光秀「何故そんな顔をしている。俺に言えない悩みでもあるのか」
目を逸らせないよう至近距離で見つめて問われ、言葉に詰まってしまう。
「それは・・・・・・」
(言えないわけじゃない。でも・・・・・・なんて聞けばいいかな)
すぐには上手く答えられずにいると、すっと身体が離れた。
光秀「宿はすぐそこだ。話は中でしよう」
優しく促され、私たちはとりあえず宿に向かった。
・・・・・・・・・・・・
宿に着いたころには日も沈み、明かりの灯った部屋へと入り荷物を置く。
光秀「おいで、ゆう」
「・・・・・・はい」
並べられた座布団に腰を下ろすと、伸びてきた手にあやすように髪を撫でられる。
光秀「聞かせてもらえるか」
話し出す光秀さんの声はひどく優しい。
光秀「俺としては、可愛い連れ合いが悩んでいるのを放っておけない。途中から、俺に何か聞きたそうにしているのはわかっていた。お前が話したくなるまで待とうとしたが・・・もっと早く聞き出してやれなくて悪かった」
申し訳なさそうに告げる光秀さんに、私は慌てて首を横に振った。
「そんな・・・・・・光秀さんは何も悪くないんです」
(こんな時まで、私の気持ちを優先してくれてる・・・・・・その気持ちはすごく嬉しい)
「私が、言い出せなかっただけなので・・・・・・」
光秀「・・・・・・そうか。ならば、教えてくれ」
光秀さんは、あくまでも優しく私に促してくれる。
「その前に、ひとついいですか?」
光秀「?ああ」
片眉を上げた光秀さんから一度離れて、荷物が置いてある場所へと行く。そして、安土を出る前に準備して持ってきたものを取り出した。
目を逸らせないよう至近距離で見つめて問われ、言葉に詰まってしまう。
「それは・・・・・・」
(言えないわけじゃない。でも・・・・・・なんて聞けばいいかな)
すぐには上手く答えられずにいると、すっと身体が離れた。
光秀「宿はすぐそこだ。話は中でしよう」
優しく促され、私たちはとりあえず宿に向かった。
・・・・・・・・・・・・
宿に着いたころには日も沈み、明かりの灯った部屋へと入り荷物を置く。
光秀「おいで、ゆう」
「・・・・・・はい」
並べられた座布団に腰を下ろすと、伸びてきた手にあやすように髪を撫でられる。
光秀「聞かせてもらえるか」
話し出す光秀さんの声はひどく優しい。
光秀「俺としては、可愛い連れ合いが悩んでいるのを放っておけない。途中から、俺に何か聞きたそうにしているのはわかっていた。お前が話したくなるまで待とうとしたが・・・もっと早く聞き出してやれなくて悪かった」
申し訳なさそうに告げる光秀さんに、私は慌てて首を横に振った。
「そんな・・・・・・光秀さんは何も悪くないんです」
(こんな時まで、私の気持ちを優先してくれてる・・・・・・その気持ちはすごく嬉しい)
「私が、言い出せなかっただけなので・・・・・・」
光秀「・・・・・・そうか。ならば、教えてくれ」
光秀さんは、あくまでも優しく私に促してくれる。
「その前に、ひとついいですか?」
光秀「?ああ」
片眉を上げた光秀さんから一度離れて、荷物が置いてある場所へと行く。そして、安土を出る前に準備して持ってきたものを取り出した。
(町で思い出になるものは買えなかったけど、せめてこれだけでもちゃんと渡したい。光秀さんを祝いたい気持ちが少しでも伝えわるといい。
たくさん想いを込めて作ったから・・・・・・)
大切に胸へと抱きながら、光秀さんの元へと戻り、また向き合う。それを、とびきりの笑顔で差し出した。
「改めて・・・・・・光秀さん、お誕生日おめでとうございます」
光秀「これは・・・・・・?」
私の贈り物を、光秀さんは不思議そうに見つめる。
「お誕生日カードっていうんです」
光秀「誕生日かーど・・・・・・」
厚手の上質な和紙を使ったカードの表面には、刺繍の花をちりばめてある。
(紙刺繍っていうものがあるって知って、初めて挑戦したけど・・・・・・光秀さんに喜んでもらえるかな)
「これは、誕生日の人をお祝いする特別な文みたいなものです。光秀さんの大切な日なので、想いを込めて作りました。受け取ってもらえますか?」
光秀「もちろんだ」
光秀さんは、私からそっとカードを受け取る。紙の上に凛と咲く刺繍の花を、長くしなやかな指が慈しむようになぞった。
光秀「水色桔梗か・・・・・・」
「はい。お誕生日なので、華やかにしようと考えて・・・・・・桔梗紋が綺麗で、光秀さんらしいなと思ったのと光秀さんにとって大切な印でしょうから。一針一針、丁寧に縫ったつもりです」
光秀「・・・・・・器用だな、お前は」
光秀さんの言い方は、どこかそっけない。けれどそれは、照れているのだとわかる。
「二つ折りのところを開いてもらえれば、文が書いてあります。読んでもらえますか」
光秀「ああ」
光秀さんは言葉少なにカードを開き、私からの文に目を落とす。
光秀「・・・・・・・・・・・・」
(目の前で読まれるのは恥ずかしいけど・・・・・・ちょっとでも、私の気持ちが伝わればいいな)
―――『お誕生日おめでとうございます。光秀さんの誕生日は、私にとって、とても大切な日です。光秀さんを産んでくれたお母様にも感謝を伝えたいくらいです。私と出逢ってくれてありがとう。愛しています。』
そう、心からの気持ちを文字にして、私はカードに綴っていた。
たくさん想いを込めて作ったから・・・・・・)
大切に胸へと抱きながら、光秀さんの元へと戻り、また向き合う。それを、とびきりの笑顔で差し出した。
「改めて・・・・・・光秀さん、お誕生日おめでとうございます」
光秀「これは・・・・・・?」
私の贈り物を、光秀さんは不思議そうに見つめる。
「お誕生日カードっていうんです」
光秀「誕生日かーど・・・・・・」
厚手の上質な和紙を使ったカードの表面には、刺繍の花をちりばめてある。
(紙刺繍っていうものがあるって知って、初めて挑戦したけど・・・・・・光秀さんに喜んでもらえるかな)
「これは、誕生日の人をお祝いする特別な文みたいなものです。光秀さんの大切な日なので、想いを込めて作りました。受け取ってもらえますか?」
光秀「もちろんだ」
光秀さんは、私からそっとカードを受け取る。紙の上に凛と咲く刺繍の花を、長くしなやかな指が慈しむようになぞった。
光秀「水色桔梗か・・・・・・」
「はい。お誕生日なので、華やかにしようと考えて・・・・・・桔梗紋が綺麗で、光秀さんらしいなと思ったのと光秀さんにとって大切な印でしょうから。一針一針、丁寧に縫ったつもりです」
光秀「・・・・・・器用だな、お前は」
光秀さんの言い方は、どこかそっけない。けれどそれは、照れているのだとわかる。
「二つ折りのところを開いてもらえれば、文が書いてあります。読んでもらえますか」
光秀「ああ」
光秀さんは言葉少なにカードを開き、私からの文に目を落とす。
光秀「・・・・・・・・・・・・」
(目の前で読まれるのは恥ずかしいけど・・・・・・ちょっとでも、私の気持ちが伝わればいいな)
―――『お誕生日おめでとうございます。光秀さんの誕生日は、私にとって、とても大切な日です。光秀さんを産んでくれたお母様にも感謝を伝えたいくらいです。私と出逢ってくれてありがとう。愛しています。』
そう、心からの気持ちを文字にして、私はカードに綴っていた。