対岸の彼女。
角田光代さんの小説です。
知っている方も多いと思われます。
どこかへ行こうとしているのに、どこにも行けなくて。
いつの間にか、後回しにして背負い込んでいたもの、全てない世界。
自分たちで選択しているようで、空を掴むだけ。
誰もが考えたこと、感じたことがあるんじゃないかなと思いました。
この本は、高校の数学の先生のおすすめ本で、先生にお借りし、読みました。
先生曰く、角田光代さんの著書の中で八日目の蝉の次に良い物語だ、と。
ですが、読み終えた時、私にはこの本のもつ素晴らしさが、いまいちわかりませんでした。
主人公は35歳の女性2人。
子供と夫のいる女性と、彼氏も夫もいない
ベンチャー企業の社長である女性。
私が読むにはちょっと早かったのかなぁとも思いました。
ですが、社長である彼女、葵は、高校で1人の同級生の女の子に出会って……。
彼女はいじめられっ子だった。
人間関係をリセットするために、家族に無理いって高校入学と合わせて田舎に引っ越してきた。
入学式に話しかけてきた謎の女の子。
女子特有のグループ、そのどれにも属さず日々それらを点々としている女の子。
葵は、いじめの矢の的に自分がならないように、息を潜めて地味なグループに属していた……。
いじめられるのが怖いから、葵は放課後にしか彼女と会わなかった。
女子のグループって本当に怖い。
彼女は「そんなところに私の大切なものはない」と言ってグループには属さない。
葵と彼女は正反対で、だけど2人は、毎日あっているのに毎日手紙を交換して、毎夜電話もして。
あるきっかけで2人は学校が始まっても家に帰らず、逃避行。
必死に節約し、最低限のことにしか使わないのに、手にあるお金はみるみるうちに減っていく。
それでもふたりなら、どこまででも行けると信じて疑わなかった葵。
その、どこまででも行ける、どこへでも行ける、という、淡く切なく、怪しくも幻想的な妄想が、私にはわかる気がしました。
何にも煩わしくない世界。
2人で切り開いてゆく世界。
背負うことなどない世界。
他愛ない夢を語り合える世界。
そんな世界が、本当にあるように思うんです。思いたくて、あると錯覚しているのかもしれません。
ある時を境に2人は引き離され、会うことも、声を聞くことも、手紙を送り合うことも許されなくなる。
いつか交わした約束、19歳の誕生日に、シルバーのリングをプレゼントしてもらった子は、一生幸せに生きていける、だから、シルバーのリングを贈りあおう。
そして葵と彼女との最後の時。
プラチナの方が幸せになれるはず、だからプラチナのリングを贈りあおう。
それは終ぞ叶うことがなかった。でも、叶わないとわかっていて、それでも2人は約束を交わした。
大切な人を失うと、心の中にぽっかりと穴が空いて、それは一生埋まることがない。
それでも、2人は何かを必死に求めていたのかな、と思いました。
あたしたち、どこにいこうとしてたんだろう。
人と繋がることを、必死に求めている現代人。
友達がいないとだめなんだと、思い込まされている現代人。
葵はそんな人を「ひとりぼっち症候群」と言いました。
私には難しかったけれど、この物語のテーマとして、人との繋がりというものがあるのではないかと感じました。
出会うこと、関わること、親しくなること、別れること。
私たちは一人では生きていけなくて、誰かと必ず繋がっている。
上手く繋がれないこともあるし、苦しくなることもあるし、一生背負っていくことだってある。
それでどんなに傷ついたって、私たちはまた誰かと繋がろうとする。
誰かと求め出会って、疲れたら海を見て休んで、また立ち上がって、繋がろうとする。
寝て起きて、そしたらまた、明日から頑張ってみよう。
そう思わせてくれる、そんな本でした。
