B級グルメを愛してる! -8ページ目

日本一狭い厨房で生まれる奇跡の鍋 ~荻窪「四つ葉」で真心に触れる~

生まれて初めて口に運ぶ料理の第一印象とは後々まで尾を引くことが往々にしてある。

初めて口にした食材が不味いものであったら、その料理を敬遠することになってしまうだろう。

そういう意味で、いままでスッポンを食べたことがない人は幸せといえよう

お酒と生姜でスッポン特有の臭みをごまかした不出来なスッポンを食べたばかりにスッポンキライにならなくて済むからだ。

生まれて初めて食べるスッポンが「四つ葉」であれば、それは最高の幸せに違いない。

それまで、スッポンというものに偏見を抱いていた。

なんだか生臭くて生き血とかを飲む料理でショウガで匂いをごまかさなければ食べられない

みたいなイメージだ。


おそらく実際に多くの店ではそうしていることだろう。

なんだかドロドロしたスープの中に浮かぶグロテスクなスッポン、

なんてのを小料理屋なんかで見たことがある。

わざわざ高い金を出して食べに行く料理、なんて位置にはスッポンはなかったわけである。


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(日本一小さな厨房から驚きの料理が生まれる)



友人に誘われてその店を訪れたのはいまから7年前のことである。

カウンター8席に奥に小上がりが一室。

なんとも小さな小料理屋だ。

とにかくここのスッポンは絶品なんだ。食べたら絶対に好きになるって

渋る私に友人はそう言って自信ありげに連れて行ったわけだ。


しかしながらそんな私の杞憂もガラガラと引き戸を開けた瞬間に吹き飛んでしまった。

笑顔で出迎えてくれた女将さんと板前さんの暖かさにいっぺんで参ってしまったからだ。

ほんものの笑顔とでもいうのだろうか…

いままでさまざまな店でさまざまな笑顔に出会ってきているが、

「四つ葉」の女将さんと板前さんの笑顔にはお客に対するリスペクト;のようなものさえ感じる。


とにかく女将さんと板前さんの丁々発止が面白い。

おかみさんが初めて来たお客さんに対していろいろと話しかけていると板前さんが(長谷川新さん)さっと遮る。

「女将さん、先付けあがりましたよ」

「あらあらいけない、すっかりお話に夢中になっちゃって」などと女将さんは言いながら小鉢を並べてくれる。

「青森産の平目です」

新さんのその短いセリフの中に並々ならぬ自信を感じる。


肉厚の平目は昆布がほどよく効き、プリッとした歯ごたえが楽しめる。

料理を楽しんでいるとどうにも新さんの動きが気になってくる。

せわしく働く新さんの動きには一切無駄がなく実に美しいのだが、

働いている厨房がすごいのである。

狭い…いや狭いなんてものじゃない。

そのスペースはわずか畳、半畳ほどか。

つまり流しと板場の前に立っているだけのスペースしかないのである。

よって調理に関わる道具や食材などは手の届くところに効率よく配置されている。

新さんは体をひねったりするだけでそれらに手が届くという寸法だ。

これは見ている側からすると驚きと芸術美をもって称えたくなる。

うーむ、ここまで無駄のない動きというのもスゴイ

そんな思いに誰もがかられることだろう。


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(一切の淀みのないスープが絶品!)


そして、いよいよスッポンが鍋に投下される。

各部位ごとに出されるスッポンは無駄な部分がすべてキレイに取り除かれており、

そのおかげでスープに淀みが一切ない

このスープを見ただけでどれだけ下ごしらえを丹念にしているかが伺える。

後ろ足の脂肪は脂肪と呼ぶには忍びがたい、普通の動物性脂肪とは全く違った、

口の中でとろけるような味わいだ。

頭、脇腹、肩胛骨など各部位ごとに全く違った味が楽しめるのが驚きである。


新さんは言う。

臭みが抜けきったときのスッポンの持つ食材の力には、畏敬の念を抱くほど凄い、と思います

なるほど

その気持ちがスッポンに対してもお客さんに対しても表れているのか…

これこそがこの店の居心地の良さに繋がっているのだろう。


スッポン本来の味、つまり香りだけを残して臭みを取ったものを完成させるまでに新さんが費やした時間は10年だという。

スッポンの仕組みに触れようとする姿勢があったからこそ、やってこられたと思っています。

料理人として食材を生かし切れたという感はありますね」


雑味のまったくない澄みきったスープ、各部位の旨味が存分に引き出されたスッポン

このスッポンを食べれば、「さすがにそこまでいうだけの味だ」と唸らざるを得ないことだろう。

この鍋からは丹念な作業と料理に対する愛情をヒシヒシと感じる。


そして、料理を器によそってくれる女将さんの笑顔とあたたかさ…

「四つ葉」の鍋には人をもてなす心がぎっしりとつまっている

もしも、不幸にもスッポン嫌いになってしまった方がいたら、是非「四つ葉」を訪れて欲しい。

たとえ第一印象が悪かったものとでも打ち解けあえることにを知るはずだ。

見た目よりも中身に触れること。

ものの本質を知ることの重要性を「四つ葉」の料理は教えてくれる。



●「懐石 四つ葉」

住所:東京都杉並区上荻2-20-7

電話:03-3398-7093(要予約)

営業時間:18:00~22:00

定休日:日曜、祝日


大陸の手作り中華のお味 ~高津「遼菜府」のプリプリ餃子~

晩秋うらら…今ごろ海の向こう上海では上海蟹が熟れている頃だろう。

上海蟹も捨てがたいが、大陸な感じの水餃子も味わい深いと思い、

溝の口の中華料理屋「遼菜府」に行ってきた。


中国の脇道にでもありそうないい感じの店構え、

ガラス張りの厨房では麺を打ったり、水餃子をこねたりしている姿がうかがえる。

うむうむ、なかなかに良い感じだ。

私も中国には造詣が深い方なので、「ヤる店」と「ヤらない店の区別くらいはつく。

ここはヤりそうな感じがする。

このあたりの匂いを嗅ぎ分けられるか否かが、B級グルメ道を邁進する上で重要であったりするわけだ。


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(いわゆる油面とは味わいが違う!薬膳油麺)

水餃子、練りゴマ豆腐、ピリ辛胡瓜、あさっりキャベツ (こんな名前ではなかったかもしれない)、薬膳油麺、タンタン麺といったところを3人でオーダーした。

同行した友人Tはこう言う。

大陸の懐かしい匂いがする」と。

ふむ、大陸懐かしい匂いね。

言わんとするところはわからないでもない。

かって中国を旅したときの体験が甦る味…そんなところなのかもしれない。

ちなみにここは遼寧省料理を売り物にしている

遼寧省とは大連とかハルピンとかがある東北地方である。

よって寒い。

寒いから辛いモンとかが多くなる。

ピリカラなゴマ豆腐は濃厚なお味で、紹興酒がすすむすすむ

大陸の人々も昼から酔っぱらっていただろうか…

いやそんなことはなかったな、みんなサクッと食ってサクッといなくなってましたわ。


薬膳油麺はいわゆる巷で一時流行った、スープなしの油麺とはちと違う。

極太の手打ち麺に中国製の醤がからまった味わい深い一品だった。

ここの麺類はオーダーを受けてから麺を打つようで、

打ち立ての麺だけに麺のムツムチとした歯触りが存分に味わえた。



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(厚手の皮のプリプリ感と具のジューシーさが良い)


肝心の水餃子は餡にもう少し味付けが欲しいところ。

しかし、皮の厚みという手作り感といい、悪くはない。

繊細な味付けのキャベツもいい感じで、

近所にあったらかなり通うだろうな、と思わせてくれた出来映えでした。

こういうこだわりの大陸料理屋が近所にあったら本当に幸せだと思う次第です、ハイ



●「遼菜府」

住所:神奈川県川崎市高津区二子4-8-9

電話:044-811-5977

営業時間:10:30~2:00

定休日:無


回転寿司のお仕事

そんなわけで、回転寿司関係のコメントをお願いされた。

月刊アサヒ芸能エンタメ!12月号」掲載の

全国5大回転寿司チェーン得選手権という記事の中の出来事である。


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無添くら寿司、かっぱ寿司、平禄寿司、あきんどスシロー、すしおんどの全国に100店以上チェーン展開している巨大回転寿司チェーン店の比較だそうだ。

巨大回転寿司チェーン店というのは、大量仕入れによる安さが魅力といえば魅力だが、

残念ながら回転寿司屋としての愉しみが、大幅に欠けているといわざるをえない

ファミレスみたいな雰囲気だけで私なんかはもう簡単に萎えてしまう。


あとなんといっても寿司の個性がね…

どうしてもかっぱ寿司風になっていたりするわけですよ、残念ながら


やはり、回転寿司屋のアミューズメント性を愉しむならば、

個性派、こだわり派の回転寿司屋で、回転寿司ならではのオモロイネタを食すのがよろしいようで。

無味乾燥なファミレス系回転寿司屋よりも、うるさくてかなわないが「スシ食いねぇ」がエンドレスで流れている「廻し寿司 若貴」の方が楽しい、ってことですかね。


回転寿司屋に必要なのは、ワクワク感を沸き立たせる楽しさ何ではないかと思う次第です、ハイ。



またもや引越ししちまった・・・ご近所寿司屋は危険がいっぱい

そんなわけで長らく更新出来なかったが、けっしてサボっていたわけではない。

引越しの準備でおおわらわだったのである。

N●Tの工事が遅れた関係でネットが開通せずに日々悶々と過ごしていたのです。

あしからず


というわけで、今回はかなり大掛かりな引越しであった。

ベッドを新調したのだが、これがどういうわけか」配送日が遅れて(いろんなものがよく遅れた…)

引越しの時間とぶつかちまったために家具を運ぶクレーン車とベッドを運ぶクレーン車がバッティングするという恐ろしいハメにあった。

家の前に大型車が4台…ご近所迷惑も甚だしいでゴンした。


そんな肉体的、精神的疲労を癒すためには寿司しかないと思った。

前回の引越し では地元飲み屋探索こそが、引越し日の正しい過ごし方であると述べたが、

地元寿司屋というのも行ってみたいところである。

近所に2軒あった寿司屋のうち、一軒はテレビがあっていかにものチープそうな感じ。

3日前のネタが出てきたとしても驚けない店で、もう一軒はちょいと高級そうな感じ。

いくら地元の常連相手だからと言って、テレビのある寿司屋というのは落ち着かなくてよろしくない。

こんな店のオヤジは平気でタバコを吸ってそうだし。

とはいえ、これが地元寿司屋の通常のスタイルではないかと思う。

近所の住民相手の寿司居酒屋。タバコの煙もお構いナシだ。

気分ではなかったので、迷わずちょい高級そうな店を選んだ。


2重扉のその店は、カウンターだけの小さな店だった。

金曜の夜8時過ぎだが、お客はいない。

ふむ、この界隈ではまだ早くてこれからなのだろうか・・・などと思いつつ、

品書きを見る。

案の定、値段は書いていない

但し、壁のメニューは手書きで産地まで書かれていた。

鯵は江戸前と静岡産、富山の太刀魚、岩手の戻り鰹など・・・

ちょっとしたヤル気は感じた。

ケースの中にはそれほど多くない感じのネタが並んでいる。

ちょい仕入れスタイルなのだろう。

客で込み合う…という感じの店ではないようだ。

となると客単価が…後が怖くなければ良いのだが…


まずは刺し盛りを注文し、グイグイと冷酒をあおる。

5品の刺身が3~4切れづつ乗っている。

いい感じだ。

冷酒がすすむ、すでにこの時点で3合はいったか。

続いて握りタイム。

先ほど、食べなかったものを握ってもらった。

二人で五貫づつくらいだろうか。

いやぁ、満足満足。

味もまずまずだったので、ゆっくりと落ち着いて食べたいときには良いかもしれない。

地元の寿司居酒屋系とは違った正統派スタイルの寿司屋があるとそれは便利である。


で、いよいよお会計タイム。

最近、都心の名のある寿司屋でも一人、1万5千円くらいというのが相場だ。

今日のようにお好みでいっても一人2万円まではいかないはずだ。

で、今日のお会計、2人で2万円也

うーむ、ちょい高ですね。

これならあと1万出して、有名店に行っても良いのでは、という感じ。

住宅地の寿司屋ならば、お値ごろ感が必要になると思うのだが…


私のとって通いたくなる地元の寿司屋とは、回転寿司並のお手ごろ感がどうしても必要だ。

通の寿司屋でこんだけ食べたのに有名寿司屋の半額だぜい、みたいな。

まとまった金が出るとなるとやはり有名店志向になってしまいますね、

子どもの頃から寿司=特別な日の食べ物みたいなイメージになっているから、気取って食べたくなりますしね。

そこそこの値段を取られるなら、やはり有名店でって感じですかね。

寿司屋ってやつは



またもやB級の山発見! ~焼津・「カントリーロード」のデカプリン物語~

B級の山は至るところにあるものである。

マウンテン 」、「ラーメン二郎 」…人間の無力さを思い知らされる山はこの世にまだある。


焼津の町をふらついていた我々は友人Tの「山に登ろうじゃないか!」の一声で、とある喫茶店に向かうことにした。

タクシーの女性ドライバーにその店の名前を告げると

「あーぁ、あそこですか…私も学生時代に行ったことがありますよ。一度だけですけど…なんか有名みたいですね」と30代半ばと思われる女性ドライバーが言った。

その言葉の裏には「わざわざ、あんな店に行くためにコイツらは遠くから来たのか」というようなあきれの念が含まれていた。


その店の名前は「カントリーロード」。

山小屋風の建物である。

オリビア・ニュートンジョン好きの山男みたいなマスターがいるのであろうか?

そして、どんな山が待ち受けているのか…

入り口脇のショーウィンドーにはピラフやらサンドウィッチやらパスタやらの喫茶店メニューが並ぶ。

が、最下段にはとんでもないものがズラリと並んでいた。


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(横のあんパン人形と比較してほしい。そのデカさがわかろうというものだ)


プリン、である。

それも並のプリンではない。

まさにプリンの山、である。

最もデカイ、スーパープリン15色アイスアラモードは4800円もする。

そのプリンの大きさは子供が砂場かなんかで使う小さなバケツ並。

通称:バケツプリンと言うらしい。

まさしく…さすがにこの山を登る勇気は湧かないが、とにもかくにも店内へと。


マスターは山男風…とは似ても似つかない神経質そうなやさ男。

しかも、動きがやたらと鋭角的なんである。

カク、カク、カクという感じで90度コーナリングをしながら水を運んできた。

マスターの神経質そうな動きだけでこの店への期待が膨らむ。

メニューを見る。

TOPはやはりプリンだ。

が、ショーウィンドーで見たものよりも、もっとすごいものがあった。

50色10人用UFOなるプリン。値段はなんと1万円。

50色とはもちろん、アイスである。

50色ものアイスはあくまでも添え物に過ぎない。メインのプリンとはいったいどんな大きさなのか…

うーむ、考えただけでもそら恐ろしい。


これだけプリンをみせられた後でこちらも引くわけにはいかない。

が、最も小さなプリンにしてみる。

それでも1000円である。

10分は待っただろうか、ついにプリンが我々の前に姿を現した。


(ガムシロのサイズと比較してもデカイ。これが普通サイズだそうです)


それでもデカイ。十分にデカイ。

スプーンをプリンの山に突き立てる。

グサ、という確かな手応えを感じた。ヘナチョコなプリンではなく結構、ハードな感触だ。

味はどうか?

甘くはない。ハードな感触同様、しっかりとした食べ応えだ。


友人Tと共に山に挑む。

Tは3口くらいで早くも挫折した。

なにせさきほど美味な桜エビにかき揚げを食べたばかり。

幸せな満腹感をプリンで汚していいものか、私も大いに悩む。


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(B級山好きの男、友人T。「危険なアネキ」の医師役がハマってます)


万全の体調でプリンに望むと決めていたならば、登頂はさほど難しくなかったかもしれない。

しかし、食後のデザートといった感覚ではまずこの山には登れないだろう

一番小さな山でさえこれなのだから、スーパージャンボプリンともなればいったいどんなものなのか…

考えただけでも恐ろしい。

名古屋の「マウンテン 」といい、焼津の「カントリーロード」といい、東海地方には恐ろしい山があるモンである。


プリンでたぷんたぷんとなった腹を抱えて、我々は次なる獲物を目指すのであった…


●「カントリーロード」

静岡県焼津市西小川1-3-3

電話:054-627-8561

営業時間:10:30~23:00

定休日:第1,3火曜日







桜エビに生シラス…生々天国 ~焼津「おおいし」は漁港の味~

前回、静岡の話を書いたが、やはり漁港に行ったら取れたての魚に舌鼓を打ちたいですよね、

というわけで焼津に訪れたときの話を書こうかと思う。


焼津と言うところは静岡からJRで3駅ばかり行ったところにある漁港の町だ。

というわけで、目の前で水揚げされたばかりの新鮮きわまりない魚がいただける。

漁港の目と鼻の先にある「おおいし」という小料理屋がウマイという情報を聞き、昼時に訪れてみることにした。


こざっぱりとした店内はカウンター主体の構成になっているが、どうにも厨房が広い

客席よりも広い。

そんなところにも期待感が増す。

で、まずは生シラスと生桜エビをつまみにビールで乾杯。


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(ねっとり感がたまらない生シラス)



生シラスはねっとりと舌にからみつく味わいがなんともいえない。

揚げシラスもご飯に掛けて食べるとウマイが、生シラス丼の方があきらかに美味そうだ。

生桜エビにしてもそうだが、やはりこういう生ものが味わえるのが漁港の強みだろう。

東京ではここまで新鮮なものはまずお目にかかれない。


メインには桜エビのかき揚げ定食を注文。

刺身も美味いが桜エビのサクサク感がなんともいえないかき揚げがやはり秀逸。

天ぷらの衣と小さな桜エビが見事にマッチングして、

まさに糸がほどけるように口の中でほぐれていく


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(糸の目のように桜エビと衣が絡んでいる)


サクサクのフカフカ、ってな感じでしょうか。

これだけ食べにわざわざ焼津まで来る価値はありそうだ。

いや、そもそもの目的がそうだったわけだが…


ちなみに焼津付近は「アンビア」というグループが主要経済を占めているようで、

店主にどこに泊まったと聞かれ、「アンビア松風閣」だと答えたら、

「あそこの料理はダメだ」とずっとグチをこぼしていた。

巨大グループに立ち向かう小料理屋、みたいな対立があるのだろう。

そんな心意気(?)を感じつつ、焼津の町をさまよう我々であった…(続く)


●「地酒 地魚 用宗港おおいし」

静岡県静岡市駿河区用宗1-34-21

電話:054-259-6557

営業時間:11:30~14:00、17:00~22:00

定休日:月曜


最近の回転寿司は変わりネタが勝負! ~世田谷「海鮮沼津港本店」~

最近の回転寿司業界のトレンドは変り種、である。

マグロやイカなどの定番系はいくら安かろうが、ネタが良かろうがそれだけでは引きにならなくなってきた。

このところ回転寿司屋はいかに見た目で楽しませてくれるか

まさしく回転寿司屋でのみ味わえる派手な寿司があるか、

このあたりに死活がかかっているような気がする。


世田谷の外れにオープンした海鮮沼津港本店は今までにない商品やフルスタイルの丁寧なサービスのご提供を目指していると聞いて行ってみることにした。
土曜日、ということもあり20分近く待つことになる。

回転寿司はお客の回転もいいのが救いか。


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(清潔感溢れる広い店内。奥には座敷席も)


都内店には珍しく座敷席などもあり、宴会にも対応している。

看板メニューには塩レモン太刀魚、対馬サバ、新サンマなど旬の魚や変り種寿司が並んでいた。

なかなかに良い感じである。

最近、回転寿司屋では炙り系のネタが猛威を振るっていて、炙りトロやら炙りさば、炙り北寄貝、炙りサーモンなどが多くの店で見られるようになった。

炙りネタは美味しそうに見えるので回転寿司にはもってこい。

普通の寿司屋では邪道とされるものこそ、回転寿司屋の王道なのである。


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(旬のネタはやはり美味そう。しかし、高そうな皿がね…)


早速、塩レモン太刀魚の皿を取ってみる。

うむ、十分に合格点が上げられる味だ。

見た目も良いが味もなかなかに良い。

こういったちょっとした創作系が食べられるのが回転寿司の愉しみといってもいいくらいだ。

見た目楽しげな変り種や創作寿司がない店は、これから廃れていくに違いない。

かって100円均一で大行列を誇った渋谷の「築●本店」などの時代はとっくに終わってしまったのだ。

海鮮沼津港にしてもそうだが、あとは200円くらいの皿をいかに充実させられるかがポイントになってくることだろう。

回転寿司屋でやはり400円以上の皿を頼むのは勇気が必要で心とサイフに大変よろしくない。


ちなみに以前、静岡に行ったときに駅構内の回転寿司屋「沼津魚がし寿司」(海鮮沼津港とは無関係)に行ったが、ここも見た目インパクトのあるネタがずらりと並んでいた。


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(生の魅力には変わり種も勝てませんな)



マヨネーズをふんだんに使ったカルパッチョ仕立てのネタや地魚三種盛り、生シラス、生桜エビなどなど・・・しかもネタもシャリもデカめ。

炙りネタや変り種も回転寿司らしくていいですが、生っつのは普通の寿司屋でも魅力ですもんね。

やはり漁港付近は強し、の印象でした。

これからは回転寿司は沼津の時代か?


●「海鮮沼津港本店 世田谷馬事公苑店」

東京都世田谷区上用賀2-4-18

電話:03-5799-3093

営業時間:11:00~23:00

定休日:無休





ハイチとは何処に? ~新宿「ハイチ」のドライカレー&コーヒー

かなーり前から気になっていた(20年近く前になるち思う)新宿「ハイチ」へとついに突入した。

なぜ気になっていたかというとわらぶき屋根が設えられた外観、

ショーケースに並べられたドライカレーの姿に釘付けにされていたからだ。


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(なかなかインパクトのある外観である)


ドライカレーの形状は、低い円柱に盛られたご飯の上にドライカレーが盛られており、見た目、実に美しい。

「これこそがドライカレーの究極の形に違いない」

そんなことを幼心にも思ったほどどである。


そして、看板に掲げられた「ハイチ料理」の文字…

何モンだ!ハイチ料理

っつうかハイチってどこよ、って感じですわな。

わらぶき屋根の感じからするとアフリカ、という気がしていた。

しかしどこだかはわからない。

謎は謎のまま年月は過ぎ、ついにハイチの時を迎えたわけだ。


店内は予想通り薄暗く、怪しげな感じがしないでもない。

ハイチ風、とでもいうのだろうか。

マホガニーの椅子やら民芸品が展示されている。

緑と赤を基調にした店内はラスタカラーを彷彿させる。

BGMはジャマイカン。

ムムム…ハイチとはアフリカではなく中南米なのか?

メニューを見てみる。

ハイチの説明があって、中南米に浮かぶ島であることを知る。

なるほど、ジャマイカンな場所であったわけですね。

写真があるのでかろうじてどんな料理かがわかるが、やはり見慣れないものばかりだ。

イカスミものもあれば、鳥、魚、肉料理もある。

プレ・デ・カライブ(チキン煮込み料理)、ラグ・デ・ポーク(豚肉の煮込み料理)、

煮込み料理なんかが得意な国らしい。

かってフランス領であっただけにフレンチの影響を受けているのだろうか。

いろいろとそそられるメニューはあったが、やはりここはドライカレーで。

ハイチコーヒーとのセットが一番人気らしい。


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(ドライカレー美を堪能できるお姿)

待つこと5分。

ドライカレーのお出ましである。

うーむ、生で見るとますます美しい。

なんだか崩すのがもったいないが、スプーンを入れてみる。

ドライ状のカレーは具が多めのようだ。

挽肉、干しぶどう、たまねぎ、なんだかわからない木の実や野菜類…まだまだいろいろありそうだ。

「パク森」のカレーもこの形を模倣したのではないかと思われる。

このドライカレーに液状カレーを掛けたのがパク森だ。

味は具の舌触りに特徴がある。

ドライカレーらしいドライカレーといえるだろう。ムシャムシャ

壁の説明書きを見てみる。

なんでもハイチでも幻と言われるカレーを極秘の内に直伝されたらしい。

ハイチに旅行したくらいでは決して出会うことのないカレーらしい…

うーむ、その手できたか。

誰も見ることの出来ない幻のカレー、

ホントにあるのかどうかさえ謎だ。

それがこの店の名物料理だというのだから素晴らしい。

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(香り高きハイチコーヒー。ラム酒がポイントだ)


食後にはコーヒーが運ばれてきた。

香水のような瓶がついている。

聞いてみるとラム酒だという。コーヒーの香り付けに抜群だという。

確かにコーヒーに数滴垂らしてみると味がまろやかになった。

なるほどジャマイカンらしいコーヒーだ。

見ると男性客の全員がこのセットを注文していた。

サッと軽飯なんてときには煮込み料理なんかじゃなくてカレーに限りますからね。

今度来るときもきっとドライカレーを注文するに違いない。

ハイチ料理の奥義に触れることはおそらくないだろうと思いつつ、店を後にした。

●ハイチ料理「HAICHI」

東京都新宿区西新宿1-19-2

電話:03-3346-2389

営業時間:11:00~23:30

       11:00~22:30

定休日:無休





ありえないくらいの大量の松茸と湯ばーばの怪 ~京都「紫雲」の至福と驚異と~

今年も松茸の季節がやってきた。

この時期になると松茸が無性に食べたくなる。

というのも、京都にアンビリバブーな松茸を食わせる店があるからだ。

私も長年、様々なB級グルメを食べ歩いているが、ここはいろんな意味でヒドイ。

何がヒドイとかではなくて、あらゆる点でヒドイのである。


あらゆる点でヒドイ…こんなホメ言葉が他にあるだろうか?

つまり、ヒドさと笑いは恐ろしく紙一重、だということなのである。


その店は京都の奥地、ダークダックスの歌で有名な(って、こんなことを言ってる時点で相当古い話なのだが)大原三千院の近くにある「紫雲」という店だ。

私は昨年、初参加をしたのだが、仲間は毎年この店に通っている。

噂にはずーっと聞いていた。

とにかく食いきれないほどの松茸が出てくる

おばばがありえないくらいの丼勘定をする

おばばが金をごまかす

しかし、幸せなくらい松茸を味わえる

などなど…

整理すると松茸はたらふく食えるが、勘定が怪しい、ということになる。

果たしてどんな店なのか…

とにかくキーポイントはおばばにありそうだ。


で、ワゴンタクシーを借りて京都駅から大人数で押しかけてみた。

店は旅館のような佇まいをしている。

しかもかなり古ぼけた…

どうやら我々が今年一番の客らしく、なんだか店内がカビ臭い

窓を開けて換気をしているが、1年近く閉めきっていた店内のカビ臭さはそう簡単に抜けない。

そう、この店は1年のうち、この時期だけオープンする松茸を食わせるだけにためにある店なのである。

まず店に到着すると代表者がおばばに挨拶へと向かう。

この時点でまだ我々はおばばの姿を拝むことはない。

どんなやりとりが繰り広げられていたのか…

そんなことも気になるのだが、どうにもたまらなく気になることが他にある。

バイトの兄ちゃんたちの格好だ。

昔懐かしき、おばあちゃん御用達の割烹着を着ているのだ。

えっ?なに、ここはコントの部屋…」

と思わざるを得ない。

まだ20代の兄ちゃんに割烹着でっせ。

そりゃ、コントですわな。

笑いをかみ殺しながら大広間へと通された。


しばらくすると焼き鳥が一人一本づつ運ばれてきた。

いつもは一人に板付きの蒲鉾が一つらしい。(しかも切られていない)

ビールを飲みながら松茸様の到着を待つ。

と、出てきましたよ、松茸の山が。


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(かなりデカイ松茸を一人4本は食べられるくらいの量です)



松田優作だってきっとこう叫びますよ、「なんじゃこりゃ~

こんな大量の松茸なんか見たことないぞ。

私の知っている松茸様というのは、一本ずつ木箱かなんかに入って丁重にもてなされている。

が、ここの松茸はぞんざいな扱いを受けている。

山盛りですもんね。

またB級グルメ界の山に出会った…そんな気分である。


まずは焼き松茸を賞味。

コンロで炙り、ポン酢と醤油でいただく。

うーむ、味わい深い。

松茸の香り、噛みしめるとじんわりと染み出る水分…いいっすね、松茸天国。

これでもかというくらい焼き松茸を味わった後は、ホイル包み焼きの出番である。

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(松茸と地鶏から出るスープが絶品)

当然ビール、なんてナンパな飲み物ではなくここは美味な日本酒に。

しかし、この店には二級日本酒しか存在しない

これでは松茸が台無しである。

そこで、持ち込みの最高級日本酒をさっ取り出す。

くぅー、これですよこれ、泣ける泣ける。


一応、アリバイのためにお銚子を注文。

こいつは料理用にでもしてやろうか。

アルミホイルの底に葱と地鶏を敷き、その上に松茸を載せる。

そして、酒を少々振りかけたりして。

待つことしばし、包みを開けるとホワーっという感じでなんともいえない良い匂いが立ちのぼる

これはね、たまらん、たまらん(お金じゃないよ)です、いやはやまったく。

地鶏葱と松茸の相性はなかなかに良い。
松茸から出る水分がたまらんのですよ。

ホイルに残ったスープまできっちりいただく。

そして日本酒をグビグビ。

お銚子の追加を申し訳なさげにする。

そりゃ、こんなに日本酒飲んでるんですから、まったくお銚子が減らないってのもね…。

魔法のお銚子じゃないんだから。


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(やはり日本人は鍋料理です)


もう、松茸は存分に味わったぞ、といった段になり、ついにシメの料理に取りかかる。

松茸と地鶏の鍋

こんな贅沢な食い方があったのか…

生きてて良かった…そんな感慨を誰しも受けることだろう。

そして最後は雑炊でシメ

もう満杯、と思っていたが、松茸と地鶏の味わいが染みこんだ雑炊に満足が倍増した。

食った食った。もう向こう一年は松茸を食べなくてもいい、そんな気にさせられるほど松茸を存分に味わった。


さて、これで終わりかと思いきや、これからがどうも本番らしい

会計係に緊張が走る。

大量の千円札を取り出して握りしめている

何故だ?

何が起こるのか見届けたくて私もおばばの待つ部屋へとついて行ってみることにする。

ガラリと襖を開けるとそこにはまさに「千と千尋」の湯ばーばが…。

あの部屋のモデル何ではないかというような感じにおばばは座っていた。

会計係は「今年もありがとうございました。美味しかったですよ」などと世間話に精を出す。

おばばは…

おばばは「最近腰痛がひどくてね」だとか「もう体にガタがきているから来年はどうなることやら…」などとやたらに体調不良を訴えている。つまり、もう今年で最後になるかもしれないからたくさん金を置いていけ、ということなのだろう。
なるほど…油断できねぇ、おばばだぜ。

そして、いよいよ精算だ。

えーと、お銚子が一本一万円だから…」

「エッ、ちょっと待ってくださいお母さん、一本一万円は高すぎじゃないですか!」

いやあれは京都の珍しい日本酒でね…」

「いえいえ、そんなことないですよ。あれは本当に普通のお酒でしたよ」

……あぁ、そうかい。じゃ一本千円で

おいおい、これが噂の丼勘定か。

私は一本一万円、の時に思わず吹き出しそうになったが、その後すぐに一本千円に修正するところももの凄い。0がひとつ多いじゃねぇかよ、どんな丼だか。

そしていざ支払いの段に。

ここでなぜみんなで大量の千円札を握っていたかの意味がわかる。

ひとつひとつ精算していくのだ。

日本酒いくら、松茸いくらといったように。

で、たとえば1万4千円で2万円を出したりするとお釣りがない、と言われて徴収されてしまうのだ。

お釣りないから、もらっておくね」と言われてしまうそうである。

過去、辛酸をなめさせられてきた先人たちはこの強欲おばばに立ち向かうために千円札の技を会得したという。

そして、おばばにお釣りをゴマかされることなくきっちりと精算終了…と思いきや諦めきれないおあばばが最後の攻撃を仕掛けてきた。

若い者たちに心付けをあげてくれないかのぉ

そうきたか。心付けを要求するとは敵もさる者である。

しかもバイト君たちに代わって。

ま、日本酒見逃してもらったりしているのでそれもよかろうということで、一人に対して一万円をおばばに支払った。

果たしてあの一万円はバイト君たちの手元に渡ったのであろうか


松茸の山はおばばのみが知っている場所にあるという。

おあばが倒れてしまえば、この至福の時もなくなってしまうことだろう。

ま、あのおばばのことならまだまだ長生きするだろうが…

こんだけの量を東京で食べたらいくらになるかわかりゃしないが、基本一万五千円という激安価格。

こんなに楽しめるB級店は他にないのではないか?



●「紫雲」

京都府大原三千院付近






癒しの空間で食す、味わいのカレー ~銀座「ニューキャッスル」の辛来飯~

私はホッとできる空間が好きだ。

Mr.ホッとマンと呼ばれてもいいくらいだ。

いや、呼ばれたいとさえ思う。

中でもお気に入りなのが昭和の匂いが漂う店、である。

ドアを開けたときに漂ってくるなんともいえない匂い…

使い込まれたテーブルや調理機器の数々、店内に漂う独特の重み、たまらんです。

私にそんな幸福をもたらせてくれる1店が銀座の老舗、「ニューキャッスル」である。


「ニューキャッスル」は昭和21年創業の老舗である。

ま、カレー界ではあまりに有名なのでいまさら感は漂いますが、一応ザーッと説明しますと

ここのカレーは「辛来飯」と表記しています。

メニューには「品川」「大井町」「大森」「蒲田」と並び、初めて来た人には「なんのことやら…」となることであろう。

ちなみにこれはご飯の量をあらわしていて、品川から下って行くに従って量が増えていく。

早い話、大森=大盛りと表記したいためにマスターが考案したらしい。

ここのマスターはダジャレ好きとしても有名だと聞く。

マスターの名前は柳田嘉兵衛さんというが、「私が食べてもうちのカレーはかべえ」とか言うらしいですから…

メニューには「川崎は甘口省からのお達しで販売中止になりました」と記されている。

川崎だと量が多すぎて辛いものを摂取しすぎだから、甘口省のダメ出しがでたとのことでしょうか…徹底してますのんね。

ちなみに裏メニューというものがあって、たくさん食べたい人用には「つんかま」がおすすめ。

大森の上の蒲田でもそれほどご飯の量は多くないので、蒲田よりもちょっとつんのめった先=蒲田よりもさらにご飯多いという意だ。

私もかって一度だけ目にしたことがあるが、「つんかま、ツーたま」を注文している人がいた。

これはつんかまに玉子が2個載った、この店の最高メニューだと聞く。


「大森」を注文するとおかあさんは「スタンダード1つ」とマスターに声を掛ける。

ほとんどの人が「大森」が注文するというだけにこれがスタンダードなのであろう。

カレーが出来上がるとおかあさんが「はい、スタンダード到着」と運んでくれる。

なんだかこういう声にもやすらぎを覚えてしまう。

いいんです。

これこそ昭和です。


newcastlle

(目玉焼きの存在感がなんともいえない大森)



カレーの上には目玉焼きが載る(大森、蒲田のみ)。

中央にデーンと鎮座している姿はメイン、の風格さえ漂う。

カレーは私の愛してやまない煮込まれた濃厚カレーだ。

まずはカレーだけを口に運んでみる。

うむ、なかなかの辛さ。

そこにはいろいろなものが煮込まれているんだろうなぁ、という舌触りを感じる。

なんというか甘味と辛味と酸味が見事に調和しているんですね。

野菜や果実を数多く使っているのが伺えます。

とても単純なカレーなのだけどその奥深さは「ニューキャッスル」ならではのもの。

これこそが歴史だわな、と思いつつカレーを頬張るわけだ。


そしていい加減に仕上がっている半熟卵

これが辛いカレーをいい感じで中和するのだ。

カレーと一緒に食べるとなんだか幸せな気分にさえなってくる。

これこそが昭和の優雅か。


食後にはこれまた昭和の香り漂う珈琲をいただく。

この店から離れてしまうのが名残惜しい、そんな思いを噛みしめつつ最後に珈琲をいただくわけだ。


銀座にいまも残る癒しの空間。

私はそんな店を愛し続けたい。


●「ニューキャッスル」

住所:中央区銀座4-10-7

電話:03-3561-2929

営業時間:11:00~21:00(月~金)

       11:00~17:00(土)

定休日:日曜・祝日