改:第6話.みんな一緒【お化けカボチャの夢】 | 風月庵~着物でランチとワインと物語

風月庵~着物でランチとワインと物語

毎日着物で、ランチと色々なワインを楽しんでいます。イタリアワイン、サッカー、時代劇、武侠アクションが大好きです。佐藤健さんのファンで、恋はつづくよどこまでもの二次創作小説制作中。ペ・ヨンジュンさんの韓国ドラマ二次創作小説多々有り。お気軽にどうぞ。

第6話.みんな一緒

【お化けカボチャの夢『ヨンジュンのオフの過ごし方』】

ルナはテーブルの上のボウルへ、サラサラとした粉末を流し込んだ。
「何?それ」
「何だと思う?」
「分かんない」
沸騰したお湯と牛乳を少しずつ注ぎ入れて…。
「サラサラが無くなるまで良く混ぜてみて」
「うん」
大きなスプーンがボウルの中を縦横無尽に駆け廻る。
「スプーン、もう少し小さいのにする?」
「ううん、これでいい」
「何が出来るんだろうね」
「あれ固まってきたよ。ヨンジュン、これ何だろう」
「ルナ、教えてもいい?」
「ええ、いいわ」
ヨンジュンはハランの前に空箱を差し出した。
「これはポテトだよ。乾燥させてサラサラにしたんだ」
「ポテト?」
「そうよ、ハランが作っているのはマッシュポテトになるのよ」
丸い目が箱とボウルを行き来する。
「ヨンジュン、不思議だね」
「あぁ、不思議だ」
よく練ったポテトの上に一欠片のバターを乗せて…。
「あとはラップをして少し蒸らしたら出来上がりよ」

ルナは冷蔵庫から卵を取り出した。
「卵焼くけど…何がいい?」
「僕、かき混ぜた玉子焼き。ス…ス…」
「スクランブルエッグか?」
「うん」
「じゃあ、卵は僕が焼こう」
陽気に口笛を吹きながら、ヨンジュンは熱々のフライパンへ卵を流し込んだ。
「ハラン、ヨンジュンご機嫌ね」
「そうだね。口笛上手だね」
「ホント、凄く上手い」
「たまに歌ってるね」
「お気に入りみたい」
「でも何の曲だろう」
「ええと…」
「何か言った?」
「ううん」
冷や汗までとは行かないものの、声を揃える二人は目を合わせると、クスクス笑いながら口元を押さえた。
「言わないほうがいいね。違う歌だったら大変だ」
「でもとても良い声よ」
「僕もそれは分かる」

「ハラン」
「えっ?」
「何をびっくりしているの?」
「何でもない。ルナがヨンジュンの声は凄く良いって言ってた」
「うん?」
「僕もそう思う。僕も大人になったらヨンジュンのみたいなカッコイイ声になりたい」
「ありがとう」
ヨンジュンは嬉しそうに笑っていた。

「あとはオレンジジュースと…。あっ、レタスをちぎってくれる?」
「いいよ」
大皿の回りにレタスを並べて、真ん中に出来上がったばかりのマッシュポテトを乗せて。それから…。ヨンジュンはこう言った。
「ハラン、チーズは半分にしよう」
「えっ?」
「サヨンにお土産に持って行ったら」
「でも…ヨンジュンのが少なくなっちゃう」
「子供は遠慮なんかするな」
ヨンジュンはフライパンからホカホカのスクランブルエッグを取り分けた。

「そのチーズ、ハランも作ったんだろう」
「最初から二倍作っているから持って行っていいのよ」
「そうか、僕たち三人でこんなにいっぱい食べられないものね」
ハランの弾けそうな笑顔に、ヨンジュンとルナは笑いながら何度も首を振った。

「ハランはソーセージ好きよね。焼こうか」
「あっ…あったかなぁ。この頃買い物していないから」
「無いの?」
「大丈夫よ、さっき買ってきたから」
「なぁんだ、知らなかった」
「良かったね、ハラン」
そう言いながら二人は寄り添う様にキッチンに立った。
「ソーセージは食べやすい様に少し切った方がいいかしら」
「そうだね。じゃあ僕が炒めるからルナが切って」

時折わざと腕をぶつけてじゃれ合いながら、ヨンジュンは軽快にフライパンを動かし始めた。換気扇と僅(わず)かにフライパンが擦れる音が、絡まる視線へ重なっていく。ハランは頬づえを付きながらそんな二人を眺(なが)めていた。
「ねぇ、ヨンジュンとルナって何でいつも一緒の事するの?」
「えっ?」
「いつでもくっついてる」
「そんなことない」
「ルナがね、いつもくっついていたいんだって」
「ヨンジュンったら」
「好きだから?」
「うん、ルナは僕のことが大好きだから。僕はもっと大好きだから」
「ええと、次は何をすれば良かったのかしら」
真っ赤になったルナは慌てて冷蔵庫を開け閉めしている。
「オレンジジュースでいいのよね」
「ルナ、もうテーブルに出てるよ」
「ハラン、ルナは恥ずかしいんだって」
「何で?」
「なかなか会えないから少しでも一緒にいたいんだよ」
「ふうん」
愛おしそうな視線がルナを捉(とら)えた。
「ハランも大人になったら分かるよ」

フライパンのソーセージをハランのお皿へ移すと、ヨンジュンは上機嫌でテーブルに着いた。
「さぁ、食べよう。あぁ、ハランが買ってきてくれたパンは美味しいなぁ」
小さな手がヨンジュンを真似て穀物パンをちぎっている。
「ホントだ。わぁ、チーズもポテトもおいしい。スクランブルエッグもソーセージも、み~んな、み~んな、おいしい!」
「よかったね、ハラン」
「うん」
愛らしい瞳がヨンジュンを覗(のぞ)き込んだ。
「ヨンジュンもおいしい?」
「美味しいよ」
「ルナも?」
「ええ、とっても美味しい」
「わ~い、みんな一緒だ」

涙はとっくに乾いてる。美味しくて優しい食事は、あなたの笑顔の糧(かて)になる。

次回:第7話.ランタンを作ろう

(風月)