友情に頼るな 3
これには、驚いた。
社員、それも同じ日本人に持ち逃げされるとは考えていなかったから!
額は1万ドル近かったけれど、
それよりも精神的なショックのほうが大きかった。
こういう場合、
普通経営者のとるべき立場は、
高い授業料を払ったと思ってあきらめるのが本筋だと思う。
だが、
私はそうしなかった。
よし、地獄の果てまで追いかけるぞ!!
そんな心境だった。
日本に比べて
何十倍も面積のあるアメリカをどうやって探すか、
気の遠くなるような話とはいえ、
彼の足跡をたどるのは、
それほど困難なことではなかった。
各都市にある日系社会に
シラミつぶしに連絡をとり、
足取りを追った。
いつまでも1万ドルで生活できるわけではないし、
きっとどこかで働かなければならないし、
そうすれば情報の網に引っかかってくる。
結局、
追跡行は二ヶ月くらいで終わったが、
お金はもちろん返ってこなかった。
毎月きちんと返却させることにしたけど、
それだって何年かかることやらわからない。
せっかく順調に
進みはじめた商売もとんだところでつまずいてしまった。
それもこれも、
友情と信じたことに原因があるわけで、
全米横断セールスも若さあふれるうちは
それなりに商売になるが、
何十年を続けられるものではない。
追跡行のとき、
デンバーである商売のヒントを
得ていたこともあって、
オンボロトラックの訪問販売は辞めることにした。
アメリカに来て三年とちょっと、
手元には2000ドルの金しか残っていなかった。