改:第1話.完璧な男【ロマンティック☆ミニョン『それから』】 | 風月庵~着物でランチとワインと物語

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毎日着物で、ランチと色々なワインを楽しんでいます。イタリアワイン、サッカー、時代劇、武侠アクションが大好きです。佐藤健さんのファンで、恋はつづくよどこまでもの二次創作小説制作中。ペ・ヨンジュンさんの韓国ドラマ二次創作小説多々有り。お気軽にどうぞ。

第1話.完璧な男

【ロマンティック☆ミニョン『それから』】

13年後…

NYの午後…ホテル『フォーシーズンズ』の前に黒いフォード車が滑り込んだ。ハンドルを握る金色の髪の男…彼はサングラスを外すと細い銀縁のメガネに掛け替えた。車から長身の彼が降り立つ。スッと伸びた背中、長く真っ直ぐな足、その身を包むタキシード。あの頃と同じ、13年前のあの位置に降り立つ。彼の名はイ・ミニョン。ただ1つ違うのは成熟した大人の男に変わっているという事。

ホテルの一室で記者会見が行われている。
「イ・ミニョンさん、こちらを向いて下さい」
「イ・ミニョン理事!」
「理事!こちらを」
カメラのフラッシュが彼を包み込む。
「では撮影はこのくらいにして」
司会者の声を待ち切れぬ様に記者たちの質問が殺到した。
「イ・ミニョンさん、今回の大賞受賞の知らせは何処でお聞きになりましたか?」
「まずは大賞受賞の喜びの声を」

若きNYの建築家イ・ミニョンに矢継ぎ早に質問が浴びせられる。
「今日はやけに女性記者が多くないか?」
撮影位置から戻って来たカメラマンは同行記者に声を掛けた。
「いつもの事よ」
彼女はフンとばかりに鼻で笑うと、小さな身体から思いきり手を伸ばした。
「イ・ミニョンさん、NYタイムズのソフィア・ガルシアです」
ソフィアが立ち上がった。

「あなたの建築は『モダンな中にもクラシカルな優雅さが見え隠れする』と言わていますが、今回の受賞の評価は違う様ですね。何かご自身の心境の変化でも?」
ソフィアの姿を捉えたミニョンは口元を綻(ほころ)ばせた。
「そうですね。ご説明するには少し時間が掛かります。あなたとは後ほど個人的にお話しましょう」
最前列に陣取った女性記者たちが一斉にソフィアに視線を向けた。

「うひゃ~、睨(にら)みつけてるぜ」
カメラマンは大袈裟にのけぞった。
「そんなことはNYUの頃からずっとよ。今に始まった事じゃないわ。皆、ミニョンの本当の姿を知らないのよ。あいつ、とんでもない奴なんだから」
「イ・ミニョンって、とんでもない奴なの?」
カメラマンは目を丸くした。
「えぇ」
「だって『魅惑のプリンス』って女性誌が大騒ぎしてたじゃないか」
「皆、見た目で騙(だま)されてる。アイツ、とんでもない奴やつなんだから」
「見た目だろう。顔がいい奴は昔からそう言われる」
「顔なんて関係ない。イ・ミニョンは全てにおいて、一筋縄ではいかない男よ」

ソフィアのそんな言葉にカメラマンは言い返した。
「さっきから聞いていると、やけにイ・ミニョンに詳しいな。さては彼と付き合っていたとか」
「まさか、大学時代の同級生だっただけよ」
「それだけか。今回の建築大賞の内容も随分と具体的だったじゃないか」
ソフィアはカメラマンの言葉をさえぎった。
「幼馴染みがミニョンと仲がいいのよ。だから嫌でも大学時代に交流があったのよ」
「交流ねぇ。それだけ?」
「今でもたまに会うくらい」
「俺が女なら、なるべく彼とお近づきになりたいけどな」

ソフィアは苦笑いを浮かべた。
「何よ、それ」
「だって完璧な男だろう」
「あんな受け応え、記者の質問に合わせているだけよ」
「彼の性格まで把握しているか」
「気を引き締めないと、人の一番好きなデザートを目の前で横取りして食べちゃうような男だから」
「さてはデザートを食べられた?」
「チェリーパイをね。でも今回はそうはいかないわ。私だってNYタイムズのトップ記者よ。もう隙なんか見せない」
ソフィアはそう言って自信たっぷりに笑った。

次回:第2話.謎の男ピエール・アンリ

(雪音)