米念頭に「仮想敵」明示…「新冷戦時代」幕開け、隠した“爪”あらわに

 白書は、習近平国家主席が唱える「軍事闘争の準備」を強く打ち出し、南シナ海での紛争などを念頭に「海上軍事闘争への準備」を初めて明記した。1978年に●(=登におおざと)小平主導の改革開放が始まって以降、中国は経済発展に専念するため外国との軍事的対立をなるべく避け、外交交渉で解決をはかる「韜光養晦(とうこうようかい、能力を隠して実力を蓄える)」戦略を実施してきた。

 しかし近年は海洋権益の拡大を求めて外洋への拡張を推進するようになり、軍事力をバックに領土問題などで強硬姿勢を示す場面も急増した。今回の国防白書は、脱「韜光養晦」の姿勢をさらにはっきりさせた。

白書は、中国の海軍を近海型から遠海型へ、空軍を領空防護型から攻防兼務型へ変更する必要性も指摘した。中国軍は今後、作戦範囲を広げ、先制攻撃することもありうることを示した形だ。

 外国との軍事協力については、まずロシア軍との提携強化の必要性に言及した。中露両軍は「全面的・多元的・持続可能な制度的枠組みを徐々に構築し、より広い分野、より深いレベルでの発展を推進する」としている。

 中国の軍事専門家は、「この白書は、中露が連携して日米同盟と対抗する新冷戦時代の到来を意識したものだ」と指摘している。