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読売新聞社説

福島原発処理水 丁寧なリスク説明が大切だ

 

 東京電力福島第一原子力発電所にたまり続ける「処理水」をいかに処分するか。廃炉作業を滞らせないよう、方針を早急に決めねばならない。

 

 福島第一原発では、溶けた炉心に水をかけて冷却する。そこに地下水が流れ込み、放射性物質で汚染される。回収して浄化設備を通したのが処理水だ。

 

 タンクに保管中で、その量は90万トンを上回る。今後も年に5万~8万トン増える見通しという。

 

 敷地内には既に、各種のタンクが約900基ある。用地の確保は厳しさを増しており、タンク増設の計画は、2020年末までしかない。敷地がタンクで埋め尽くされれば、廃炉に必要な作業スペースが足りなくなるだろう。

 

 課題は、処理水に放射性物質トリチウム(三重水素)が約900兆ベクレル残っていることである。原理的に取り除くのが難しい。有力視されているのが海洋放出だ。基準値まで濃度を薄めて実施する。

 

 国内外の原発でもトリチウムは日常的に発生しており、基準に沿って海に流している。国内の原発からの放出量は、震災前の5年平均で年間約380兆ベクレルに上る。

 

 トリチウムは、宇宙線によって年に7京ベクレルが生成され、日本で年間に降る雨水中にも223兆ベクレル含まれる。一定濃度以下なら環境などに影響はないと、経済産業省や原子力規制委員会は説明する。

 

 十分に安全性を確認した上での海洋処分は避けられまい。

 

 経産省が、その実現を目指して開いた公聴会では、意見陳述者から、安全性について「信用できない」という声が相次いだ。

 

 技術的に難しい問題なのに、説明や資料は簡素だった。放射能などの基礎知識がある前提で説明され、「(経産省は)ゼロから検討し直せ」との注文がついた。

 

 処理水に、トリチウム以外の放射性物質が残留している、との批判も集中した。公聴会直前の一部報道を受けたものだ。

 

 東電は4年前から、浄化は効率を重視すると説明してきた。放射線による作業員らへの影響を軽減するためだ。取り切れない物質は放出時に除去する方針だが、その経緯が公聴会の資料にはない。

 

 リスクに関する説明不足が、反発を助長していないか。

 

 漁業関係者など地元は、「風評被害」を理由に放出に反対している。信頼が回復しつつあるのに再び悪影響が及ぶと懸念する。

 

 地元の理解を求める努力は当然だ。政府と東電は、広域での風評対策も一層強化すべきだ。

 

2018年09月04日 06時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun