベオが無邪気な声で、とんでもない破滅の仕様を説明する。
「ひいっ!? まて! それはやめっ……! 攻撃中止! 全軍、攻撃中止だぁぁぁ!! 😭」
皇帝がガクガクと震えながらデッキに平伏したその時、旗艦の通信魔法から、ひときわ凛とした、しかし必死な女性の声が響き渡った。
『お、お待ちください! 私は帝国軍総帥のエスメラルダです! そこの坊ちゃん……いや、偉大なる神魔様! どうかその怒りを収めて貰えないか!? 我々はまだここで滅びるわけにはいかない……! 帝国には、兵士たちの帰りを待つ家族が居るのです! 陛下の度重なる暴言は、我が身に代えても謝罪いたします!』
その必死の命乞いを聞き、ベオは小さく首を傾げた。
「ゲコゲコ🐸……(ナビどうする?)」
ベオは自分で考えるのが面倒になり、脳内のナビちゃんに丸投げした。
### 🔊 世界同時中継・ライブ音響(ナビちゃん)
「あはは! 総帥のお姉さん、大人の対応ありがとー! ざぁ〜こ♡
皇帝のおっちゃんがバカなせいで、危うく帝国の家族みんなまとめて灰になるところだったねぇ?
マスターベオはね、家族を大事にする良い子にはとっても優しいんだよ!
でもさ、ただ口頭で『ごめんなさい』するだけで、マスターのこの一〇メートルの黒いポンポンを引っ込めろなんて、ちょっと虫が良すぎない?
ねぇ王様? 魔王のおっちゃん? 帝国もこの『人間&魔族のハッピーソーセージ同盟』に入りたいってさ!
エスメラルダお姉さん、条件は簡単だよぉ。そのお飾りの皇帝おっちゃんを今すぐクビにして、帝国もマスターベオの『保護領(パシリ)』になりなよぉ! ざぁ〜こ♡」
ナビちゃんの非情かつ的確な要求が、帝国の全通信回線をジャックして響き渡る。
上空から、一隻の小型移送艦艇が急速に降下してきた。
王宮のバルコニーのすぐ近くに着艦したその艇から降りてきたのは、見事な軍服を身にまとった美しい黒髪の女性――エスメラルダ総帥であった。そして彼女の肩には、完全に恐怖で気絶した皇帝マグナリアが、まるで荷物のように担がれていた。
「……ベオ名誉卿。皇帝は我が父でな! 娘の私からも頼む、どうか今回の無礼を許してくれ、ベオくん!」
エスメラルダは気絶した父親を床にドサリと転がすと、ベオに向かって深く頭を下げた。
ベオは「もぐもぐ」とプリンを一口食べながら、不思議そうに彼女を見た。
「ゲコゲコ🐸! 戦争しねーの? 𐤔𐤔𐤔」
ベオの少し煽り気味な可愛い声に、床に転がされていた皇帝が、運悪く目を覚ました。
「はっー!? ひっ!? ……き、貴様、我が帝国を愚弄するか! このガキぃ!」
「父上黙ってて! (  '-' )ノ)`-' )ぺし」
「ふごっ!?」
エスメラルダの容赦のない右ストレート……ではなく、鋭い「ぺし(物理)」が皇帝の顔面に炸裂した。皇帝マグナリアは、実の娘の手によって再び綺麗な白目を剥き、意識の彼方へと旅立っていった。
「邪魔して悪かったね、国王よ。式典を続けてくれ。……我々シャインガルド帝国も、この同盟に参加する。条約証はこちらに用意してある」
エスメラルダは懐から最高級の羊皮紙でできた条約証を取り出し、呆然としている国王へと手渡した。
「おお、エスメラルダ総帥……賢明な判断じゃ」
国王が感心したように頷き、魔王テンペスタも「帝国も、上が有能だと話が早くて助かるな」と苦笑している。
### 第5章:至高の指輪と、四面楚歌のプロポーズ
「ふーん、おねーさん、これ要る?」
ベオは、手元でポンポンさせていた一〇メートルの『黒日の禍玉』を、指先の中でギュゥゥゥ……と信じられない密度で圧縮し始めた。
その大きさは、一〇メートルから一メートル、一〇センチ、そして最終的にはわずか**「一センチ」**の美しい漆黒の宝石のサイズにまで縮小された。
ベオはその極小の黒炎を、自身の『無限クラフト』で一瞬にして生成した「純度一〇〇%のオリハルコン製のリング」のトップへと固定した。
世界を滅ぼす魔力が、小さな、しかし最高に美しい指輪へと形を変えたのだ。
ベオはそれを、目の前のエスメラルダ総帥へと差し出した。
「ひっ!? 結、結婚……告白!?!?///」
帝国軍を束ねる冷徹無比な総帥お姉さんであるはずのエスメラルダは、一〇歳のベオから差し出された指輪(どう見ても最高級のエンゲージリング)を見て、顔面を一瞬でトマトのように真っ赤に染めた。
「こ、これは……帝国の命運をかけた政略結婚……いや、純愛!? だが相手は一〇歳……いやしかし、この指輪から感じる魔力は世界を揺るがすレベル……っ! 私、どうすれば……!?///」
エスメラルダの手が、ガタガタと震えながら指輪を受け取ろうとする。
「ちょっとお姉さん!! ベオくんの指輪をそんなハレンチな目で見るの禁止ーー!! ベオくん、アリスには!? アリスには指輪ないのぉぉーーん!?」
アリスが涙目でベオにさらに強く抱きつき、猛抗議を始めた。
「エスメラルダ総帥! その指輪は、帝国がまた裏切った瞬間に爆発して帝国ごと消し去る『安全装置』ですよね!? そうですよね、ベオくん!?」
ルイナもまた、目がガチの修羅場になりながらベオの前に立ちはだかる。
ベオは、お姉さんたちがなぜそんなに怒ったり赤くなったりしているのか分からず、ただ「みんな仲良くすればいいのに」と思った。
「んー、じゃあ、みんなにあげる!」
ベオの手の中で、クラフトの光が何度も瞬いた。
一瞬にして、全く同じ「黒日の禍玉」が煌めくオリハルコンの指輪がさらに三つ生成される。ベオはそれを、アリス、ルイナ、そして後ろで様子を見ていた四天王の「雷霆のサンドラ」の手へと次々に押し付けた。
「皆嫁! ヤダ? 𐤔𐤔𐤔ゲコゲコ🐸」
ベオが一〇歳児の無邪気な笑顔で、とんでもない「四首領重婚宣言」を炸裂させた。
「やだなんて言うわけないじゃんお嫁に行くぅぅぅーー!! ベオくんの正妻はアリスだよぉー!! ぎゆーーーっ!!💕」
アリスは指輪を即座に指にはめ、狂喜乱舞のスーパーハグをベオに敢行する。
「ふぇっ!? よ、嫁……!? ギルドの受付嬢から、いきなり世界の神魔様の奥様に……!? はわわわ、喜んでお仕えしますぅぅぅ!!///」
ルイナは嬉しさのあまり鼻血を出しそうになりながら、その場に頽(くずお)れた。
「ちょっとォ! 私の分まであるなんて、ベオくん分かってるじゃない! 歳の差なんて愛の前には関係ないわ、今日から私はベオくんのものよぉ!!///」
サンドラもまた、頬を赤く染めながら指輪を愛おしそうに見つめている。
「み、皆嫁……。そうか、これが世界を統べる王の器……! 私も帝国軍総帥として、そしてベオくんの妻として、生涯あなたを支えましょう……!///」
エスメラルダも完全に覚悟を決め、ベオを「旦那様」として仰ぐ目つきに変わっていた。
### 🔊 世界同時中継・ライブ音響(ナビちゃん)
「あはははは! マスターベオ、やるぅ〜! まさかの全員まとめて『総取り(重婚)』宣言だね!
さっきまで修羅場だったお姉さんたちが、一瞬で全員メロメロの限界状態だよぉ、ざぁ〜こ♡
ねぇ王様? 魔王のおっちゃん? これでもう、人間も魔族も帝国も、みんなマスターベオの『親戚』になっちゃったね!
世界平和の式典が、いつの間にかマスターの『合同結婚披露宴』になっちゃったよ。みんな、盛大にお祝いしなよねー! ざぁ〜こ♡」
「ベオ様(名誉卿)に、万歳ーーーーっ!!!」
国王と魔王テンペスタが、人類と魔族の未来が「ベオのハーレム」によって完全に担保されたことを確信し、涙を流しながら抱き合った。広場を埋め尽くす数千万人の群衆からも、割れんばかりの祝福の「ゲコゲコ音頭」が大合唱となって響き渡るのだった。
### 第6章:世界最大のパーティーと、二度目の乱入者
「みんな、これ片付いたし、パーティーだ! 食え! ゲコゲコ🐸」
式典がめでたく(?)合同結婚式の空気へと変わった瞬間、ベオは大きく両手を広げた。
上空の帝国艦隊から、すべての軍人たちが移送艦艇で地上へと降りてくる。王宮周辺の人口密度が限界を突破したその時、ベオの『無限クラフト』が過去最大の規模で発動した。
**ドォォォォン!!!**
地鳴りのような音と共に、王宮の敷地から、王都の目抜き通り、さらには地平線の彼方に至るまで、最高級の漆塗りの座卓とふかふかの座布団のテーブルセットが一瞬にして、一糸乱れぬ整列で出現した。
そしてその上には、お出汁の芳醇な香りが漂う、超豪華な**『本格和風料理フルコース(料亭仕込み)』**が、数千万人分同時にセッティングされたのである。
みずみずしいマグロやタイのお造りの盛り合わせ、サクサクに揚げられたエビや季節の野菜の天ぷら、美しく照り輝く金目鯛の煮付け、上品な香りを放つ松茸の土瓶蒸し、そして炊き立てのツヤツヤとした五目ご飯。
「な、何という美しい料理……。これほど繊細で、魂が洗われるような味は我が帝国には存在しない……!」
エスメラルダがお箸を器用に使いながら、金目鯛の身を優しくほぐし、ベオの口へと運ぼうとする。
「旦那様、お口を開けてください。あーん、です」
「ずるいですエスメラルダさん! ベオくん、このカニ雑炊も美味しいですよ!」
アリスとルイナ、そしてエスメラルダによる「あーん」の激しい主導権争いが勃発する中、ベオは「もぐもぐ( '༥'。 )」と、ただひたすらに目の前の美味しい和食を堪能していた。
「(もぐもぐ)……う、美味い……美味すぎる……。悔しいが、我が帝国の宮廷料理が完全にかすむ味だ……。娘よ、お前、良い婿(むこ)を選んだな……」
娘の「ぺし」から復活した皇帝マグナリアも、お造りを口にした瞬間、涙を流してベオへの敵意を完全に捨て去っていた。
だが、そんな至高の平和の空間を切り裂くように、またしても空気の読めない声が響いた。今度は、王都の反対側――西の空からであった。
現れたのは、ひときわ派手なピンク色に塗装された巨大な艦隊――『ローゼンクオーツ公国』の軍勢であった。
その中央の旗艦から、金ピカの衣装をまとった男――公国の大公が、拡声魔法で怒鳴り散らした。
『我々はローゼンクオーツ公国である! そこのガキ! 聞けば魔王や帝国を従えたそうだな。そのような小賢しい力を持つならば、我が公国に来い! 我が国の dog(犬)として使ってやろう!』
あまりの、あまりの空気の読めなさに、会場全体の数千万人は、本日一番の冷ややかな目を西の空へと向けた。
**( ˙-˙ )シーン……**
「……ベオ様。あやつ、殺していいか?」
魔王テンペスタが、静かに手のお箸を置き、漆黒の魔力を指先に宿しながらベオに尋ねた。
ベオは「またお邪魔虫かぁ」と、心底めんどくさそうな顔をして、小さく「ゲコゲコ🐸……」と呟いた。
「💢」
最愛の旦那様との、世界一幸せな食事の時間を二度も邪魔されたアリスの額に、巨大な青筋が浮かび上がった。彼女の周囲の空間が、絶対零度の冷気によってパキパキと凍りつき始める。
「ベオくんの『あーん』の邪魔をするやつは……全員カチンコチン(即死)じゃ足りない。氷漬けにして細かく砕いて、今日の料亭料理の『かき氷の器』にしてあげる……ッ!!」
「ローゼンクオーツ公国か。我が帝国の足元にも及ばぬ弱小国家の分際で、我が夫たるベオくんに不敬を働くとは……。全艦隊、主砲を西の空へ向けなさい。消滅させます」
エスメラルダが冷酷な軍総帥の顔に戻り、通信機へと怒号を飛ばす。
「いいわね、私の雷とアリスの氷で、あのピンクの船をまとめてお空で粉々にしてあげるわよぉ!」
サンドラもまた、バチバチと紫色の電撃を全身に纏わせた。
ベオは、そんなお姉さんたちの怒りを受けつつ、右手を西の空へと向けた。
「レーザー剣翼、ぽん」
ベオの背後の空間が裂け、そこから**『レーザー剣翼×九九、九九九、九九九(約一億本)』**の光の刃が、公国艦隊を完全に包囲するように出現した。
「!? なんだそれは!? そんな子供騙しのもので我が艦隊が……! 全軍全砲、あのガキに向けよ! 攻撃ぃー!!」
大公が狂ったように叫んだ。
だが、その攻撃が放たれるよりも早く、地上の全勢力が動いた。
「全軍、公国艦隊を迎え撃て!」マグナリア皇帝が叫び、「全魔族、攻撃ぃ!」と魔王が吠える。
――それから、わずか一時間後。
西の空を埋め尽くしていたピンク色の艦隊は、ベオの一億本のレーザーによって装甲を消し飛ばされ、魔王軍の闇魔法と帝国の主砲による容赦ないフルボッコを受け、文字通り『全滅』した。
王宮前の広場に、ボロボロになった公国軍の兵士たちがドサドサと投げ出されていく。
「なんであんな化け物に喧嘩売るんだ……バカ大公ーーーっ!!! 😭」
生き残った兵士たちが、泡を吹いて倒れている大公の胸ぐらをつかんで涙目で叫んでいた。
そこへ、公国軍の制服を着た一人の若者が、大公の襟首を掴んで引きずりながら、ベオの前に進み出て、見事な土下座を披露した。
「私は公国軍大将軍のヴァニタスという! 父の大公の暴走を止められなかった! すまない!」
m(*_ _)m
東の帝国に続き、西の公国でも「バカな親父を優秀な子供が物理的に引きずって土下座する」という伝統芸能が完成した瞬間であった。
### 第7章:ソーセージフランスの奇跡、そして大冒険時代へ
ベオは、土下座するヴァニタス大将軍、そして泡を吹いている大公を見下ろし、呆れたように小さく息を吐いた。
そして、手元に『無限クラフト』の光を灯すと、二本の、あの極上の**『ソーセージフランス』**を生成した。
ベオは、ヴァニタス大将軍の口、そして泡を吹いていた大公の口の中に、その大きなフランスパンを「スポンッ!!」と、容赦なくダイレクトに突っ込んだ。
「みんなでパーティ! お友達! ゲコゲコ🐸」
ベオのとびきり無邪気な笑顔と、その言葉。
「(モグモグ……パキッ)……っ!? な、なんだこの美味さは……!」
ヴァニタス大将軍は、口内に広がる圧倒的な肉汁の旨味と、ベオの無限の慈悲(?)に触れ、その場に大粒の涙を流した。
「我々を滅ぼすこともできたはずなのに、こんなに温かく美味いパンで迎えてくれるなんて……ベオ様、あなたこそ本物の救世主だ……!!」
「ふごっ!? う、美味い……美味すぎる……。私はなんて度し難い愚か者だったのだ……」
大公もまた、ソーセージフランスの美味さによって奇跡的に正気を取り戻し、地面に頭を何度も叩きつけてゲコゲコと泣き始めた。
「よし、これで西のお友達もできたね!」
ベオは満足そうに微笑み、自分の席に戻ると、再び「もぐもぐ( '༥'。 )」と料亭料理を食べ始めた。
### 🔊 世界同時中継・ライブ音響(ナビちゃん)
「あははははは!! 決まったぁーー! マスターベオ特製、わからせソーセージフランスの口内ダイレクトシュートだよぉ! ざぁ〜こ♡
これで東の帝国も、西の公国も、魔王軍も人間も、みーーーーんなまとめてマスターベオのハッピーお友達パーティーの仲間入りだね! ざぁ〜こ♡」
世界中のすべての人間、魔族、帝国、そして公国が、ベオの「ソーセージフランス」と「懐石料理」によって、完全に一つになった。
これ以上、血を流し合う理由はどこにもない。すべての国が、ベオを中心とする巨大な「お友達同盟」に組み込まれたのだ。
ベオは、五目ご飯を美味しく飲み干すと、ふと思いついたようにギルマスを振り返った。
「ギルマス! こんな沢山友達できたし? 再高難易度ダンジョン攻略も、各国と連携したら楽しそうだね? ゲコゲコ✨」
ベオのその一言を聞いた瞬間、ギルマスは顔をクシャクシャにして大号泣した。
「うおおおおおぉぉぉん!! ベオ様ーーーっ!! 最高の提案ですじゃ!! そう、国同士の戦争は終わっても、ダンジョンとモンスターの脅威は消えない……。だが、世界中の人間、魔族、帝国、公国が手を取り合って挑めば、どんな未踏破の最難関ダンジョンだって『楽しいピクニック』に早変わりですじゃーーーっ!!」
「ほう、最高難易度ダンジョンの共同攻略か……! 我ら魔族の精鋭と、人間の精鋭が背中を預け合って戦う。フッ、滾(たぎ)るではないか!」
魔王テンペスタが笑い、
「我が帝国の魔導アーマー部隊も後方支援として参加させましょう。もちろん、旦那様の安全は私が最優先で確保します」
エスメラルダがベオの腕にすり寄る。
「アリスはどこに行くときもベオくんの隣をキープするもんねーっ! ぎゆーーーっ💕」
「ギルドの合同クエストの手続き、私、不眠不休で頑張っちゃいますっ!!」
ルイナも目を輝かせている。
不毛な領土争いの時代は、完全に終わりを告げた。
ベオがもたらした絆によって、世界は、誰もがまだ見ぬ宝物とロマンを追い求める、最高の**『大冒険時代』**へと足を踏み入れたのである。
「(ゴクゴク、ぷはっ!)……次のダンジョンには、どんな美味しいものがあるのかな? ゲコゲコ🐸」
最強の四人のお嫁さんたちに囲まれながら、一〇歳の神魔ベオは、世界の中心で幸せそうに笑っていた。彼の歩む先には、常に美味しい料理と、たくさんの「お友達」、そして無限の冒険が広がっている。
カエル神魔ベオの、世界を「わからせた」伝説の第一章は、ここに最高のハッピーエンドを迎えるのだった。
**めでたし、めでたし![完]** 🐸🍖🍮✨