そして、クリスマス当日・・・------

(あ、そろそろ行かないと・・・・・・)
仕事の手を止めて、立ち上がる。身支度を整えていると、不意に秀吉さんの言葉を思い出した。


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秀吉「・・・・・・俺と行かないか」

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秀吉「お前を喜ばせる自信ならある。それに・・・・・・お前の唇を、あいつに譲るわけにはいかない」

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秀吉さんの言葉にひとりで頬を火照らせながら、『あいつ』と呼ばれた人のことを思い浮かべた。
(あいつって・・・・・・光秀さんのことだよね。秀吉さん、どうしてあんな風に言ったんだろう・・・・・・私が選びたいのは秀吉さんだけだよ)

私は支度を済ませて、秀吉さんの御殿へと向かった。

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それから御殿に着き・・・------

(ちょっと寒かったかな・・・・・・)
着物の上からひんやりと肌を指す空気に、腕をさする。早く逢いたくて、足早に秀吉さんの部屋へと向かうと・・・------

秀吉「! ゆう!」

慌てた足取りで近づいてきた秀吉さんに、思わず首を傾げる。

「? なんでそんなに驚いてるの?」

秀吉「ああ・・・・・・いや、お前が光秀を選ばなくて、ほっとしたんだ」

「・・・・・・! 当たり前だよ」

秀吉「・・・・・・そうか。ありがとな。それよりお前、そんな薄着で来たのか?」

「あ、うん。この間、秀吉さんにかりた羽織みたいなのを作りたいとは思ってるんだけど・・・・・・お仕事の方が忙しくて、なかなか作れなくて」

秀吉「そうだったのか・・・・・・なら良かった」

「え?」

秀吉「いや、なんでもない」

追求する間を与えないように、秀吉さんが口を開く。

秀吉「そろそろ出るか。すぐに暗くなるだろうからな」

「うん・・・・・・」

秀吉さんと一緒に御殿を後にした。

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御殿を出る時から、秀吉さんはなにやら風呂敷包みを片手に抱えていた。

「ねえ、秀吉さん」

秀吉「うん?」

「ずっと気になってたんだけど、その風呂敷はなに?」

秀吉「これは・・・・・・秘密だ」

「そう言われると気になるよ」

秀吉「後でちゃんと教えてやるから」

(本当に何だろう?)

「わかった。後で教えてね」

(それにしても、冬は暗くなるのが早いな・・・・・・やっぱり薄着すぎたかも)
肌を刺す寒さに手をすり合わせる。

すると、秀吉さんが私の手を取り・・・------

秀吉「結構冷えるな。大丈夫か?」

包み込む手のぬくもりに、一瞬どきりとするけれど、その温かさに心が和らぐ。

「うん・・・・・・秀吉さん、あったかいね」

(優しくて大きな手・・・・・・すごく安心する)

秀吉「お前はだいぶ冷たくなってる」

ちらりと私を見た秀吉さんが、繋いだ手をぐっと引く。
(え・・・・・・っ)

そのまま片腕の中に収めるように肩を引き寄せられ・・・------

秀吉「ほら、もっとくっついとけ。お前に風邪を引かせたくないからな」

「・・・・・・!」

(気持ちは嬉しい、けど・・・・・・っ・・・・・・近いっ!)
急に埋められた距離に、鼓動が勝手に騒ぎ出した。

(こういうことされると・・・・・・いつもは世話焼きのお兄さんって感じもあるのに秀吉さんのこと、男の人としてより意識しちゃうんだよね)
肩の重みに甘い緊張を覚えながら、ぬくもりにそっと寄り添う。逞しい腕の中は、いつだって、どんな場所よりも安心させてくれる。

「・・・・・・ありがとう、秀吉さん」

秀吉「ああ」

(こんなに優しくて素敵な人が恋人だなんて、幸せ者だよね)

あれ?恋人設定なんだ。。

私たちは微笑み合い、木があるという街の外れを目指した。

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そうして、目的の場所に到着すると・・・------

(わ・・・・・・)

秀吉「思ったよりも人通りがあるな」

「そ、そうだね・・・・・・」

予想以上の賑わいに、戸惑ってしまう。

「秀吉さん・・・・・・やっぱり帰ろう」

(ここに来たいって言ったのは、私だけど・・・・・・)
訴えるように秀吉さんの袂を引いた私に、秀吉さんは首を小さく横に振った。

秀吉「いや、帰らない。まだお前を喜ばせられてないだろ」

「でも・・・・・・」

秀吉「それなら、いい案がある」

「え?」

その時、秀吉さんがずっと抱えていた風呂敷の結び目を解いた。

秀吉「これをお前に」

「え?」

(これって・・・・・・)
驚く私に秀吉さんが広げて見せたのは、この間借りたもののように温かみのある冬物の羽織だった。

「素敵な羽織だね・・・・・・」

受け取ると、肌触りの良さが指先に伝わってくる。

秀吉「本当は、御殿を出る前に着せてやりたくなったんだが・・・・・・せっかくなら、ここで見せて驚かせたいと思ってな」

(秀吉さん、それで秘密にしてくれてたんだ・・・・・・)

「ありがとう。すごく嬉しい・・・・・・大事にするね。早速、着てみてもいい?」

喜びを隠しきれない私を見て、秀吉さんは嬉しそうに目を細める。

秀吉「ああ・・・・・・けど、待て。いい案があるって言っただろ?」

「え、あ・・・・・・」

秀吉さんに羽織を渡すと、ふわりと包むように、頭に被せられて・・・・・・
(えっ・・・・・・!)

「秀吉さん?」

(一体何を・・・・・・)
急に訪れた暗がりの中で身じろぐと、

秀吉「ほら。早く、目瞑れ」

「っ・・・・・・!」

耳元で聞こえた低い囁き声に、どきりとする。
(目を瞑れって・・・・・・このまま、ここで・・・・・・?)

宿り木の言い伝えが、頭をぐるぐる回る。

秀吉「・・・・・・ゆう」

「っ・・・・・・うん」

甘い囁きに抗えず瞼を閉じると、頭を引き寄せられ、唇が重なった。

「んっ・・・・・・」

うなじから首筋を骨ばった手がなぞっていく。
(人の声する・・・・・・のに)

雑踏の気配の中、甘やかすようなキスは次第に深くなっていった。
(こんなの・・・・・・立っていられなくなる・・・・・・っ)

「っ、はぁ・・・・・・秀吉さん・・・・・・」

思わずふらついて、秀吉さんに寄りかかる。

秀吉「・・・・・・悪い」

支えるように腰を抱き寄せられ、微笑んだ気配がする。そして、羽織をきちんと掛けなおされた。
(今更、恥ずかしくなってきた・・・・・・っ)

火照った顔を俯けると、優しく手を取られる。

秀吉「・・・・・・帰るか」

「う、うん・・・・・・」

鼓動が走る余韻を、完全に拭えないまま御殿への帰路をたどった。

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お互いに気恥ずかしくなって、口数も少ないまま、御殿に帰ってきた。
(どうしよう・・・・・・なんだかいつもより、緊張する・・・・・・)

落ち着かない心地でいる私を見て、秀吉さんはふっと微笑む。

秀吉「ゆう」

「! う、うん・・・・・・」

先に座った秀吉さんに手招きされるまま寄っていくと・・・------
(・・・・・・!?)

「わ・・・・・・っ」

向かい合わせに膝の上にのせられた。恥ずかしさで俯きかけた額に、秀吉さんの額がこつんと触れる。

秀吉「あの願掛け・・・・・・効力があるといいな」

(あ・・・・・・)

「・・・・・・宿り木のこと?」

秀吉「ああ。まじないだろうが、お前と俺を繋ぐものなら、どんなものだって信じていたい。もちろん、俺自身が叶えてやるつもりだけどな」

「・・・・・・! うん・・・・・・ありがとう・・・・・・永遠に、秀吉さんとは繋がってるって、信じてる」

秀吉「ああ」

見つめあい、引き合わされるように唇のぬくもりを分け合う。

「ふ・・・・・・ぁ」

翻弄するような舌先で唇から溶かされながら、身体をなぞる手のひらに身体の熱を刺激される。

秀吉「ゆう・・・・・・これからも、一番近くにいてくれるか?」

「うん・・・・・・ずっといる。秀吉さんのそばに・・・・・・」

誓うように、私たちは深く甘いキスを交わした・・・------