マタイによる福音書22,34‐40は、「心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい」と「隣人を自分のように愛しなさい」、これらが最も重要な掟であるとイエスが説く箇所。続く41‐46は、メシアとは何者かという問答。「主キリスト、神の独り子」BWV96は後段の問いに対して第1曲目から表題のコラールで答えを提示している。しかも音楽はパストラール風で、牧者のイメージを醸し出す。
「神にのみわが心を捧げん」BWV169のほうは、前段の神と隣人を愛するというテーマに依っている。音楽としてはチェンバロ協奏曲(ここではオルガンのソロ)が組み込まれたアルトのソロカンタータの体裁となっている。