小さな通路を這いつくばってたどり着いた先には、広々とした、ドームのような空間が広がっていた。壁には金箔のようなもので細やかな模様が描かれていてキラキラしていた。いつも使ってる駅の中にこんな広い、豪華な空間があることが驚きだった。


こびとを目にしたときから心の底で、少し期待していた。こびとの魔法で幸せな人生が送れるようになるんじゃないか、と。
この空間に入った瞬間、きっとわたしの薄暗いくもりの日のような人生が一気に晴れ渡るんだと、なぜか確信していた。






ドームの中にはたくさんのこびとがいた。みんなで楽しく踊っているところだった。夜中だということは、こびとたちには関係ないのだろうか。


「マスターに挨拶しにいこう。」
ここまで連れてきてくれたこびとが言った。


きっとこびとたちのリーダーに挨拶をすると、幸せになる魔法をかけてもらえるのだろう。きっと目の前のこびとは、わたしを幸せにするためにここに連れてきてくれたのだろう。人生捨てたものじゃないな。

そう思いながら、案内してくれるこびとについて行った。






「マスター、お話していた "おおびと" を連れてきました。」

どうやら人間のことを "おおびと" と呼んでいるようだ。マスターと呼ばれるこびとは鮮やかな黄色のワンピースを着ていて、ひまわりのようだった。



「あら、このおおびとさんが、例の。」

こびとたちの間で、ものすごく不幸せそうなおおびとがいると噂でも立っていたのだろうか。恥ずかしいから早く幸せの魔法をかけてほしいところだ。


「あのー、わたしはじめて皆さんのような小さい人に出会ったのですが…」
「そうねぇ、あまりおおびとさんに見つからないように暮らしているからねぇ。」
「でも絵本で見たことがあります。」
「あら、わたしたちの絵本があるの?それは見てみたいわね。」


マスターは楽しそうに笑った。わたしは早く幸せの魔法をかけてほしくて、待ちきれずに聞いた。






「その絵本では、こびとの皆さんは私たち人間に幸せになる魔法をかけていました。皆さんも魔法を使うことができるのですか?」

「魔法?それは面白そうなお話ね。けど、わたしたちはそんなものは使えないわよ。」


「…え?」





どういうことだ。話が違うじゃないか。
いや、わたしが勝手に目の前のこびとを絵本のこびとと同じだと思い込んでいただけなのだが。


不幸せそうなわたしを連れてきて、幸せにしようということでないとしたら、

「…じゃあなぜわたしは呼ばれたのですか?」







「実はね、あなたにお願いしたいことがあって、ここに来てもらったの。」