信長「貴様は乱世に咲く華だ」
(え・・・・・・)
色気を放つ信長様の瞳に、鼓動が騒ぎ出す。
信長「枯れさせたりしない。水の代わりに愛を、陽の光の代わりに温もりを、注いでやろう」
まるで花びらに触れるように、信長様はそっと唇を重ねた。
(それは私も一緒だ・・・・・・信長様という大輪を、決してかれさせたりしたくないから)
「私もあふれるくらい、信長様へ気持ちを注ぎますね。だから・・・信長様の気持ちを、いっぱい注いでください」
信長「当然だ。惚れた華だからな」
寝間着の帯が解かれて、信長様と肌を重ねると、速い鼓動が交じり合う。
信長「ゆう、もっと貴様をよこせ」
(あ・・・・・・っ)
口づけが深くなって、たまらず吐息を漏らすと、舌先で唇を押し開いた信長様に、呼吸さえ奪われる。
(っ・・・・・・身体が熱い・・・・・・)
されるがまま信長様に身体を預けると・・・・・・
信長「・・・・・・」
(信長様・・・・・・?)
不意に唇を離した信長様が、意味深な笑みを浮かべる。
信長「今日は貴様が、俺に想いを贈るのだろう?先に貴様から俺に触れてみろ」
「っ、私からですか?」
信長「俺に溢れるほど気持ちを注ぐと言ったのは、貴様だ」
薄闇の中、信長様の鍛えられた身体が着物越しに浮かんで、どくりと鼓動が跳ねる。
信長「まずは、ここからだ」
信長様はつかんだ私の手で、自分の形の良い唇をなぞらせた。
(っ、私からキスしろってことだよね・・・・・・)
(でも改めて自分からするとなると、照れくさいな)
信長「どうした、なぜ動かない」
「こ、心の準備ができるまで待ってください」
信長「準備など要らん」
信長様が余裕の表情で私に顔を寄せる。
信長「貴様の唇を差し出せ」
(やっぱり、強引・・・・・・!けど、今日はせっかくの信長様の誕生日だから)
「っ、わかりました」
おずおずと信長様の肩に手を置いて、唇に、ちゅ、とキスをする。
「こ、これでいいですか?」
信長「・・・・・・」
鼻先が触れる距離で、信長様がわずかに息を漏らした。
信長「貴様の『想い』はいじらしいが、この程度の口づけでは何も進まない」
(あ・・・・・・)
信長様が私の背中に腕を回し、そのまま褥へと押し倒した。
信長「次は俺が注ぐ番だ。今夜はいつも以上に、貴様を奪う」
不敵な笑みを浮かべた信長様は、私の手を取り、指先に口づけを落とす。
「ぁ・・・っ・・・」
信長様の舌先が上へと滑り、たまらず声を上げた。
信長「良い声で啼くな・・・・・・」
「っ・・・それ、駄目です。信長様・・・」
信長「そう言われれば、余計に啼かせたくなる」
肌の上をなぞる唇に甘い刺激を与えられて・・・
「だから・・・・・・やめ・・・ぁ・・・・・・」
信長「いくら訴えようが、その声は俺を煽るだけだ・・・・・・ますます歯止めが利かなくなる」
弄ばれるような舌の動きに、身体の奥が疼いてたまらない。
(信長様に触れられると・・・・・・身体中が熱くなって、おかしくなる)
大きく呼吸が乱れて、生理的な涙を浮かべながら、信長様を見つめる。
「信長様、好きです・・・」
(どうしようもないくらい、大好き)
芯まで火照りながら気持ちを伝えると、信長様からの口づけが優しく落とされた。
信長「知っている。それに・・・・・・俺も貴様を愛おしいと思う気持ちは、誰にも負けてはいない」
(好きだって言ってもらえることが、こんなにも嬉しい・・・・・・)
「信長様・・・・・・誕生日、おめでとうございます」
信長「------・・・ああ」
熱を孕んでいた信長様の瞳に、優しさが滲む。
(信長様は、いつから・・・・・・こんなに優しく笑う方になったんだろう。いつまでも、見ていたい)
苦しいほど幸せに胸を熱くしながら、信長様に全身を溶かされていった。
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翌日------
私は新しく着物を縫うため、市に反物を見に来ていた。
(また、信長様が気に入ってくれるものを作りたいな)
贈った羽織を信長様に喜んでもらったことを、思い出しながら歩いていると・・・・・・
???「そこのお人」
(え・・・・・・?)
声をかけられて振り返ると、袈裟婆の高齢に見える男性が立っていた。
「私ですか?」
僧「はい。・・・・・・あなた、なかなか良い相(そう)をお持ちですね。愛する人と、長く添い遂げられますよ」
突然の言葉に目を見張る。
「え・・・・・・?」
僧「いきなり、驚かせてしまいましたね。申し訳ない。私は占術を少々学んでおりますので、顔の相を見ることが出来るんですよ。どうぞ愛する人と、末永くお幸せに」
そう言うと、僧の男性は背を向けて、どこかへ行ってしまった。
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その夜。
私は信長様の部屋で、公務が終わるのを待っていた。書簡の返事を書いている信長様の隣で、昼間のことを思い浮かべる。
(愛する人と長く添い遂げるって言われたけど・・・・・・あれは何だったんだろう)
信長「どうした。心ここにあらず、といった様子だな」
返事を書き終えたらしく、筆を置いた信長様が私を腕の中へと引き寄せた。
「それが・・・今日、市で占いをされる僧の方に会ったんです」
信長「占い・・・?」
「はい。その僧から、私は愛する人と長く添い遂げられるって言われました」
(そうだったら嬉しいけど、本当なのかな・・・・・・)
私の説明に、信長様の眼差しが真剣なものへと変わる。
信長「その僧の容姿を教えろ」
「え・・・」
信長「その僧は高齢だったか?」
(そういえば・・・・・・)
私は頷いて、僧の容姿や特徴を信長様へ伝えた。
信長「間違いない。その僧が戦の帰りに会った「占術師』だ」
(それって、信長様が前に・・・・・・)
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信長「そういえば戦からの帰り、『占術師』を名乗る者に出会った。その男には・・・・・・数奇な運命の下で出逢った最愛の女がいるだろう、と言われた」
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(あの時と同じ人だったんだ。すごい偶然だな)
不思議な運命に思えて、余計にあの時に言われた言葉が気にかかってしまう。
「占いって本当に当たるんでしょうか。だとしたら、すごく嬉しいな・・・・・・」
期待に胸をはずませるけど・・・・・・
信長「俺は信ずるに足ると思ったものしか認めん」
きっぱりと返されて、あやふやなものを信じようとした自分が恥ずかしくなる。
(信長様らしい返事だな。でもそうだよね・・・・・・)
気落ちして俯いた私の顎を、信長様の指先がそっと持ちあげて・・・・・・
信長「俺が最も信じているものは・・・・・・貴様の愛だ。だからこそ、ゆう・・・・・・貴様とこの先過ごす日々に、疑いなどない」
「つ・・・・・・!」
目を見張った私に、信長様が優しい微笑みを向ける。
信長「貴様といつまでも、添い遂げてやろう」
(そんな風に思ってくださってたなんて・・・・・・)
「はい・・・・・・私も信長様と添い遂げたいです」
信長「当然だ。俺の羽織を完成させると言ったのは貴様だ」
「そうですね、ずっと先になっても必ず完成させます」
さっきまでのがっかりした気持ちが消えて、笑みを浮かべたまま頷くと、
信長「貴様のおかげで、良い誕生日だった」
信長様が私の前で、手のひらを広げた。
信長「この手の線も、羽織も、俺にとっては至高の贈り物だ」
(信長様・・・・・・)
胸の奥が甘く疼き、幸福の意味を理解する。
(私もちゃんと、信長様に納得できるものを贈ることが出来てよかった)
「私、誕生日の前日に、信長様がどんな時も手を抜かず、仕事をされる姿を見たんです。それで、誕生日くらいは、信長様に気を抜いて笑って欲しかったんです。だから、贈り物を選ぶのに一所懸命になれました」
私の言葉を受けて、信長様がふっと笑みを零した。
信長「手を抜かずにやるべきことを全てやり切る。そうやって生きてこそ・・・・・・その生涯は光を放つ。愛もそうだ、懸命に愛するからこそ輝くのだろう」
素敵な言葉だな。。。
(懸命に愛する・・・・・・)
「ん・・・・・・っ」
目を細めた信長様は、私の頬に手を添えて唇を塞いだ。
信長「貴様を愛することも、疎かにしたりはしない。全力で愛し続ける。良いな?」
「はい・・・・・・私も信長様と同じくらい、愛していこうと思います。光を放つ生涯だったと思えるように、全力で」
(きっと信長様のそばにいれば、叶えられるはずだから)
信長「・・・・・・貴様にはいつも翻弄させられる」
ふっと表情を緩めた信長様が、私を強く抱きしめて、口づける。
(翻弄されるのは、いつだって私の方です・・・・・・信長様)
どんなものより信長様の想いが伝わる優しいキスに、心も身体も溶かされていった------