煙草問答

  

1.結婚3年目、妻(30歳)のつぶやき

・ネクタイ  

 誕生日祝いに奮発してプレゼントしたアルマーニのネクタイ、毎週月曜日、のー定例会議の勝負ネクタイだと言って毎週締めてた。最近してないな、と思ったら箪笥の奥の方にに掛けてあった。なんでだろ、と思ってよくよく見たら、ネクタイの下の方に小さなシミ、と思ったら違った。小さな穴、煙草の灰が飛んだのね。煙草でダメになったネクタイ、これで3本目。前と同じように気づかないふりしててあげるしかないかな、怒っても穴は戻らないしな。

 それにしても、毎日2箱、1ヶ月のお小遣いの半分を煙にした上にこの始末。ケチで言ってるんじゃない。もちろん煙草を止めてお小遣い減らしてくれたら嬉しいけれど、そんなことはどちらでもいい。 靴はノーブランドのバーゲンセール品、残業してお腹が空いても社食のラーメンも食べずに帰ってくる。煙になる分を少しでもそっちへ回してほしいの。「男は靴で見分ける」って何かの雑誌に書いてあったし、空腹で倒れたら何にもならないじゃない。あなたのためを思うと本当に切ない気持ち。

・思えば小さい時から

 小さい時から煙草は嫌だった。時に食事の時にお父さんが吸う煙草の煙。せっかく年に何回かのすき焼きのときとか。さあ、と味わうその時に煙がちゃぶ台の向かいから吹きかかってくる。ご馳走の時ほどよく吸うの。ピースの空き箱でコースターのようなものとか、メンコのようなおもちゃを時々作ってくれて、それは嬉しかったんだけど、すぐゴミになったわ。

 そんなこともあって、結婚するなら、煙草を吸わない人としようって小さい時から決めてた。

だけど、煙草好きな人と一緒になっちゃった。何故って、煙草を吸わない人にいい男がいなかったから。これは、と思う男はみんな煙草を吸ってた。デートでは10分男を待たせることって何かの雑誌に書いてあったので実践してきたけれど、どの男も足元に3本は吸い殻が落ちてた。煙草を吸わないいい男もいたんだろうけど、出会わなかった・・・男運がなかったのかも。

 そろそろ旬の時期を過ぎそうに自分でも思ったから、食事の時は煙草を吸わないことを約束させて、今の旦那で手を打ったの。

・OL時代も

 そうそう、OL時代、今はもうOLって言わないのか、も煙草には嫌な思い出が多いわ。事務の仕事だったんだけど、隣の男が良く吸うのよ。何か考えるときはまず一服、電話をかける前に一服、かけ終わっても一服。何かし始めるときは必ず吸うの、何もしてないときも。何か難しい電話なのかと思ったら、単純なアポ取りだったり。そして腹の立つことに、煙草に火を付けながら、実際にはあまり吸わないの。煙を出しながら灰になってくだけなのね。そんな吸い殻が積み重なって時々灰皿の中で火事になるのね。見かねて灰皿を捨ててあげたら、「やあ、ありがとう」だって。

 会議の時も嫌だった。週に何回かの会議のそれぞれの席にお茶を入れて配る、これはその頃は当たり前だったからいいとして、灰皿も配らなきゃならなかったの。会議が終わったら灰皿の灰を捨てて綺麗に洗って、テーブルの上に散った灰を拭くの。勤めて2年目ぐらいに灰皿は二人に一つとなって嬉しかったんだけど、今から思えば何を喜んでたんだろう、って思うわね。 思い出してると、だんだん腹が立ってきたわ。

・これからのこと

 過ぎたことは仕方ない、前向きに物事を考える、が私のモットーだから、これからのことを考えなきゃ。毎年煙草を値上げしてくれているけど、へこたれる様子ないし、前に大切にしてた上着に焦げを作ったときも、「あ、失敗した」とかいってやけに煙草には寛大だったし。

 子供も生まれるし、こんなことではやっぱりダメ。旦那のため、子供のため、そして私のためでもある。今度のネクタイも、黙っててあげようかと思ったけれど、ちょっと考え直さなきゃ。

 

 次回は夫のつぶやきを書いてみようと思う。妻のつぶやきに対抗できるかどうか自信はないけれど。

 

            2022.1.24