秋葉原連続殺傷事件の犯人をモチーフとして描いた問題作。
いつの時代になっても無くならないものの一つとして、
「いじめ」というものがある。
小学校では、容姿、運動の向き不向き、挙動などを理由にいじめの対象を定め、
酷い時にはクラス全体でいじめを行ったりする。
さらにいじめの対象を庇おうものなら、庇った人間すらもいじめの対象になってしまう。
そしてそのいじめの対象者は、物心ついて初めての社会生活の中で確実に心に影を落とし
どんどん自信を無くし、その者の気質として根付いていってしまう。
いじめが小学校で終わるならまだ良い。
中学デビュー、高校デビューという言葉もあるが
これは自分が変わらなければ何も変わらないという自覚のもと変わろうとする強い意志があって
初めて成り立つ行動である。
しかし自覚はしているがその勇気が持てない、根付いてしまった気質にあらがえない者は
中学校、高校、社会に出てもいじめを受けてしまう事に成りかねない。
主人公の梶という男は、社会に出てもいじめを受けた者の一人である。
「私はダメな人間です」
自覚はしている。
全部わかっている。
「私はあなたの犬ではないのです」
そう呟いても逆らえない心。
求めるのは愛。
でも自分を誰も愛してはくれない。
イケメソなんて皆死ねばいい。
イケメソが一人で沢山の女と付き合うから俺に女が回ってこないんだ。
友達と言える人間に出会っても、そいつの幸せを妬ましく感じる。
幸せな人間を殺せば自分は幸せになれるのでしょうか?
物語は淡々と梶の日常を描いていく。
そしてその日常で起こる出来事が
一枚一枚重なっていくように確実に梶の心に闇と歪みをもたらしていく。
そしてその日に至る、というもの。
コメディタッチな映画ではあるがコメディじゃなければ
胸が痛すぎて見ていられないのかもしれない。
自分がもし梶だったらどうするか。
かなり考えさせられる映画です。


