さよなら ムーンライト
いやな夢だけど
冷たく輝く月のような夢をみた
彼女が安心して暮らしてゆけることを選択するべきだと
また独りになる振り出しへ戻る…戻される
という夢
いやな夢だけど
冷たく輝く月のような夢をみた
いつになく映画仕立てで みんなで横浜へ出かけ
最期はポトマック河で 海兵隊の舟の中で捕まる
という夢
鶴見から都内の地下鉄へ抜ける23時の最終便
それで その日のうちに家へ帰る約束の生活…
そういう過去を想い出にして
いやな夢だけど
冷たく輝く月のような夢をみた
彼女のほかに もうひとり
彼女の友人らしき理解ある人物と
3人のストリートミュージシャン
場末のアクセサリーショップで
なにかを選ぼうとするんだけど
彼女に似合う首飾りは もうどこにも売ってない
そんな愛情は すべて
とっくの昔に買い忘れたかのように
家族を養うために働いてきたんだ
いやな夢だけど
澄みきった夜空に浮かぶ月のような夢をみた
彼らには関係ないことでも
誰もがみんな独りきりで過ごす時間を共有するように
酒瓶が並ぶ薄暗いカウンターで話を訊いている
今日までの彼女が
我慢してきたことをすべて清算できて
互いに自由になる道を選択する
週末の繁華街で
夜が明ける前に みんなで飲みなおすつもりなんだけど
懐かしい彼女の笑顔と手をつなぐ時間はない
結局その路上には留まることなく
酔い覚ましに舟へ乗り込み
持ち寄った楽器で即興演奏する
いやな夢だけど
蒼い夜空にパステル調に描かれた月のような夢をみた
置いてあったデカイ貝殻の内側を叩いたり
湾曲したところを親指で擦り奏でる低い音
楽隊に混じって ときどき振り向く彼ら3人
船長のほかに少佐か軍曹が乗り込んできて
ドアをあけるなり言う台詞は
「実にヘタクソな演奏だ、父親に似た3人の愚か者以外はな」
橋の上から見下ろす狙撃班とテレビ中継
もしも世間を揺り動かすニュースになるなら
そこで捕まる前に 果敢なき夢を抱くテロリストを演じるべきか…
いやな夢だけど
冷たく輝く月のような夢をみた
いやな夢だけど
冷たく輝く月のような夢をみた