それを物語るのは、王岐山党中央常務委員(66)に対する「捜査」である。
王氏は党中央規律検査委員会トップで、党幹部の不正蓄財一掃をスローガンにする習近平主席の片腕である。 
2008年9月にリーマン・ショックが起きると、ワシントンとの間で米中協調を話し合った。
オバマ政権やニューヨーク・ウォール街でも高い信頼を得ているとみられていた。
ところが、ワシントンの態度は一変した。 

 きっかけは、今年2月初旬に表面化した米金融大手、JPモルガン・チェースに対する米海外腐敗行為防止法(FCPA)違反容疑である。同法は、米企業による海外での贈賄を禁じている。 米司法省と証券取引委員会(SEC)は、捜査の過程で、モルガン幹部と党幹部の間でやりとりされたEメールなどの通信記録を検証したところ、高虎城・商務相が商務次官を務めていた08年、 JPモルガン・チェースに在籍していた息子・高●(=王へんに玉)氏の雇用継続を条件に、同社のために「一肌も二肌も脱ぐ」と申し出ていたことが発覚した。 
 ウォールストリート・ジャーナル紙など米メディアによれば、米当局は高商務相ばかりでなく、中国側の調査対象として35人をリスト・アップ、その筆頭格に王岐山氏を挙げている。 王氏の配下で党幹部不正取り締まりを担当した公安部長、中国銀行副行長、中信集団など国有企業大手のトップも含まれる。 
 王岐山氏自身は夫人(姚依林元副首相の娘)との間に子はない。
しかも、中国国内でも清廉潔白で厳しく悪をただすとの評判がある。 
ところが、米当局は周辺の党幹部からの依頼を受けて、交流のあるモルガンなど米金融大手に「口利き」して利権を仲介したとの嫌疑をかけている。 
 モルガンが党幹部子弟の雇用継続でどれだけの不当な利益を得たかどうかを、厳密に実証するのは実際には困難で、結局はモルガンへの罰金を科す程度で決着させるとの見方が強かった。 ところが、米当局は王岐山氏に狙いを定めていることをメディアにリークしたばかりか、対外情宣活動を行うボイス・オブ・アメリカ(VOA)の中国語版「美国之音」の5月29日付インターネット番組に北京に批判的な在米中国人専門家4人を登場させ、 

習主席や王氏の不正蓄財取り締まりのいい加減さを余すところなく語らせた。 
 「美国之音」については北京当局が報道管制し、本土での受信を遮断しているが、海外の中国人社会にはその内容が知れ渡っている。 ほんの一部を除き、大物の腐敗幹部については不問に付しているばかりか、取り締まる王氏の周辺は米金融大手と癒着三昧、というわけで習主席の面子は丸つぶれである。 

オバマ政権はワシントン・ニューヨークの王氏とのパイプを廃棄し、北京と全面対決に転じたのだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男) 

http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20150605/ecn1506051550006-n1.htm 
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20150605/ecn1506051550006-n2.htm 

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これが本当なら、さすがアメリカさん!