「涼さん、おはようございます!」
「あ、愛ちゃんおはよう……」
「どうしたんです?元気ないみたいですけど。」
「あはは、ちょっとね……」

ゲームのやりすぎで寝不足だなんて言えないよね。
ある格闘ゲームの動画を見て、あまりのすごさに自分も!
って、思ったのはいいんだけど……

「きっとゲームのやりすぎ?」
「え、絵理ちゃん!?」
「そうなんですか?」

後ろからいきなり絵理ちゃんの声が聞こえてびっくり。
しかも当てられてるよー。

「涼さん、エッチなゲームのやりすぎ注意?」
「ち、違うよ!」
「じゃあ、何のゲームしてたんですか?」
「格闘ゲームだよ。」

ひたすらコンボ練習してたんだけど、全然できなかったんだよね。
どれだけ練習したらあんなに簡単そうにできるんだろう。

「もしかしてストリpp」
「絵理ちゃんストーップ!」
「え?え?涼さん、何で止めたんですか?」
「愛ちゃんは知らなくていいんだよ。」

なんか絵理ちゃんがすっごい悪い笑顔してるよ。
大体なんで絵理ちゃんがそんなの知ってるんだろう。
僕ですら名前くらいしか知らないのに。

「愛ちゃん、後で教えてあげるね。」
「はい、後で教えてくださいね。」
「待って!待って!ち、違うんだよー。」

まずいよ。このままじゃ変なゲームやってたって思われちゃう。
なんとしてでもその誤解を解かないと。

「そうだ、事務所のPCでも見れるはずだから動画見よう。」
「涼さんがゲームやるきっかけになった動画ですか?」
「そうそう。絵理ちゃんも一緒に、ね?」

絵理ちゃんがすごく悔しそうな顔してるけど、これでいいんだ。
僕の平穏はこれで守られたんだ。



「どう?」
「何してるかわからないですけど、すごそうです。」
「そうでしょ。僕もこれくらいできるようになりたいよ。」

愛ちゃんが少し興味持ってくれたみたい。

「あ、僕ちょっとお手洗い行ってくるね。」
「はーい。」

寝不足の僕は何も考えていなかった。
そして、戻ったとき想像していなかった悪夢が……

「涼さんのエッチー!」
「え?な、急にどうしたの愛ちゃん。」

絵理ちゃんがにやにやして……え!?
僕はPC画面に表示されていた、とあるゲームのホームページを見て青ざめた。

「ぎゃおおおおおん!ご、誤解だよー!」
「涼さん、こういうゲームやってるなんて!」
「ち、違うってばさっき見せたやつだよー。」
「それは絵理さんが似てるゲーム見せただけって!」

この日からしばらく愛ちゃんの僕を見る目が冷たかった。
絵理ちゃんの策略に見事はめられた僕は二度と寝不足にならないよう心に決めたのだった……