あたらしい月夜にて  | “Mind Resolve” ~ この国の人間の心が どこまでも晴れわたる空のように澄みきる日は もう訪れないのだろうか‥

   
   
   
   
       ぎんいろりゅう 
    
    
    このちじょうで 
    つきよのばんが もっともあかるく 
    よぞらのほしが もっともちかくにみえる たかい ゆきやまのうえに 
    いっぴきのりゅうが ねていました 
    その しずかな ねいきは 
    うっすらと たにまをふきぬける かぜのようにやわらかく 
    なんびゃくねんと とけない ひょうせつのうえヘ のばされた
    しんじゅいろの ながいひげは 
    ときおり そのねいきにあおられ 
    ふかいもりのなかで かすかにゆらぐ えだのように 
    しなやかに なびいていました 
    
    そのよ だれひとりとして 
    あしをふみいれたことのない そのばしょへ 
    ひとりのわかものが やってきました 
    
    そのけはいに ずっとまえから きづいていたりゅうは 
    しだいに ちかづいてくる にんげんのあしおとに 
    みみをすませていました 
    
    そうして そのわかものが 
    ゆきにふみこむアイゼンのおとをとめると 
    りゅうは ゆっくりと かためをあけました 
    
    つきあかりに てらされる じゅひょうのような こうたくで 
    ぎんいろにかがやくりゅう 
    
    けわしいゆきやまを のぼってきた わかものは 
    そのすがたを めにやきつけると 
    そのうつくしさにみせられ そのばに たちつくしていました 
    
    すると ぎんいろのりゅうは しずかなこえでいいました 
    
    
よくぞ ここまで いきてのぼってこれたな 
      それをほめてやりたいところだが 
      おまえのいのちは もうながくはない 
      わかっているな 」
 
    
    そのおどろきを いてついた ひょうじょうに だそうにもだせず 
    ただ こころのなかで おどくばかりのわかものは 
    りゅうのことばに こたえようもなく 
    やがて じぶんのてあしや かおじゅうに 
    いたみをかんじはじめました 
    かすかに きこえる わかものの いきづかいは
    しだいに あらくなってゆきました 
    
    りゅうは じぶんのくびを すこしだけ もたげ 
    ほんのすこしだけ おをうごかしました 
    つぎのしゅんかん それまでのあたりのしずけさは うそのように 
    おおきな なだれが まきおこり 
    わかものは その げきりゅうのなかへ のみこまれてしまいました 
    
    やがて なだれはおさまり あたりが ふたたび 
    もとのしずけさにつつまれると 
    ゆきやまのぬしは わずかにずらした じぶんのおを 
    もとのいちへ もどしました 
    
    そうして しばらくのあいだ ぎんいろのりゅうは 
    くっきりと よぞらにうかぶ しろいつきをながめていましたが 
    ゆっくりと めをつむり 
    つぎのじだいが おとずれるまで 
    ながいねむりにつきました 

   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
       2007august_moon  
           撮影 2007 augasut 1th 
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
    2007年の夏に発表されたアルバム…  
    
     Kuniyoshi "assimilate" Yamada 
      祝福 - Bless - 
     Everything unites into one. In the Shine,In the Shine 
    
    へ捧ぐ。
 
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   原文 2002年刊行 『 Bad Life 』 「銀色の龍  
   http://ameblo.jp/badlife/entry-10003359054.html
   なお、過去のページ中にある蛇足などは 
   今日あらためて書き直した内容とは関係しません