改:第41話.都市の休息【ニューヨーカー『ヨンジュンのオフの過ごし方』】 | 風月庵~着物でランチとワインと物語

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毎日着物で、ランチと色々なワインを楽しんでいます。イタリアワイン、サッカー、時代劇、武侠アクションが大好きです。佐藤健さんのファンで、恋はつづくよどこまでもの二次創作小説制作中。ペ・ヨンジュンさんの韓国ドラマ二次創作小説多々有り。お気軽にどうぞ。

第41話.都市の休息

【ニューヨーカー『ヨンジュンのオフの過ごし方』】

ルナは友人の奥さんと、午前中から女の子だけのショッピングへ出掛けた。 ミッドタウンを南下してNY一大きなデパート『メイシーズ』で色々な物をチェックした後、 ユニオン・スクェアの近くにあるディスカウントストア街を回るんだそうだ。

僕はというと彼女たちを待つ間、予(かね)てから行きたかった『ライカ・ギャラリー』へ行くことにした。 近くにワシントン・スクェアがあり、ディスカウント街からも然程(さほど)遠くない。 地図や住所を見るとニューヨーク大学(NYU)の直ぐ傍(そば)のビルになっている。 エレベーターで5階まで上がると、小さなフォトギャラリーが現れた。

ライカ・ギャラリーはカメラ会社ライカが提携するフォトギャラリーだ。 入口には僕の大好きなカメラ関連の商品も展示してあって、思わずそこで立ち止まってしまう。 せっかく来たのだからとギャラリーを進めば、またしてもライカに関する資料や本のコーナーがあったりして、 あぁ、どうしよう。フォトギャラリーも見たくて(たま)堪らないのに、ワクワクして気持ちがあちこちへ飛んでしまう。そっと進むと、ギャラリーには二人の写真家の作品が展示されていた。

ベージュの壁にフワリと柔らかなライトが当たっている。ゆったりと流れていく時間、静かに存在する空間。 そうしていると、目の前の作品の中で自分が過ごしていた様な気がしてくるんだ。 確かに僕はここにいるのに、初めて見たのに。都市の中のホッと息をつくような、そんな心地よい休息がそこにあった。

アーチ型の入口を抜けて資料室を見ていると、気さくなオーナーに声を掛けられた。
「ここへ来たのは初めてですか」
「はい」
「どうでしたか」
「えぇ、ありのままで、とても自然な感じがしました」
何冊かの絶版本を開きながら談笑し、帰りには新しいライカのカタログを貰った。 夢の様な時間を過ごし、僕は地上へ降り立った。

ニューヨーク大学構内のブックストアの前を通り、僕はワシントン・スクェアへ辿(たど)り着いた。 ここはニューヨーク大学と隣接しているせいか、まるで大学のキャンパスの様な感じがする。 だからだろうか、家族連れや学生などたくさんの人たちで賑(にぎ)わっている。 向こうでは大道芸人が曲芸のパフォーマンスをしている。 それを眺めながら、僕もベンチへ座り読書をすることにした。もちろんさっき買ってきた写真の本とライカのカタログだ。

暫(しばら)くするとルナから連絡が入った。
「ヨンジュン」
「うん?」
「何してるの?」
「本を読んでた。ルナは買い物、終わった?」
「うん。今、何処にいるの?」
「ワシントン・スクェアにいるよ」
電話の向こうから軽快な音楽が聞こえる。
「私、今来たんだけど」
「どのあたり?」
「ええと…白い凱旋門を入って真ん中あたり」
「あ…その右側のベンチにいるよ」
ちょっと背伸びをして見れば、黒のミルキーハットにサングラス姿の彼が、笑顔で手を振っている。
「ルナ」
「ヨンジュン」
向こうから可愛い彼女が、大きな袋を下げて小走りに駆け寄って来た。
「早かったね」
ルナは僕の隣へトンと腰を下ろした。
「あれ?彼女は」
「ちょっと風邪気味なんですって。今夜一緒にディナーへ行くでしょう。だから帰って休んでって言ったの」
「そうか」
今夜は友人夫妻に、美味しいレストランへ連れて行ってもらう約束をしていた。
「そろそろお昼にしようか」
「そうね」

ワシントン・スクェアを出た僕らは、少し南下して、 6番街から一本入ったブリーカー通りとカーマイン通りの角にあるピザスタンド『ジョーズ・ピザ』へ立ち寄った。 そこは幾らかのカウンターとピザを焼く窯(かま)があるだけの、本当に小さなスタンドだが、お客さんがひっきりなしに訪れる。 僕らも人気のフレッシュ・モッツァレラとシシリアンの2つのピザを買った。 そのまま家へ帰ってもよかったが、僕とルナはワシントン・スクェアへ戻った。何故かって?凄くいい青空だったから。
「いい風ね」
「あぁ」

次回:第42話.テザートをもう一つ

(風月)