三寒四温な日々 -10ページ目

三寒四温な日々

Twitterに続きblogをはじめてみました。大喜利や、短めの物語を書いたりしていこうと思います。宜しくお願いします。

飛べない…飛べないのよ。どうしたら飛べるの?

娘はいきなり、掃除中にほうきに股がり先のようなことを言い出した。
父である私は、思わず笑ってしまった。魔女のナンタラを見て、自分も飛べると思ったのだな。

『俺も股がる』
娘の後ろに股がり、二人で叫んだ。
『飛べない、飛べないのよ。どうしたら飛べるの?』

長男が突っ立って見ていた。
『おっ、君も魔女のナンタラに参戦する?』
股がりながら私は、娘の肩に手を置きながら聞くと、鼻をほじってピンッと指で弾いて去っていった。

『掃除してるのだぞ、ピンッはないだろ!?』
ほうきに股がりながら、二人で長男を追い掛ける。長男は靴下を脱ぎ、ヌンチャクのように靴下を操っていた。

『ハイヨハイヨ、ハイハイヨー!』
新手のヌンチャクならぬ靴下使い。
長男は靴下をハイヨハイヨしながら聞いてきた。
『お主、名は何と言うのだ?』
私はほうきから降り、右手を高々と揚げ開いた脇を左手で隠し答えた。
『セバスチャン!そして娘のチェッチェリーナチヨコ!』
チェッチェリーナチヨコは、ほうきにまたいだまま、集中した。
『…………やっぱり飛べないおかーさーーん!』
『お母さんを呼ぶのか?』
私は我に返った。

ドスドスドスドスドスドスドスドス…物凄い足音だ、家が壊れるぞ!いや、壊れはしないか。
お母さんが現れると、娘は黙って見ていた。私も妻を見たまま動けなかった。唯一、長男だけが、また鼻をほじっていた。
『両手で両穴同時にほじるなー!』
お母さんは大声で叫ぶが、こもっている。

被り物をしたお母さん。
ゆるキャラの影響を受けたのは一年ほど前。
ウサギ、犬、猫、ワニ、そして怪獣。
被り物のバリエーションは、月日を重ねる毎に増えていき、現在は6作目の妖怪を依頼していると言う。
今日の被り物は犬。
真っ白い犬の被り物。
赤い首輪まで着けて、身体全体を白でキャラに成りきっている。
テレビの影響を受けやすいお母さん。

『茶の間の掃除機かけた?』
私は犬の顔に向かって聞く。
『やって、、、いい加減鼻をほじるのを止めなさい!』
長男にやっぱりこもった声で注意し、答えを言わないお母さん。
茶の間に行くと朝のままだった。

掃除って楽しいな。
ウワーーンウワーーンウワーーン、、。
『お父さん泣かないで』
娘は腕で覆い泣く私の横に来て、服を掴んで言うものだから、私は泣くのを止めチンパンジーの物真似をして笑わせた。

長男『もう止めよう』
未だ鼻をほじっていた。

お母さん『あなたが、先ずほじるのを止めなさい。それが、この舞踏会の終わりを告げる合図よ』
長男が鼻をほじるのを本気で止めると、娘はほうきで廊下を掃き始め、お母さんは犬の被り物を取り、そして父もチンパンジーの物真似から我に返った。

掃除を始めて約二時間。漸く家族は、真面目に掃除を始めるのである。