男「この女、殺されたくなかったら、てめぇらで殺し合え」

元就「!」

政宗「っ・・・・・・」

元就「別にその女が死のうが俺には関係ないが、その提案、面白そうじゃねえか。もともと、こいつとも仲間でも何でもないしな」

元就さんの手元の刀が、月明かりで鈍く光り・・・・・・

元就「いいぜ、殺(や)り合ってやるよ」

笑みを浮かべた元就さんが、政宗に斬りかかった。

政宗「! くっ・・・・・・」

政宗はすかさず反応さ、高い音をたてながら刀で受け止める。

「政宗・・・・・・!!」

男「はははっ、こりゃあ面白いな!」

政宗が一瞬だけ目を見開き、にやりと笑ったのが見えた。
(え、今のって・・・・・・?)

疑問が浮かんだ次の瞬間、政宗が元就さんの刀を押し返す。ふたりは後ろに飛び退き、間をとった。

政宗「もっと本気で来いよ、元就」

元就「お前のほうこそ愉しませろ、独眼竜」


目の前で繰り広げられる攻防を見つめ、ぎゅっと自分の手のひらを握りしめる。心配で気が気でない中、ふと疑問が浮かんだ。
(そもそも元就さんの目的は、この海賊を潰すことだったはず・・・・・・いくら面白そうだって言っても、元就さんには政宗と戦うことに利点はないんじゃ・・・・・・)

そう気付くと、もうひとつの考えが浮かび上がる。
(きっとふたりには何か策があるんだ・・・・・・今はふたりを、信じよう)

祈るような気持ちで、見つめていると・・・・・・
(えっ)

政宗の懐に攻め入った元就さんが、至近距離でピストルを取り出した。

政宗「っ・・・・・・」

元就「終わりだな」

「政宗!!」

------パァァン!

悲鳴に近い声を上げたと同時に銃声が響き渡り------銃声が空に向かっていることに気付き、上を向く。

「 ! 」

男「っ・・・・・・!!」

男の頭上の樽が落ちてきて、反射的に私は手放された。

「きゃ・・・・・・っ!」

(潰される!)

政宗「ゆう!」

ガラガラッ!

駆け寄ってきた政宗に抱き寄せられながら、とっさに目をつむり------
(っ・・・・・・)

はっとしてまぶたを開けると、私を守ってくれた政宗と目が合った。

政宗「大丈夫か」

「うん・・・・・・政宗が守ってくれたから」

政宗「お前が無事ならいい」

安心したのか政宗は腕の力を緩め、私を立たせてくれる。男は落ちた樽にぶつかったようで、苦しそうに呻いていた。

男「・・・・・・てめぇら、やっぱり仲間だったのか」

元就「そんな生温いもんじゃねえよ、利害が一致してただけのことだ」

その時、見知らぬ男性がこちらにやってきて元就さんの前で膝をついた。

部下「元就様! 敵の半数を徃圧しました」

元就「・・・・・・おう。残党狩りをしねえとな。おい、お前らはさっさと帰んな」

政宗「・・・・・・ここは、どうするつもりだ。まだ半数も残ってるんだろ」

元就「頭潰したからな。あとは大丈夫だろ。貸しのひとつだ。その女がいたんじゃ邪魔になる。さっさと行け」

(元就さん・・・・・・)

政宗「・・・・・・わかった」

元就「これでこの関係も終わりだ、政宗。じゃあな」

ひらりと手を振り、元就さんが私たちに背を向ける。

「あの・・・・・・!」

思わず引き留めると、元就さんは足を止め振り向いた。

元就「あ?」

「助けてくれて、ありがとうございました。元就さんも、お気をつけて」

元就「・・・・・・」

元就さんは驚いた表情を浮かべた後、私へと距離を詰めてきた。

元就「威勢が良いのも考えもんだな。お姫(ひい)さんのくせにこんなところまでついてくるから、怪我なんかすんだろ」

元就さんの指が私の手をさし、そこに掠り傷がついていることに気付く。

「本当だ、気付かなかった・・・・・・」

その時、政宗に肩をぐいっと引かれ、元就さんと強引に離された。

政宗「・・・・・・」

無言のまま私の肩を強く抱いている政宗を見上げる。
(政宗・・・・・・?)

政宗「・・・・・・協力してくれたことは礼を言う」

元就「へぇ・・・・・・伊達政宗ともあろう男がねぇ」

(どういう意味だろう?)

「まぁいい。次は本気の殺し合いだ。じゃあな」

元就さんは私たちに背を向けると、今度こそ振り返らずに行ってしまった。

---------

その後------

宿に帰ってきてすぐ、政宗が私の手の擦り傷を手当してくれていた。
(政宗、さっきからほとんど喋らないな。少し様子もおかしかったし・・・・・・さらわれるなんて、すごく心配かけちゃったせいかな)

政宗「これでいい。痛みはあるか?」

「ううん、そんなには。擦り傷だし大したことないから大丈夫」

政宗「それなら良いが・・・・・・」

「あの、政宗・・・・・・心配かけちゃってごめんね」

申し訳ない気持ちで謝ると・・・・・・
(え・・・・・・)

伸びてきた腕に、ぎゅうっと優しく抱きしめられる。

政宗「違うだろ。謝るのは俺だ。まさか宿まで嗅ぎつけられるとは思ってなかった」

「政宗、本当にごめ・・・------っ」

言いかけた言葉を塞ぐように口づけられる。唇が離れて、政宗の真剣な瞳が映った。

政宗「謝るな」

(・・・・・・そうだ。ごめんね、じゃなかった。私、政宗にまだ言ってないことがある)

・・・・・・うん」

政宗を見つめ返しながら頷き、自分からぎゅっと抱きついた。

「助けてくれてありがとう、政宗」

政宗「・・・・・・ああ」

政宗もようやく柔らかく笑って、私を抱きしめ返してくれる。

政宗「・・・・・・身体、他には痛むところあるか」

「全然! 大丈夫だよ」

政宗「それなら、ちゃんと確かめさせろ」

「え、あっ・・・・・・」

褥の上にそっと押し倒され、今度は深く口づけられた。

「ん・・・・・・っ」

舌が絡み、いつもより優しく奥まで探られる。甘やかすような口づけに、すぐに身体に力が入らなくなった。衿が押し広げられ、肌の上を政宗の唇がゆっくり伝い降りていく。

政宗「隅から隅まで確かめてやる」

「うん・・・・・・いいよ、全部確かめて」

乱れた着物から哂された肌に、ひとつずつ確認するようなキスが落とされる。

いいな。。。愛されてるなー。

熱を上げていく身体を、私は政宗にすべて預けた------