ツーリング

 

■ オートバイが好きだ(だった)。

 

 免許を取ったのは、高校1年。
 当時の免許は小型と大型の2種類だったので、大型を申し込んだ。
 それまでに、オートバイに乗ったことは、全然なかった。


 教習1時限目の課題は、外周をオートバイで押して回ることだった。
 教習車は、ホンダのCB400。
 自転車しか乗ったことがないから、結構な重さだった。


 倒さないように、重心を取りながら、ゆっっくりと押して回る。
 教習は夏で、汗かきだから、一周したら汗が滴り落ちた。
 そんな私を見た教官は、「なに泣いてるんだ?」

 

 とりあえず普通に、免許を取った。

 

 

■ 初めてのツーリング

 

 松本 → 名古屋 → 静岡 → 松本の2泊3日の旅を考えて、朝早く、家を出た。
 道路は空いていて、順調だった。


 途中で、ヘルメットをかぶったおじさんが、黄色の旗を振っていた。
 片手を挙げて挨拶し、通り過ぎてから気がついた。
 「あれは、道路工事中で、止まれ!の合図だったのかな?」
 道路工事をしている場所の通過方法は、教習所では教えてくれなかった。

 


 国道19号線の途中、木曽のあたりになると、長いトンネルがいくつかある。


 トンネルに入るときは、大型トラック、わたしのオートバイ、乗用車。
 この順番で、3台が一団となっていた。


 わたしの格好は、下がGパン、革靴、上はTシャツにジャンバー。
 サングラスをして、被っていたのは金色のジェット型ヘルメット、というとりあえずライダーの格好。


 しかし、かけていたサングラスが致命的。
 トンネルに入ったとたん、目の前が暗くなった。
 ボーッと見えるのは、前を走るトラックのテールランプだけ。


 当時のトンネルは照明がほとんどなく、また、道幅が狭かった。
 左に寄り過ぎると、壁にぶつかる。
 対面通行で前方から車が来るので、あまり右側にも寄ることができない。


 前のトラックから吐き出される、ボワッとした排気ガスがきつい。
 ときどき、トンネルの天井から落ちてくる水が、サングラスや顔にかかる。
 余裕があれば、停止してサングラスを外したいが、すぐ後ろに乗用車がいるため、あぶなくて急に止まれない。
 死ぬ思いをして、トンネルを抜け出てから、近くにあった自販機のジュースを飲んだ。


 美味かった。

 

□ 高校1年生、初めての一人旅、初めての名古屋。

 

 どこに泊まるかも考えていなかったので、交番で旅館を世話してもらった。
 交番では家出少年と間違えられたが、実家に電話してもらい、わかってもらった。


 翌日は蒲郡に行った。
 小さい頃に、町内会で潮干狩りにきたところだ。


 その次に向かったのが、中学生の時に文通(古い響きだナ)していた女の子の家。
 連絡なしで、突然押しかけたにも関わらず、温かく(たぶん)迎えてくれた。


 これから静岡に向かうというと、途中まで後ろに乗せてほしい、と頼まれて乗せた。
(ワクワク)
 そのときは、まだヘルメット着用が義務付けられていなかったため、被っていたヘルメットをその子に渡して、わたしはノーヘルメットで運転した。


 ダックスホンダST70から、SUZUKIのGT250に変わったばかり。
 しかも二人乗りは初体験。 (^^;
 メチャメチャ緊張していて、突然、山道の上りのヘアピンで・・・・こ・け・た!(転んだ)

 やばい! とは思ったが、後ろから車が来ないのを確認するだけの、余裕はあった。


 わたしのGT250は、幸いなことにフロントバンパーを付けていた。
 最近はほとんど見ることがないが、エンジン前方の左右に大きく張り出した、太いパイプのバンパーが人間とオートバイを守ってくれる。
 バンパーとハンドルの端は地面に擦れて傷が付くが、運転者と、運転者にしっかりしがみついている同乗者は、かすり傷一つない。


 途中でその女の子を降ろして、わたしは静岡まで行った。
 2泊3日を考えていたが、宿泊場所を探すのが面倒だったので、その日のうちに夜遅く家に帰った。

 

 

■ 2回目のツーリング

 

□ 能登半島一周

 

 小さいときから「能登半島」に憧れていたため、2回目のツーリングで行った。


 さすがに「一人旅で旅館」はそぐわなかったから、ユースホステルを選んだ。
 ヒスイが採れる海岸の近くのユースホステル。
 素泊まりで1600円だった。


 長旅で疲れていたから、海岸には行かなかった。


 2泊目もユースホステル。


 夕方、ペアレント達と簡単なゲームなどをやったが、あんまり面白くはなかった。


 能登半島一周ツーリングの格好は、革靴(ブーツは高くて買えない)、短いGパン(ボロボロで膝から下を千切ったもの)、タンクトップ(暑かったし、バンパーがあったから転んでもいいと思った)、そして手袋。
 天気が良くてカンカン照り、それに、海からの照り返しもあり、生まれて初めて水膨れになるほど肩が日焼けした。
 お風呂にはいるときに、肩が暑くなっていたのが分かったが、大したことがないと考えて、シャワーで冷やしたくらいだった。
 ツーリングの後で医者に行ったら、これは火傷だと、両腕に包帯をぐるぐる巻かれた。
 それ以来、ツーリングに行くときは、夏でも長いGパンと革ジャン、そして、ブーツと決めた。

 

 東京に住んでいたときは、夏になると毎週のように房総半島を一周した。
 海岸を走るのも好きだったし、養老渓谷のような山中を走るのも好き。
 道が変化に富んでいて、途中で、バイ貝、ナガラミ、カニ、メロン、スイカ、ビワなどを買うのも好きだった。


 昼夜構わずに、何十回となく走った。 走ることが好きだ。 いや、旅行が好きだ。


 よく、オートバイの良いところは、「風との一体感」と言われるが、あれは、キザで言っているのではなく、本当に一体になれる。
 夏は暑く、冬寒い。 雨が降ったら濡れて、雪が降れば滑って転ぶ。
 カウボーイが、馬に乗っている気分が味わえる。


 20代の後半になり、ホンダのGL500という水冷式の大型バイクに乗った。


 東京に大雪が降った年に、重いオートバイでは東京の冬はきついことを悟り、やっと自動車に移った。


 でも ・ ・ ・ 今でも余裕があれば、250ccのオートバイに乗りたい。